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インポスター・フリーレン、インポスター症候群・シュタルク

im・pos・tor, -・post・er | ɪmpɑ́(ː)stər|-pɔ́s- |
名詞
氏名[身分]詐称者; ぺてん師, かたり, 詐欺師.

ウィズダム英和辞典

インポスター症候群(インポスターしょうこうぐん、: Impostor syndrome、インポスター・シンドローム)は、自分の達成を内面的に肯定できず、自分は詐欺師であると感じる傾向であり、一般的には、社会的に成功した人たちの中に多く見られる。(中略)この症候群にある人たちは、能力があることを示す外的な証拠があるにもかかわらず、自分は詐欺師であり、成功に値しないという考えを持つ。自分の成功は、単なる幸運やタイミングのせいとして見過ごされるか、実際より能力があると他人を信じ込ませることで手に入れたものだと考える。

ウィキペディアより

9話の戦闘は神作画なのか

気になったことではあったので、今更だがアニメ版「葬送のフリーレン」第9話の戦闘の場面の話をしたい。素晴らしい作画であることは確かだが、「神作画」と絶賛されるほどではなかったと、個人的にはそう感じている。

その手前の場面、シュタルクがジャケットを着る場面も確かに素晴らしい動きの作成が成されていたが、その場面も「動きのデザインとして優れている」と同時に「動きを見せるための技術が十全に用いられている」とは言えるものの、そこまっで褒めるほどか、と問われれば、そこまでではないと感じる。

それは、逆が真なのかもしれない。私の「良い作画」に要求するデザインや計算の程度が、高すぎるのだ。きっと。

作画の工夫はもちろんある。そして、動きの激しい部分をカメラワークや動画のデザインで隠し、手間を省くための技術も用いられていると私は見ている。また、ここでは2コマ打ち、3コマ打ちが使われている部分が多く、なめらかに(ぬるぬる?)見えるようでいて、それは外連味のある動画によってそのように見えるようにデザインされている、と、私は見ている。

特徴的だったのは、「背景動画」をセルルックの絵で人の手で描いていたことだ。このことは、第6話でのシュタルクとドラゴンの戦いでも観察できる。

最近では、CGの発達によりあまり使われなくなっていたように思う。CGで作成した背景の絵を人工的なパースに添って変形させて、カメラが動いている時の絵を作る方法が多く取り入れられるようになって、この手法は減っていた。
よりセンスと手間が必要なやり方で、よくデザインされたセルルックの地面をアクションに合わせて手書きで動かし、全体を動く絵として描いて表現するなどの画面を描いた。そのことが画面全体を動かしてアクションを描く時の外連味を感じさせ、全体として良い動きをデザインしたことが、この場面の作成において成功していたように思う。

インポスター・フリーレン

最初に提示した通り、インポスターとは詐欺師、ペテン師のことを指す。しかし、フリーレン程度のことは人ならば必ずやっているのではないか。自分の才能を常に全開にしてひけらかすのはさすがに愚かと思われてしまうだろう。必要な時に必要なだけ開示したり、用いたりすればよい。その方が明らかに長時間、長期間にわたって安定した実力を発揮できる。アスリートであれ、ビジネスパーソンであれ、競走馬であれ、戦略に合わせて実力を使うのが、人間界での当たり前ではないのか。
それが○○らしくない、卑怯だと誰が言うのか。

このことは、「フリーレン」の世界にいる魔族には全くわからないこと、なのだと思う。人間は魔族を「卑怯だ」というようだが、私には魔族は「一つの基準しかない正直な動物(魔物)」であるように見える。だからこそ、1000年分の魔力を隠し続ける戦略に、数百年もの間だまされ続け、それをアウラも修正できなかったのだ。

まあ、魔族の言葉にだまされる人が続々といるのが実情ではあろう。だから魔族はそれなりに繁栄している。

魔族をだまし大量に狩る知恵はそのうち共有され、そのときには魔族は絶滅するのだろう。人間はその程度には狡猾だ。

何故、500年、1000年の間に「能力を隠す」という戦略を採る者が、魔族の中に現れなかったのか。
その答えも単純で、彼らは魔力を常にひけらかす必要に迫られていたからである。そして、それが正しく秩序を作ると信じ、500年以上疑うこともしなかった。
油断か、怠慢か。あるいは愚かか。戦争ボケか。平和ボケか。

少なくとも、フリーレンが自称卑怯者であり続けたくらいには、彼らは正直者である。

インポスター症候群・シュタルク

シュタルクは逆で、彼は自分の能力を過小評価しているとしかいえない。というより、彼は自分の強さの本質がどこにあるか、まだよくわかっていないのだろう。

彼が強いことは視聴者には筒抜けである。第6話であのドラゴンを、ほぼ一撃で屠ったのはフロック、偶然ではなかった。それは間違いなく、彼の能力である。
しかし、彼はいざという時に土下座ムーブをかます憶病者である。彼は自分の能力を低く見ている。それは、「自分は詐欺師である」と思い込む、インポスター症候群といえるかもしれない。

そして、シュタルクの真の能力は、その桁外れの頑丈さにある、と私は見ている。言ってみれば、シュタルクは複数回、少なくとも10回以上「くいしばり」ができる。さらに、自分の身体に鋼鉄でも切れない剛性と弾性を持たせることができるのではなかろうか。それが見て取れるのが第9話であろう。彼は待たしても、ほぼ一撃でリーニエを屠った。

彼にはそろそろ、自信を持って欲しいとは思う。だが、臆病であることは戦士にとって必要不可欠な資質なのかもしれない。その辺りはこれから明らかになるのだろう。

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