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編集後記『ソフトウェアテスト講義ノオト』

 秋山浩一さんの著作『ソフトウェアテスト講義ノオト』は、noteの連載が終了するタイミングで、たまたま秋山さんとのやり取りがあったからものにできた企画であった。
 編集担当者の志願を募り、手を上げたIに任せることにした企画でもある。ところが、ある程度、原稿の取捨選択が終わり、よいよ通して査読して、推敲していく段階になって停滞した。
 Iが担当する原稿が続々と入って来てにっちもさっちもいかなくなったのだ。正直なところ困った。何しろ途中経過はほとんど見ていない。

 そこでというか観念して頭から通しで原稿を読んでいくことにした。原稿を読んで不明な点を正し、修正案を付けていくという作業は完成図が見えないジグソーパズルのようなものだと思う。うまく著者の頭にある完成図にピースがはまる提案ができたときは「やったぜ」とか「やっぱりな」と鼻高々となるし、逆に「違います」とか「それだと意味が変わります」などと言われるとしょげてしまう。長年やっているのでしょげることは少なくなったが、自分では良いのではないかと思ったことが却下されると・・・。

 こういう著者と編集者のやり取りを経て、本は世に出される。けっこう、手間暇がかかっている。noteの原稿がベースであるが、本にするための制約条件が加わったためにひと味違うものになった(はずである)。冒頭で簡単に書いてしまったが、noteをすべて使うと320ページに上る。これを200ページまで圧縮してる。この荒技は、秋山さんとIの共同作業だった。

 なお、Iから編集を引き継いだ私が、校了間際にコロナに感染し出社できできなくなり、校了作業をAにお願いした。という訳で、単行本なのに3人のリレーで出版に漕ぎ着けた珍しい事態になったことが記憶に残る。秋山さんが寛大な方で助かった。

書名をめぐる

 書名はいつも頭を悩ませる難題だ。
 企画当初の仮題は『ソフトウェアテスト技術者の教科書』だった。気に入らないがとおっしゃりつつ『ソフトウェアテスト勉強会副読本』という代案が秋山さんから出された。が、決定打に欠けていた。ここまでは、Iと秋山さんがやり取りしていた。

 あまり口出ししてはいけないと思いつつ、膠着状態を脱するために視点を変えた案を出した。そのときのメールの抜粋が下記である。

PowerPointのノートに書く内容、同じテキストでも講師によって異なるセミナーになる。ということが前書きにあります。ここを意識して次のようなのはどうでしょうか。
『ソフトウェアテスト「ASTERセミナー標準テキスト」のあんちょこ』
『ソフトウェアテスト「ASTERセミナー標準テキスト」講義ノート』
『知っておきたいソフトウェアテストの急所ーー「ASTERセミナー標準テキスト」の学び方』
少し発想が広がると良いのですが。

自分が出したメール

 このメールに対して即座に『ソフトウェアテスト講義ノート』が良いという返信をいただいた。その後、ノートをノオトに替えて上梓された。
 実を言うと、「ノオト」を採用するにあたってはかなり悩んだ。秋山さんの提案だが抵抗感があった。しかし「ほぼ日ノオト」の存在を知って、「それなら良いか」となった。糸井重里氏の会社で売っているノートの商品名にあやかろうではないかと思ったのだ。
 言葉の選び方は難しい。

 秋山先生、面白い編集をさせていただきまして、ありがとうございました。(了)

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