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第1夜 チンパンジーの事例から考える動物福祉

2021年4月10日に初めての「どうぶつたちの眠れない夜に」を開催しました。
最初に選んだテーマは…
テレビ番組で有名なあのチンパンジーのことを扱うことにしました。

1.チンパンジーがメディア出演すると、どんな問題があるのか?

まず、チンパンジーがメディアに出ていることでどんな問題があるかを整理しました。
私たちが問題点として挙げたのは、この3点です。

①幼少期に大人と暮らしていないため、社会性が身につかないこと
②その個体の感情に反したテロップや加工音がつけられ、筋書通りに編集していること
③自然ではありえない行動を演出させる点

それでは、1つずつ見ていきましょう。

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①社会性が身につかないこと
チンパンジーは幼少期、群れの中でたくさんの大人と関わることで、チンパンジーとしてのルールや、餌の取り方、コミュニケ―ションのしかたなど、様々なことを学んでいきます。
また、チンパンジーは8歳くらいになると、人間よりも力が強くなってしまうので、メディアなどで使用できるのはそこまで。
チンパンジーは50歳くらい生きますので、幼少期で様々なことを学べなかったチンパンジーは大人になってから大変苦労してしまうのです。

②チンパンジーの感情に反したテロップや加工音
チンパンジーと人間の表情での感情表現は、同じではありません。
まるで笑っているように見えても、恐怖を感じている表情だったりします。
それを、人間側の都合がいいように、テロップや加工音がつけられていました。

③自然ではありえない行動を演出
番組では、2足歩行させたり「おつかい」と称した企画が行われていました。
本来4足歩行であるチンパンジーに2足歩行をさせるのは、
チンパンジーにはかなり無理をさせているように思えます。
それに、「おつかい」をしていた年齢は、常に母親と一緒にいる年頃です。
不安の表情は度々現れていましたが、楽しそうな音楽やテロップが加えられ、まるでチンパンジーが楽しんでいるかのような編集になっていました。

これら3点をみなさんと押さえた上で、
「チンパンジーが身近に見られる動物園ではどうなの?」
ということを一緒に考えていきました。

2.参加者のみなさんと基本情報の共有

まず、動物園の役割についてお話しました。

動物園には、
①種の保存
②調査研究
③教育
④レクリエーション
という4つの役割があります。

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次に、動物福祉とは?というお話もしました。

動物福祉とは、
人間が動物を利用することを認めた上で、
・飢えと渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み、傷害、病気からの自由
・恐怖や抑圧からの自由
・正常な行動を表現する自由
という5つの自由を保障するものです。

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3.参加者のみなさんとお話し

それを踏まえて
メディアに出演しているチンパンジーの話に戻り、
参加者の皆さんと考えや思いを共有しました。

4.第1夜まとめ

初回のこの会では、
動物福祉の基礎の確認から、

・チンパンジーの生態
・表情と感情のお話
・今後動物のメディア出演にどう向き合うか

という内容を、
実際の事例を通してお話ししていく中で、考えを深めていきました。

今回は、さまざまな問題点・今後の動物とメディアの関係を
参加者のみなさんとじっくり考えた夜となりました。


5.次回の掲載予告

次回は
『第2夜 ニワトリの卵に関する動物福祉』の内容を掲載します。

どうぞお楽しみに!

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【第1夜で使用した参考文献】

京都大学野生動物研究センター 熊本サンクチュアリHP
ショーやテレビに出演するチンパンジー・パンくんの笑いと負の感情表出(2018 松阪 崇久)
【日本心理学会コラム】動物への愛情が問題になるとき─チンパンジーのエンタメ使用を考える
【2021週刊女性】相葉雅紀の『どうぶつ園』、プリンちゃんの不適切な取り扱いに“県から指導”が入っていた
【2020週刊女性】『志村どうぶつ園』VTRでパンくんは「恐怖に震えて…」霊長類学者が警告!
【2012日本経済新聞】人気チンパンジー「パンくん」、女性を襲う 熊本、ショー直後
【2021朝日新聞】 チンパンジーも「オンライン会議」 閉園中の寂しさ解消
JAZA HP
JAWS HP
・釧路市動物園 HP
動物園動物の福祉

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