マガジンのカバー画像

博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
¥500 / 月
運営しているクリエイター

#博士の普通の愛情

博士の普通の愛情

いつも思うのですが、なぜ世の中には恋愛のコンテンツがこれほどまでに溢れかえっているのでしょうか。 『博士の普通の愛情』というマガジンをつくったのはその謎に挑戦するためでしたが、まだまだ答えは出ません。今、書籍化のために書いている短編の中で恋愛がテーマのものがいくつかあります。コンビニの店員を好きになる話、メールのやり取りだけで進む話などです。 ウエストランド井口さんがM-1のステージで言ったように、恋愛の物語にはパターンがそれほどありません。服そのものは同じなのにフリル部

死んだフェラーリ:博士の普通の愛情

数年ぶりに知人と会ったのですが、冷たい結論を先に言ってしまうと彼と会ったことは、私にとって『時間の浪費』でしかありませんでした。誰かと何もせずに無為な時間を過ごす豊かさだってあります。いつも有意義な話をすればいいというものではありません。しかしそういう種類の無駄とは違って、自分とは関係ないネガティブな感情だけを背負わされた気がしたからです。 久しぶりに彼から連絡があって、近くのホテルのカフェに行きました。遅れてやって来た彼を見て驚きました。若い頃はスポーツ選手のような肉体の

ギャンブラーの本質:博士の普通の愛情

「いい歳をして、あなたの恋愛観は中学生並みですね」と女性から言われたことがありました。40代の頃です。自慢ではありませんがまだまだ中学生の恋愛観はしっかりと維持しています。 誤解されがちですが、感情の成分は年齢によって変化するものではありません。それに付随する立場とか世間体が変わっているだけです。その証拠に老人ホームで起きた恋愛がらみの事件などの話を聞くと、まさに感情も衝動も中学生並みです。歳を重ねたからといって同じなのです。 私が恋愛の話が好きではないのは、その動物的な

お知らせ:博士の普通の愛情

今、短編の恋愛小説を数本書いています。更新が滞っていて申し訳ありません。今のところ、コンビニの店員に惚れてしまう話、離ればなれに暮らしているふたりの話、熟年夫婦の海外移住の話、などが書けました。

エンドロール:博士の普通の愛情

この歳になると便利な仕組みが使えるようになることを若者に教えておきたい。それが時効だ。トップギャランが「胸に棘刺すことばかり」と歌った青春時代は、あとからほのぼの思い、笑いながら味わうことができる。今日の話は、いま映画館の座席に座っているひとりの中年男性の40年前の出来事だ。 彼はイラストレーターを目指す専門学校生。当時はイラストレーターが時代の花形だった。『イラストレーション』という雑誌には公募のコーナーがあり、そこに自分の絵が掲載されることを誰もが夢見ていた。彼もそのひ

窒息する:博士の普通の愛情(無料記事)

この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

ブルーのハートマーク:博士の普通の愛情(無料記事)

『愛してる。いつまでも私の娘』 ある女優から聞いた話で一番心に残った言葉です。もちろん状況や具体的な部分はアレンジしていますから、ここからの話はフィクションだと思って読んでもらえればよく、間違っても「あの人のことですか」などと聞く人はいないと信じているので本人の許可をもらって書いています。 「私は日常的に大勢の人から、綺麗ですね、素敵ですねと言われていました。若い頃からです。それらの言葉がいつの間にか心の奥底に沈殿していってしまい、誰とも個人的な付き合いができなくなってし

タイプと年齢:博士の普通の愛情

こゆきさんからいただいた 「好きなタイプは?」「何歳までならオッケーですか?」という質問の正解を教えてください。 というお題にお返事。質問の正解ということは、そう聞かれたときにどう答えたらいいのか、ということでしょうか。取りあえずそれで進めますが、皆さんは明確に「好きなタイプ」ってありますか。背が高い、スポーツマン、優しい、など自分が相手に求める容姿や属性や性格などをどれくらい重視するのかってことですよね。 容姿についてはルッキズムがいまだに幅をきかせていますよね。普段

マガジン内容を一新:博士の普通の愛情

恋愛小説のようなものを書いてきましたが、ここらへんでインタラクティブにしようと思いました。簡単に言えば購読メンバーから恋愛についてのお悩みや持論を送ってもらい、それに答えたり悩んだりしてみようと。 とは言うものの、悩みを解決なんてできませんから聞いてもらえばスッキリするというくらいのスタンスでよろしくお願いいたします。どうなっていくのかはやりながら考えますので、まずは定期購読メンバーの皆様、コメント欄に一言どうぞ。

定期購読メンバーの皆さんへ

「たとえば一週間どこかに遊びに行ったとして、どれくらいいい写真がセレクトできますか」と聞かれることがあります。私はスマホでほとんど写真を撮らないので、遊びに行くときでも普段仕事で使っているカメラで撮ることになります。これがプレッシャーなんですよね。ちゃんとした『作品』と呼べるようなものが撮れるのではないかと淡い期待も生まれます。では、どれくらいの枚数がセレクトできるのでしょう。その答えです。

海を見ると、そう言う:博士の普通の愛情

サヤカさんは以前の職場での同僚。一年先輩だったので色々と仕事を教わった思い出がある。僕が入社して4年くらいしたときに結婚して退職し、そこからは何の連絡もとっていなかった。社長が若い会社だからか、割とクールな職場環境だ。皆で飲みに行くなんてことはなかったし、古い会社にありがちな、休日まで仕事のメンバーと遊ぶなどは考えられなかった。僕にとっては働きやすいのだが個人的な連絡先を知らない社員ばかりだから、会社を辞めるとそれきりになることが普通だった。サヤカさんもそのひとり。 5月の

シンクロニシティ:博士の普通の愛情

YouTubeを見ていると懐かしい曲がアップされていたりする。いい気分になるんだけどそれも長くは続かない。僕が若い頃に MTV やベストヒットUSA が始まった。それを毎週録画しておいて飽きもせずに毎日朝まで観ていると早起きの父親が起きてきて「まだ起きていたのか」と怒られるということがよくあった。 今でも当時の音楽ばかり聴くのは、粘土をこねて作られた自分という人形には、その頃の音楽が砂粒のような不純物としていつの間にか練り込まれているからだと思う。古い曲が流れてきたとき、カ

ありがとうございます:すべてのマガジン

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』 発売されて、Amazonのランキングが出ました。 このカテゴリはこちらで指定することができず、Amazonで振り分けられるようです。現在は「教育」などにもカテゴライズされている模様。 写真の教則本だと思って買った人から「まったく役に立たなかった」というレビューもありますが、「文学」なので仕方ないだろうと言い訳もできます。ネットでタイトルを見て勝ってくれた人が誤解するのももっともなのですが、この本はそういった「TIPS」を勉強して

落とし物のノート:博士の普通の愛情

渋谷の仕事場近くの公園にノートが落ちていた。深夜、ベンチの上に置かれたそのノートは街灯に銀色のラメラメな表紙を照らされている。周りに誰もいないことを確認してから表紙をめくってみた。1ページ目には「メモ断片 Minox」と書かれ、次のページからは何かの脚本のアイデアのようなものが書き留められていた。罪悪感もあったが、風に吹かれたかのようにごまかしながらサッとページをめくっては周囲を見回し、Minoxという人が書いた文字を追っていった。 1:新宿の裏通りでカップルがキスをするシ