GWEDノート:キャラランクのお話(後編)

こんにちは。aniです。
引き続きキャラランクの話をしていきます。

前回は2004年~2011年、エンドレスデュエルの対戦観が形成され、いったん固まりつつあった時期のキャラランクについて語りました。その時のキャラランク表がこちら。

S:エピオン、シェンロン
A:メリクリウス、ウイングゼロ、トールギス
B:ウイング、デスサイズ
C:ヘビーアームズ
D:サンドロック、ヴァイエイト

細かいところで見解の差はあるものの、上位2キャラ下位2キャラはほぼ固定で、中間層をどうするかが人によるって感じでした。
エピオン・シェンロン2強時代からこの後どうかわっていくのでしょうか。日本で行われた貴重なトーナメントシーンなんかにも触れながら見ていきたいと思います。


エピオンの殿堂入り


海外ではとっくの昔からぶっちぎりの強キャラとして認定されていたエピオンなのですが、日本だと長らくシェンロンと並ぶ2強扱いでした。破格のメガ必殺技スパークウインドや中段技のショートジャンプ、やけに減るダウン追い打ちなど、個々のパーツの強さは認知されてましたが、実際のところシェンロンに比べると強さの輪郭が曖昧だった気がします。
日本ってスパ2Xの豪鬼とかもそうなんですが、隠し要素でプレイアブルになるようなボスキャラクターに対しては少しイリーガルというか、対戦で積極的に使用すべきではないみたいな空気感がありますよね。そのせいかあんまりガチで使い込む人がいなくてエピオンの研究も遅れていた気がします。

そんなエピオンですが、やり込む人が現れるとすぐに異常性が露見していきます。
シェンロンの2Bに次ぐリーチの下段である2Aが引っかかったら6割+起き攻めとか、シェンロンのJ2Bに次ぐリーチのジャンプ技であるJBをガードしちゃうとクイックジャンプと2Aの2択が始まって、通ったら3割〜6割+起き攻めとか、攻め継続してるだけのクイックジャンプJXが勝手にブーストジャンプ狩りになる+起き攻めとか、画面端の弱投げから3割+起き攻めとか・・・


画像1

エピオンの基本コンボの減り。開幕2A刺さっただけでもうこれです。


とにかく何当たってもこのゲームで一番減るダウン追い打ちとこのゲームで一番強い起き攻めがついてくるし、ちょっと有利フレーム与えただけで2択・3択がすぐ飛んでくるので、相対してるほうはたまったもんじゃありません。
しかもエピオンの体力はヘビーアームズと並んでお硬め。ガーキャンメガ必もリターンの割にリスクは低く、空中ナイトメアブリングの発生の速さで追いかけてきた相手に逆にリスクを与えるなど、防御面でも恵まれているという手のつけられなさ・・・

とはいえ立ち回りでは依然としてシェンロン最強を推す声は多く、当時の2chでもエピオンの強さに懐疑的な人はいたようです。
筆者も某ブログでチラッとエピオンはそこまで強くない、という話を見ていたので、意外と何とかなるんじゃないかと思い、何回か師匠である”エンドレスデュエルガチ勢”氏のエピオンにメインキャラのメリクリウスで挑みました。(なお、僕のメリクリウスは後述する旧劇で2回優勝し、師匠のシェンロンとはほぼ5分です。)

以下はそのエピオンVSメリクリウスの模様が掲載された動画です。(動画の7:20ぐらいから)

【ガチ】ガンダムW エンドレスデュエル 対戦動画6
https://www.nicovideo.jp/watch/sm22227182


うん、気持ちいいぐらい惨殺されてますね!
この試合以外もだいたいこんな感じの惨殺で、たまに勝てても10本中せいぜい1~2本でした。ひでーキャラだな、おい!

いや、起き攻めは慣れると結構見えるんですよ。中段は光るし。でも何引っかかってもダウン追い討ち含めて3割減るのはアカン。そして引っかからないとか無理。主にJXとナイトメアブリングにキレてます。

この動画ももう7年前なので、さすがにいろいろ動きが古いですね。最近の対戦だとメリクリウスはエピオンの攻めを地上で捌けることが増えてきたので(=BJしない分JXとナイトメアに引っかかりにくくなる)、基礎技術向上もあってもう少しいい勝負はしています。それでもキャラ差は感じますが…

禁止級キャラであることを肌でわからされた人間が他にも何人かいたのか、エピオン1強に異論を挟む者は徐々にいなくなり、大会でも暴れまくった結果、最終的にエピオンは殿堂入りし、以降キャラの強さ議論ではほとんど絡んでこなくなりました・・・めでたしめでたし。



