正しい画を求めて④ 500万のモニタのくせに変に赤んでんすけど!?これ(憤怒)

前項では光は色ではないこと、スペクトルの分布と強度が色と明るさに定義されることを話した。

しかしスペクトル測定に使用する機械は一般に用意に準備できるものではなく、仮に用意しても数百万円のラボグレードのものを除けば現代のモニタを測定するには性能が足りず、現実的ではない。
言ってしまえばそれは東京から大阪へ行くのに自宅にヘリポートを用意してヘリで行けば楽だし早いぞ、みたいなものだ。
普通は新幹線だが新幹線じゃ駄目なのか?ということ

通常はモニタの測定には比色計(colorimeter)と呼ばれる機器が用いられる。
比色計は簡単に言えば測定したい光をrgbのフィルタを通してセンサーで捉えた、三色刺激値から色と明るさを測定する機械である。

実のところ、前項で紹介した分校測色計よりも比色計のほうが人の目の構造に近い。
人の目は光をlms3つの錐体で感知しており、rgbのセンサーに相当するからである。
ちなみに各錐体の数や分布は個人レベルで異なっており、故に色や光の感じ方は厳密には個人で異なるのである。

比色計ではrgbのフィルタを通して光を測定した結果を出力する。
この方法は利点もあり、測定精度が高く高速であり、低輝度での測定感度も高い。
とはいえ完璧な装置ではなく、あくまでフィルタを通ってきた結果を測定しているのみであり、スペクトルそのものは決して測定出来ない。
すなわちそれ単体では正しく色を定義できないということである。

とはいえあくまで定義する情報がないだけだ。すなわち先に定義を与えてやれば十分高精度な測定が可能である。

一般に用いられる比色計にはx-riteのi1d3シリーズやdatacolorのspyderが挙げられる。
i1d3で測定したことがあれば、モニタタイプといった名称の選択項目を見たことがあるだろう。
それが比色計補正であり、x-riteではedr形式で比色計に補正値を組み込んでいる。
ここで適切な補正を選ばないと測定結果が大幅に狂ってしまうので、注意したい。
キャリブレーションに言及した記事やセミナーなどはいくつもあるが、これに言及したものは少なく、それで校正しても十分な効性にはなっていないだろうと危惧する。

プロフェッショナルや業務用ではcr-100やklein k10-aが有名だ。
これら業務用機は低輝度から超高輝度まで安定して測定が可能であるが、いくら高級な業務用機でも、その原理上比色計補正が相応に取れていなければ、精密に間違える、事になるので注意したい。

前述の通り比色計そのものは色を知ることはできない。あくまでフィルタを通した光の強度がわかるだけだ。
これを定義する方法は様々であり、たとえばargyll cmsではccss(colorimeter calibration spectal set)やccmx(Colorimeter Correction Matrix)といった方式を採用している。
これらは4 Colour Matrix (FCMM) に相当する。
lightillusionのcolourspaceなど、プロフェッショナル向けのソフトではより複雑だが高精度な4 Colour Volumetric Matching (FCVM)やMulti-point Volumetric Matching (MPVM)といった方式を採用しており、より高精度な補正が可能だ。

ここで重要になるのが分光測色計である。この方式では比色計に対し、分光測色計で計測した色の定義がリファレンスとなる。
すなわち分光測色計で正しく色を定義していなければ、どんなに優れた機器やソフトを使おうと、精密に精度良く間違える、だけになってしまう。

分光測色計が校正され正しい状態にあることが重要であるのは言うまでもないが(i1pro2はメーカー校正非対応だがi1pro3はメーカー校正を受けられる)、前項で言及した等色関数も重要となる。
分布測色計が見るのはあくまでスペクトル分布と強度のみであり、それは色としては未定義の状態だ。
フィルタを通した測定値はいわばlms色空間の状態であり、そこからXYZ色空間として色を定義するには等色関数が必要だ。
dispcalやhcfrといったソフトではobserberとしていくつかの項目から選択できる。CIE1931-2やJUDD、CIE2012-2などが並んでいるだろう。

標準ではcie1931-2が選択されているが、cie1931-2は現代のwcgモニタに使用すると赤みが強く出るなどの問題が知られている。
これはメタメリック障害とも呼ばれており、1931で測定する場合は測定値にオフセットを加えることで、もしくは等色関数に現代のWCGモニタのような鋭角なスペクトルを有するものに対応した等色関数を使用することで対応できる。
具体的な方法は実際の校正ワークフローの話で言及しよう。

余談だが、ソニーのbvm-x300という究極のoledモニタ(500万円の31インチモニタ)において、メタメリック障害により赤みがかる問題があった。

cie1931-2はcrtのような幅の広いスペクトルには対応していたが、bvm-x300のようなrgb方式のoledでは正しく色に変換することができなかったのである。
この際は等色関数にjuddを用いることで対策となったはずである。(iirc)

しかし、この問題はデュアルレイヤー方式のhdrリファレンスモニタ、bvm-hx310で再発することとなり、測定結果にオフセットを設定することで対策としているようである。

geninu hdr colourではwcgモニタにはdispcalのccmx作成時の等色関数にcie2012-2(cie170-2)を採用することを推奨しており、現実的にはこの方法で好ましい結果が得られるだろう。(afaik)

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