見出し画像

第10夜 畜産の副産物

今回は畜産の副産物という、ちょっと変わったテーマで参加者のみなさんとお話しました。

みなさんは、普段食べている肉の「残った部分」が、どのように活用されているか想像したことはありますか?

さまざまな使い道を知って、そこから生まれるモヤモヤを一緒に考えていきましょう!

1.副産物ってなあに?

まずは、そもそも副産物とは何なのかを整理して、どんな種類があるかを紹介しました。

副産物とは、生体から生肉を取った残り物のことです。

主に、原皮と副生物に分かれています。
また副産物は、食べられるもの(モツなど)と、食べられないもの(原皮など)に分かれています。

副産物について整理したあとは、動物の種類ごとにどのくらい副産物が取れるかをお話ししました。

次に、それぞれの説明と使い道を紹介しました。

原皮は、革製品の素です。財布やバッグ、家具にも使われています。
皮を煮だしてエキスを抽出し、化粧品も作ります。

臓器は、化粧品や医療品などに使われます。

細菌を育てる培地は、新しい薬の開発には欠かせません。また、胎盤から抽出したプラセンタは美容のために使われます。

ここで、わたなべからは培地の話、ゆっこからは養豚場とプラセンタの関係についてお話しをしました。

骨や血液は、家畜の餌になったり、農作物を育てる肥料になります。

毛は、筆やブラシになります。また、豚毛は歯ブラシにも使われています。

羽毛は、水鳥の場合は寝具に使われます。鶏の羽は骨や血液と同じように、飼料や肥料になります。

レンダリング用副産物という言葉を知っていますか?

レンダリング用副産物とは、脂肪骨や非食臓器などの脂肪を溶かして油脂にするもののことです。食用としての使い道のほか、石鹸やロウソク、工場で潤滑油や燃料として使われます。

ここまで見てきて、副産物はこんなに多様な使い道があることが分かりました。
お肉を取って終わり、ではなく、無駄なく使うことが徹底されていますよね。
私たちの見えないところで、副産物はこんなに役に立っているのです。

2. 動物たちや環境にやさしいって、なんだろう?

参加者の皆さんと知識を共有したところで、ここまで聴いてどんなことを感じたかをお聞きしました。

畜産の半分が副産物ということに驚いた、医療品にも使われていることを初めて知った、などさまざまなご感想をいただきました。

また、こんな質問をしたりしました。

「副産物が余すことなく使われていることは分かったけれど、今後もっと大量に生産されたらどうなるでしょうか?それは環境や動物に優しいのでしょうか?」

この質問には、

ジビエなどに比べると畜産はすごい数だから、副産物を破棄してしまったら大変なことになりそう、循環が大切などのご意見をいただきました。

3. フェイク素材は動物に優しそうだけど…?

みなさんとお話しをしたあとは、フェイク素材についても触れました。

革製品や毛皮については、「命をもらっておしゃれをするなんて」という意見もあります。

確かに、フェイクレザーやフェイクフェザーは動物由来ではないので、命を奪ってまでして作られたものではありません。

でも、ここでひとつ疑問が出てきませんか?

これらの原料は、石油です。

石油は、何万年も昔の動物の死骸が地球の地熱によって長い時間をかけて油状になったもので、資源としては有限です。
また、二酸化炭素を排出するので、地球温暖化の原因にもなります。

地球温暖化が進むと、動物が暮らす環境が変化して数を減らしたり、絶滅の危機に陥ったりします。

そのあと、もう一度同じ問いを投げかけ、みなさんと考える時間を設けました。

4. さまざまな取り組みの紹介

動物や環境問題について改めて考えたところで、動物の副産物に対して、様々な視点と問題意識をもって取り組んでいる企業や団体をご紹介しました。

まずは、のとしし団です。

のとしし団

石川県の能登半島で活動されている団体です。

こちらの団体は、爆発的に増えて農作物被害等が出ているイノシシの頭数制限に取り組む中で、その廃棄量の多さに疑問を抱きます。

そのなかで、お肉の販売だけでなく、皮などの副産物の有効活用法を探っていました。

そこで編み出したのが、「イノシシの皮、骨などを炭化させ、炭にし、畑の土壌改善や肥料として使用すること」。炭化させるときにエネルギ-を使っていますが、次の植物たちを育てる栄養としての活用方法を見出しています。