シェンロン、2強から転落


さて、エピオンが殿堂入りした後、2強のもう一方の雄、シェンロンのランクがあるキャラによって揺るがされます。


画像2

テイッ!(ペチッ)


そうです、ムエタイキックでお馴染みのウイングゼロです。

ウイングゼロが強キャラと化して来た背景はいろいろありますが、大きいのは対空意識の変化近接の攻防の研究が進んだことでしょう。これらの対戦セオリーの変遷を追いながら、何故ゼロがシェンロンを上回るに至ったかを言語化していきます。

シェンロンが猛威を奮っていた時代2010年頃までは、このゲームにおけるBJは大きなリスクなく仕切り直し出来る安定行動でした。しゃがみブースト連打で近接2択を回避するGBJに始まり、硬直の長い牽制技をスカったりガードされてもBJでごまかし、攻めで崩しをミスってもBJで再度上からおかわりを狙う…それぐらいBJは気軽にこすっていい技でした。

BJにリスクを与える方法がなかったわけではありません。それまで主に使われていたのは先読みで地対空やジャンプ攻撃を置いてBJを潰す、"BJ狩り"という対策だったのですが、1点読みになってしまう上に失敗したときに相手にターンを渡してしまうため、依然として防御側有利な読み合いでした。(エピオンとか一部キャラは普通に攻め継続してるだけでBJをはたき落とせるので例外です。)


画像3

先読み昇りJBが失敗した図。この後ディフェンス側のターンになる。


しかし、対戦研究が進み、やり込んだプレイヤー達はこの不安定な先読み空対空をやめ、BJで相手が飛んだのを見てから、発生の速い空対空で追いかけるという選択を取り始めます。基本的にガードされるんですが、ガードさえさせることが出来れば先に着地して攻めを継続することができるので、それで良しとしたわけです。BJ狩りのような直接的なリターンはなく、成功しても通常技の削りダメージ程度しかありませんが、拘束時間が長ければそうした削りや投げ抜けのダメージもバカにならなくなりますし、単純に択をかける回数が増えるに従ってまとまったリターンを取るチャンスも生まれるため、とにかく攻め側はターン継続を主眼としてBJを抑え込むようになりました。


画像4

後出し昇り対空。基本ガードされるが、その後が有利になる。


また、空中の相手に技をガードをさせて有利をとる行動として、しゃがみバルカン対空も強い行動として認知されるようになり、こちらも安易なBJにリスクを負わせるようになります。

これらの対空意識の変化により、触られてもすぐに防御側がBJで仕切り直すことが出来ていた環境は一変し、上に逃げることがリスク化していきました。そして、いかに相手を上に逃げるしかない状況に持っていくか=脱出しにくい画面端にいかに相手を押し込むかという、一般的な格ゲーのセオリーに立ち返る現象が起きました。

空中にいる相手をガードでもいいから引きずり下ろし有利フレームを得た攻め側は、そこでターンを継続させてダメージを稼ぐ方法を研究し、逆に防御側はそれをどれだけ安いダメージで回避できるかを研究していきました。結果、近接の攻防がどんどん煮詰まり、これまで発生とリーチばっかり注目されて、ブーストキャンセルがあるからと軽視されがちだった通常技の有利不利フレームや全体モーションの長さが重要になってきました。(※発生とリーチは引き続き重要です)
ここの攻防の細かい解説はいずれ単独で記事にしますが、今回は「BJが安牌ではなくなった」「地上近接で読み合う時間が増えた」とだけご理解いただければと思います。


こうして、

中間距離でBJと牽制技を主体とした立ち回りによる攻防

から、

近接で有利状態を継続してダメージを蓄積させる、ターン制ゲーム

へと対戦のスタイルが変わってきたのが、2013年~2018年あたりの日本のエンドレスデュエル事情となります。



さて、前者の対戦スタイルでは最大評価を与えられていたシェンロンでしたが、後者の対戦スタイルでは以下のような近接面での弱点から徐々に評価を落としてきました。

△小技に下段がない⇒下段を刻めず、下段を出した時点でターンが途切れる
△小技の有利フレームが少ない⇒ダッシュや歩きで詰め直しづらいので、投げの距離をキープしにくい(=密着だけ投げ抜けを意識すればいいので相手は楽できてしまう)、また、相手の投げ暴れが通りやすい
×体力が少ない⇒近接で何か通常技が通ったらだいたいでかいコンボに発展するため、他キャラが死なないコンボで死んだりする

