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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2024年2月の記事一覧

くだらない結論:Anizine

「昨日は青山ブックセンターのトークイベントに行ったよ」  「へえ。そんなのがあったんだ」 「世の中には無数のイベントがある。でもほとんどの人は自分が興味を持っているものにしか反応しないから、それ以外のことは知らないんだ」  「わかる」 「写真を撮ることについて、ふたりのぽっちゃりボディの写真家が話していたんだけどさ、とにかく『写真は自分が好きなものを楽しく撮れよ』っていうのが結論だった」  「園児並みの結論だな。まさか有料のイベントじゃないよな」 「有料だ。でもね、大人になる

台北へ是非:Anizine(無料記事)

来月、台北に行くことにしたのですが、なぜ好きなのかと聞かれることがあります。そう聞く人は「行ったことがない人」だとすぐにわかります。一度でも行ったことがあればなぜかはわかるはずで、台北ほど「つまらなかった」という感想を聞くことがない場所も珍しいです。 今まで私が訪れた国はそれほど多くなく、約25ヶ国ほど。フランスやイタリア、台湾といったお気に入りの場所ばかりをリピートしているからで、行ったことがある国や地域がまるで増えていきません。ですから仕事でたまたま行くことになった未体

相手のいない電話:Anizine

多くの人から知られている人がいます。スポーツ選手やミュージシャンなど。彼らは見知らぬ人から勝手な期待をされて「あの場面でPKを外すとは、それでもプロか」などと言われるのですが、それを「言われている」と思っているでしょうか、という話です。 信頼していた友だちが自分を裏切ることをし、電話をかけて文句を言うとします。これはわかりやすい状況ですよね。相手は「それは誤解だ」と弁明することもできますから、最終的に関係が修復できるかもしれません。しかし相手が電話に出ないこともあるでしょう

三度目のウンチ

4年前に初めての本を出し、先月末に二冊目が出ました。出た、って言い方はどうなんですかね。小学生がウンチの話をしているくらい幼稚ですね。上梓とか出版とか刊行とかリリースとか色々な表現があるんですが、出版や刊行は出版社が主体であるような気がするので私が言うのは違います。上梓というのは、昔、梓の木で版を作っていたからだそうですが、今回の本は木版は使わず、デジタル作業がメインのはずですからしっくり来ません。 下品な言い方で恐縮ですが「考え」というのは排泄物のようなものですから、ウン

次に書く本と、鳥の子育て。

「最近、鳥の子育て動画ばかり見ている」という投稿をしているのですが、反応が極めて薄いのが残念です。皆さんちゃんと見たことがあるのだろうか、と涙ぐむ思いです。親鳥が与える餌である虫や小さなトカゲなどの見た目に拒否反応があるのかもしれませんが、それは私たちが日々食べている肉や魚も同じことです。 まず、巣の中の雛鳥はまだ目が見えていません。親が戻ってきた気配を感じて大きな口を開けてピーピー騒ぐのですが、親は雛鳥の口に割と乱暴に餌を突っ込みます。そんなに大きなものを飲み込めるのか、

くだらない結論:Anizine

「この前、池のほとりで木を切っていたんだけどさ」  「うん」 「手が滑って斧を池に落としちゃったんだよ」  「よくないな。その話、よくないよ」 「何が」  「環境破壊だろう。水質が悪くなるだろうし、魚が傷ついたかもしれない」 「いや、そういう話じゃなくて。寓話的に」  「当事者意識が欠けてるね。不用意に落としたのはお前だろう」 「確かにそうなんだけど、不可抗力だから」  「都会で仕事してる癖に休日だけパタゴニアを着てレンジローバーで出かけて行って、ランバージャック気取りかよ。

自分の別解:Anizine

無料で読んでいる人のために結論を先に言ってしまうと、私はパロディが好きではありません。柔らかい表現をするなら「軽蔑している」と言ってもいいのですが、その理由については書店で本を立ち読みしながら「それは間違っている」と言うタイプの人に伝える義務もないので、ここからは定期購読メンバーのみにお伝えします。

ネットとの違い:Anizine

本が重版になり、Amazonへの初回出荷分もなくなりました。ホッと一安心です。先日「どうしたら本が書けるんですか」と聞かれました。よく知らない人からのあまりに素朴な質問なので、渾身の無視をしようと思ったのですが、自分の考えをまとめるために丁寧に答えてみました。 まず、本は書きたいと思っても書けるものではなく「書いてください」と出版社から頼まれないといけません、と言いました。 自分が思ったことをネットに書くのは誰でもできますが、それは「書く自由」が保障されているからです。た

恥ずかしいTKG:Anizine

「お前さ、さっき皆で話していたときに『TKG』って言ったよな」  「言ったかな」 「ほら、言ったことにすら自覚がないんだよ」  「なんだよ、うるせえなあ」 「言葉というのは『自分という憲法の条文』だ。だからバカはバカみたいな言葉を使うし、エレガントな人は詩的な言葉を使う」  「わかってるよ。でもちゃんとした場所では気をつけてる」 「それがダメなんだよ。たとえソーシャルメディアであってもガード下の焼き鳥屋であっても、相手にはそれがお前の憲法を読み上げているのを聞いたことになるん

くだらない結論:Anizine

「この前、結婚式に行ったんだ」  「誰の」 「お前に言う必要のない友人だ」  「冷たいな」 「他人の情報にあまり深入りするな。コーヒー豆じゃないんだから」  「漢字が違うよ」 「会話をしているんだからいいんだよ」  「そうか。音声だもんな」 「で、その結婚式なんだけどさ」  「待てよ。だったら他人の結婚の話に深煎りなんかしたくないよ」 「お前、今、音声だからといってコーヒーの方で言っただろう」  「バレたか。奇跡的な耳だな」 「まあ、登場人物は誰でもいいんだけど」  「ふたり

存在しないあなた:Anizine

1月31日に刊行した『カメラは、撮る人を写しているんだ。』、6日目で重版がかかりました。皆さんのおかげです。ありがとうございます。 無名のおっさんが書いた本がAmazonや書店に並ぶとき、まったく黙殺される危険があります。無名というのは「村上春樹さん以外」ということですけれど、それほど極端な分類ではなく、まあまあ名の知られた小説家でも「出せばバンバン売れる」というほど出版業界は甘くはないと思います。 世の中が不景気であることは誰もが実感していると思いますが、生活必需品以外

くだらない結論:Anizine

「お前の本、まあまあ売れてるみたいじゃん」  「うん。ありがたいことに」 「おいおい、会話の最中にリンクを貼るなよ。野暮だな」  「売るんだよ。一冊でも多く」 「お前って、そんなにグイグイいくタイプだったっけ」  「違うよ。でも宣伝とか告知はスカしていたらダメなんだ」 「それはわかる。無名のおっさんが書いたわけわかんない本なんて、エレガントに構えてても売れるはずないもんな」  「そう。出せば黙っていても売れるのなんて村上春樹さんくらいだ」 「あの人の本って、出版されるまで極

ありがとうございます:すべてのマガジン

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』 発売されて、Amazonのランキングが出ました。 このカテゴリはこちらで指定することができず、Amazonで振り分けられるようです。現在は「教育」などにもカテゴライズされている模様。 写真の教則本だと思って買った人から「まったく役に立たなかった」というレビューもありますが、「文学」なので仕方ないだろうと言い訳もできます。ネットでタイトルを見て勝ってくれた人が誤解するのももっともなのですが、この本はそういった「TIPS」を勉強して