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機動戦士ガンダムSoul 追憶編「始まりの日」

―――どうやら俺は、この世界から見放されたらしい...

虚空を仰ぎながら、少年はそう呟いた。

西暦2039年、国民の圧倒的支持を受け、ある法案が国会で承認された。後に『精神疾患者 特別保護法』と呼ばれるこの法は表向きには、精神疾患者を保護し、その家族の負担を軽減すると言う目的で作られたものとされていた。だが実際は希少な適正者をソウルエッジと言う名の檻に入れ、ブラッドフレームのパイロットを確保する為の国策だった。

少し寒い冬の日。朝もやの中、その少年は、国立の精神病棟から移送されてきた。

「さっさと歩け!」

おぞましいモノを見るような目つきで男達が命令する。移送車から無理やり降ろされた少年。その両腕には後ろ手に手錠が嵌められており、身体中にある無数の傷が凄惨な過去を物語っていた。

何の説明も無いまま、銃を持った男達―――監視官と呼ばれる者に、少年はある部屋まで連行された。

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「御苦労。君達はもう下がって良いよ。」

薄暗い部屋の奥に座っていた男がそう言うと監視官達は、逃げるように部屋から出て行った。

白衣を着た男は、ゆっくり立ち上がると

「さて、神崎...リュウと言ったね。私は君の担当になった片桐と言う者だ。宜しく。」

「宜しく……か。あんたも、俺がこの世界には『もう一つ違う世界がある』なんて言ったら、笑うだけなんだろう?」

リュウと言う名の少年は卑屈な笑みを浮かべ、片桐を見上げた。

「もう一つの世界? それは……これの事かい。」

片桐がそう言うと、部屋全体が一瞬で灰色になった。

「この灰色の世界……我々は『閉ざされた世界』と呼んでいるがね。」

リュウは愕然とした。自分以外の適正者を見たのは、これが初めてだったからだ。

「私の研究に協力してくれないか。」

子供のように微笑む片桐博士。

少しずつ狂い始めた世界。

二人の運命は、この時から交わり始めた。(終)


子供の頃からアニメが好きで、そのまま大きくなった40代です。(*´∀`)♪懐かしいアニメから最新のアニメまで、何でも見てます。