(※誤解しないでいただきたいのですが、近接に↑の弱点があってもなおシェンロンは強キャラです。空に逃げた相手を背中側からでも引きずり下ろすJAの性能はゼロのJBにヒケを取りませんし、5Aで他キャラではカバーできないような位置で空中にいる相手をはたき落とせるのもこのキャラならではです。エピオン以外に大きな不利を持つことは今後もないと思います。)


さて、一方同じ項目をゼロで見てみるとこんな感じ。

〇小技(5Y)が下段⇒6Yという入力でも出るので、6キー押しっぱなし+適当にY押すだけで歩き投げと下段の二択が発生する(おまけに相手の投げ暴れも自動的に抜ける)
〇下段の小技がガードさせて+4F⇒下段を自由に刻めて、ダッシュや歩きでの刻みなおしも可能。相手はブースト以外で逃げるのが困難
△体力は並

投げとコマンドを兼用できる下段の小技ってだけでもアドバンテージがすごいのに、有利Fも全体モーションも優遇されており、キック1本でこのゲームの近接を制するガチンコのムエタイキッカーでした。
このキック(5Y)、着地キャンセル(ジャンプ攻撃先端当てから着地硬直をキャンセルしてダッシュし、一気に相手の懐に潜るテクニック)ともすこぶる相性がよく、相手が対空処理ミスってJAをガードしたらすぐに懐に下段で飛び込んでいけます。普通のキャラだと着キャン後に出す技は上段攻撃なので、相手もガードしながらとりあえず投げをこする(連続ガードじゃなかったときに投げ抜けで有利な仕切り直しができる)のですが、ゼロのは下段なので、それができません。
そしてキックを刻んでどこかで下段が通ったら2Aにつないで上方向の強バスターで占めてそこから前ブーストすれば、ゼロが有利な状態で再度近接になるというループ性の高さも非常に強く、画面端の攻め継続が最も得意なキャラとして一躍台頭してきました。

もともとゼロは空中戦・遠距離戦では最強クラスの評価をされていましたが、近距離戦でも王者となったことで、ゼロとシェンロンとの力差は逆転し、キャラランクでもエピオンに次ぐ評価を得るようになってきたわけです。



2018年のキャラランク


エピオン1強化とゼロの台頭を反映した2018年時点での日本のキャラランクがこちらです。例によって同ランクは左ほど強いと思ってください。

S:エピオン
A:ウイングゼロ、シェンロン、メリクリウス
B:トールギス、ウイング
C:デスサイズ
D:ヘビーアームズ
E:サンドロック、ヴァイエイト

かつての栄華を知ってる人たちからは

「マジかよ、シェンロン3位かよ・・・」

という声が聞こえてきそうです。研究が進んでゼロと同じランクまで降りてきたというだけで、依然としてエピオンを除けば最強格には違いありませんが、頭1つ抜けてた存在がこの位置まで下がってきたというのはやはり衝撃は大きいかと思います。

ちょうどゼロが台頭してきた2013年頃から、旧劇という日本のレトロ格闘ゲームの大会でエンドレスデュエルが採用されるようになります。あくまで参考ではありますが、トーナメントシーンにおける各強キャラの活躍度合いを確認していきましょう。


以下は過去開催された旧劇において、エンドレスデュエルが採用された回の優勝キャラ・準優勝キャラ一覧となります。

2013_第2回旧劇:メリクリウス
2014_第3回旧劇:ウイングガンダムゼロ
2015_第5回旧劇:エピオン
2016_第6回旧劇:ウイングガンダム
2018_超旧劇:メリクリウス

かつての2強の片割れ、エピオンは第3回、第5回で暴れまくってますが(第3回では予選では暴れまくってたエピオン使いが準々決勝あたりで何故かメリクリウスを使って負けたため、暴れるだけ暴れて決勝には現れず終わりました)、シェンロンのほうは一度も優勝がありません。
もちろん使い手がいなかったわけではなく、使用率では毎回1位2位を争っていますし、シェンロン使いの強豪も参加してました。にも関わらずここまで1回も優勝がないというのは、少なくとも2011年までのランクで言われてきたような抜けて強いキャラではないことのひとつの証左といえるのかもしれません。


さて、これでキャラランクは落ちついて来たと思いきや、最新のキャラランクではさらにまた動きがあります。

次回はキャラランク番外編として、令和の最新エンドレスデュエル情勢と、海外でのキャラランクをご紹介したいと思います。

ではまた。

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