イノシシの皮や骨や内臓を有効活用!炭を作って肥料にする

次は、デザートという団体です。

Desserto

デザートは、メキシコにあるアパレル会社です。
この会社は、サボテンを使ったヴィーガンレザーを開発しました。

手触りは革製品に近く、耐久性もあり、植物由来のため、分解できるメリットがあります。また、メキシコには大量のサボテンが自生しているため、原料確保には困らないとのことでした。

最後に、momijiという団体を紹介しました。

momiji

俳優の松山ケンイチさんが立ち上げたファッションブランドです。

松山さんは、東京と地方の二拠点生活をしています。そのなかで獣害駆除にも参加し、お肉は使うのにそのほかの部分は捨ててしまうことに疑問を持ちました。

そこで生まれたのが、momijiです。

害獣駆除で出た皮は野生動物のため、どこかに傷があります。一般的な高級ブランドには、そんな傷はないですよね。松山さんは、この傷を「生きていた証」、唯一無二の1点ものとしてPRしています。

ここまで紹介して、みなさんに感想を聞きました。

サボテンからレザーを作るのに驚いたという話をして下さり、参加者のみなさんからいろいろな素材でレザーが作られていることを教えていただきました!

キノコから

ハラコ(生後間もない仔牛の革)から

リンゴから

5. むすび

畜産の副産物は、見えないところで私たちの生活を支えてくれている存在です。

また、食べた残りがゴミにならないように、頂いた命を無駄にしないようにと生まれたのが革製品や動物由来の商品の数々です。一方で、動物由来の製品では苦しい思いをする動物が増えてしまうのではと考え、生まれたのがフェイクファー、フェイクレザーなどでした。

もうお気付きかもしれませんが、どちらも実は、「動物を大切にしたい」という思いから生まれた物だったのですね。どちらを選べばいいのか、その正解はわかりません。

でも、その物はどこから来たのか?
あなたが使った後、それはどこへ行くのか?
そんなことを想像しながら、疑問を持つ癖をつけてお買い物をすると良いのかもしれませんね。

6. おまけ

今回は畜産の副産物というテーマで参加者の皆さんとお話をしましたが、そこから環境問題や食肉の歴史など、新たな視点が生まれた回でもありました。

今回の「畜産の副産物」も、以前の回で参加してくださった方から生まれたテーマでした。

もし動物福祉や動物に関連することで、疑問に思ったり、モヤモヤ考えることがあれば、#どうぶつたちの眠れない夜に でツイートしてみてください。
お返事をしたり、未来のテーマで取り上げるかもしれません!

今後とも、ぜひよろしくお願いします!

7.次回の掲載予告

次回は
『第11夜 ホワイトタイガーと遺伝』の内容を掲載します。

どうぞお楽しみに!

*************
【第10夜で使用した参考文献】

日本畜産副産物協会
有限会社向中野商会 畜産副産物リサイクルとは
エコランド株式会社 羽毛
東京芝浦臓器株式会社 芝浦と場で出た家畜の臓器などの臓器の販売
お肉の情報館
筆墨硯紙筆の原料-毛のいろいろ
原材料 筆によく使う毛は何ですか?熊野町
熊野筆に使われる主な動物の毛|広島筆産業株式会社
ジャパンクオリティ、日本のフェイクファーの基礎知識 | 公式 | 株式会社クロップオザキ スタッフブログ
サボテン革のヴィーガンレザー「Desserto」を生んだ、メキシコ企業の挑戦 | ELEMINIST(エレミニスト)
イノシシの皮や骨や内臓を有効活用!炭を作って肥料にする | のとしし団
松山ケンイチ「触ったことのない感覚だった」獣皮をアップサイクルするブランドを立ち上げた経緯  J-WAVE NEWS
松山ケンイチ(@momiji2022_official)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?