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『わんだふるぷりきゅあ !』 第8話 絵コンテマンによる解説

この記事では、私が絵コンテを担当させていただいた『わんだふるぷりきゅあ!』第8話「まゆのドキドキ新学期」の絵コンテの演出意図を解説しています。

映像の解釈は人それぞれですし、正解というものはありません。解説すること自体が野暮だとは思いますが、少しでも作品関係スタッフやアニメクリエイターのみなさんがどんなことを考えて作っているかを理解してもらえるきっかけになれれば幸いです。

また、解説の注意点としてもう一つ。この解説はあくまでいち絵コンテ担当者としての主観です。絵コンテを納品して以降は制作現場とは一切接触していないので制作現場の内幕は分かりませんし、現場で絵コンテのままだとうまくいかないところなどは演出さんや話数関係スタッフの方々でいろいろ調整・変更していただいてると思います。

ラジオでも同様に解説を話しています。文字よりもラジオ的に聴きたいという方はこちらでもお楽しみいただけます。

文字のほうが好きな方は以下をどうぞ。


↑は予告です。本編映像はTVerで3/31まで視聴可能です。また3/31以降もPrimeVideoなど各種配信サービスなどでは視聴可能です。

↑は予告です。本編映像はTVerで3/31まで視聴可能です。また3/31以降もPrimeVideoなど各種配信サービスなどでは視聴可能です。

まゆの心情と成長描写について

冒頭とラストで同じようなシーンを描くことで彼女の成長と外への意識変化を描いたつもりです。

  • 冒頭シーン: 曇天で室内が暗め。影によって彼女の内不安を描写。この段階では窓外の街の風景も暗く、楽しそうに見えない。窓もキッチリしまっています。

  • ラストシーン:夕景の学校でいろはに助けてもらったことで色調(気持ち)が冒頭よりも少し明るくなっています。ユキの導きによって窓へ誘われ、外の夕景に感動(同じ景色なんだけど少し世界が変わって見えている)
    ちゃんと「自分で窓を開ける」アクションを見せることで冒頭からほんの少し成長したまゆを表現できたらと思って描きました。

実は教室シーンで入ってくる際にもまゆは「ドアを開けている」のですが、この段階でドアを開けるアクションを見せてしまうとラストの窓開け効果がなくなると思って、かなり無茶な真俯瞰アングルにしました。

逆にまゆとの対比として、いろはは豪快に教室の「ドアを開ける」動きを見せたかったのですが、コンテ尺がかなりオーバーしていたこともあり、ドアを開ける動作は冒頭の家の玄関のドアのみにしました。

なので「ドアの開け方」が、いろはとまゆの「人との距離のつめ方の違い」の比喩になっております...!!

ちなみに脚本ではラストシーンは夕方ではなく夜でした。
なのでコンテ開始当初は、まゆが窓を開けて見えるのは「美しいアニマルタウンの夜景」にしようと思ったのですが、部屋が2階で住宅街という設定だったため、あまり綺麗な夜景は描けない...と思い、夕方に変更させていただきました🙏

まゆの自己紹介シーンについて

『ネコババ屋敷まゆ』と言い間違えるくだりは脚本にはなかったのですが、、、作ってしまいました🙇‍♂️

「これを言わなきゃ」と強いプレッシャーがある中で別のワードが飛び込んできて元々考えていたことが飛んでしまい、完全に真っ白になる...という自身の過去の経験から出たアイディアでした。

当初脚本をラフコンテに起こした際、私の力不足で見てる側に自己紹介シーンが少し印象に残りづらくなる懸念があったので足してみた次第です。

もちろんリテイク出たら直すつもりでしたが監督チェックが通ったので今回の教室での悟くんのように「グッ」と、思わずガッツポーズが出ました🔥

教室での悟といろは

前にも書いたたように、いろはの人との距離のつめ方の特徴を「ドアを開ける」というアクションに比喩として込めていたのですが、その視点で見ると、実は悟のアップショットの後ろに見えるロッカーにもある仕掛けが。(完全に自己満です)そしてここで鳴るチャイムにも意味があります。
もしよければ意味を考えて楽しんでいただけると嬉しいです。

ちなみに、これはどうでもインフォメーションですが、悟の控えめガッツポーズの元ネタは、メジャーで日本人初ノーヒットノーランをした瞬間の野茂選手のガッツポーズです。(動きは違いますが)

渡り廊下のまゆといろは

まゆの、いろはに対する気持ちを光と影で対比させることで表現する場面設計を意識してみました。

先の自己紹介シーンでいろはに助けられ、あらためていろはが特別な存在になったまゆ。
一方まゆから見たいろはは持ち前のコミュ力で生徒全員が友達かのように
振る舞っています。自分にとっては特別でも、いろはにとって自分はたくさんいる友達のうちの一人なのかも...と思って一歩引いて壁を感じる心情を、「柱」「ひなたと日陰」の要素で描けたらな...と。(顔は笑ってるけど、足の仕草で本当の感情を出す)

そんなまゆを見て、ひなたに立っていたいろはが「境界である柱」を越えてまゆのパーソナルスペース(日陰)にずかずかと入り込んでいく。ここではドアは無いんですが「ドアを開ける」というアクションを、形を変えて彼女はやってくれちゃってます。

このシーンは先述の冒頭とラストシーンでまゆの成長(変化)を出すためのブリッジとして機能していると脚本を読んで解釈しました。つまり物理的にも物語的な進行としても「渡り廊下」になっているのだなと。

ちなみに、シーン2カット目でいろはが学生とすれ違う際、学生のinのタイミングや挨拶する間、いろはが手を振って答えるシート付けが絶妙すぎて、思わず演出の岩井さんや作画さん、編集の麻生さんに手を合わせました🙏ありがとうございました!

こむぎのおさんぽシーン

こむぎがいろはに会いに学校へ向かう途中、商店街に行ったりするのですが、あのシーンはかなり自分で街を歩き回ってアイディアの種を探しました。

その中で撮った写真の一部をレイアウトの下地にしています。


おさんぽシーン冒頭のカット
おさんぽシーン2カット目。通行人とすれ違い挨拶するこむぎ
こむぎがいろはの匂いを嗅ぎ取って右側の道を選択するカット

すべてのアイディアが自分の中から出てくる力があったらいいのですが、残念ながら私はそのようなタイプではないので、1週間ほどひたすら街を歩き回りました。笑

もしよければ、それぞれがどの場所か探してみてください!


以上です! 最後まで読んでいただきありがとうございました!

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