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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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#結婚

東京と中国の寒さ:博士の普通の愛情

タクシーのIDプレートが最近、番号だけのものに変わりつつある。女性ドライバーも増えているからプライバシーに配慮したのだろう。昨日乗ったタクシーはまだ顔写真付きのものだったが、そこに中国人と思われる名前が書かれていた。東京では外国人ドライバーが少しずつ増えているので、話をするのが楽しい。 「中国からいらしたんですか」 「はい、そうです」 「タクシーを始めてどれくらいですか」 「3年くらいです」 これくらい話して、相手の日本語のレベルを探る。それほどうまくない人にはあまり難し

不倫ボックス:博士の普通の愛情

「恋愛の話って、本当にバリエーションがないんだよ」 友人のタクロウはそう言ったが、教えてもらわなくてもそんなことくらい知っている。どんなに特殊で個人的と思われる恋愛の悩みも、無印良品の透明ボックスが4つくらいあれば、全部すっきり仕分けして整頓することができる。 タクロウはある女性との物語を聞かせてくれた。不倫だという。僕はもう「不倫」とテプラが貼られた透明ボックスの蓋を開けて待ち構えている。 ある日曜日の午後、タクロウは郊外のショッピングモールで取引先の女性と偶然会った

あなたは貧乏ね:博士の普通の愛情

僕はお金の計算が苦手だ。その理由はいくつか思い当たる。お金に対する感覚は一生変わらないものだと思っているから、変えようとしても無理だと諦めている。みんなお金についての勉強を必要に迫られてするけれど、本を数冊読んだくらいではなかなか感覚までは変わらない。 確かに勉強すれば知識は増えるだろう。でもそれってスポーツ観戦に行き、だんだんルールやプレイの意味がわかっていくことに近い気がする。本当はわかった気になっているだけなのに。でも、スポーツの本質は、ボールを打った感触とか、ジャン