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「魔女」のイメージと描かれ方【国士舘アニ研ブログ】

こんにちは、あねもねです。
今回は久しぶりにアニ研っぽいことを書いていきます。
タイトルの通り、「魔女」のイメージと描かれ方の違いについて考えてみました。
ヘーヘッヘ  ネレバ ネルホド イロガカワッテ(テーテッテレー)



魔女とは

女性の魔法使いを指す。狭義には、古来の神や精霊の力で奇跡を起こした人々、キリスト教的には悪魔と契約して邪悪な術を行う人々を指す。

ピクシブ百科事典より引用

 魔女は読んで字のごとく、魔法を扱う女性を指す言葉です。ピクシブ百科事典で述べられている通り、キリスト教では悪しきものとして捉えられることも多く、かつての「魔女狩り」はこれに端を発しています。
 しかし、一つ「魔女」といっても、この世の中には様々な魔女が存在します。史実、宗教、映画、アニメなどの多方面に魔女は登場し、様々な描かれ方をされています。そこで今回は「魔女」の描写の違いについて書いていきます。


西洋での魔女の描写とイメージ

 まずは「魔女」発祥の地?西洋での描写とイメージを見ていきましょう。
西洋、魔女、と言えばドイツのグリム童話での描写や、キリスト教でかつて行われた魔女狩りが思い浮かびます。
15世紀終盤から16世紀半ばのキリスト教では、魔女狩りが行われ。多くの人々が魔女裁判にかけられ拷問や処罰を受けました。これらは「魔女は悪魔と契約しており、呪いなどを用いて危害を加えるもの」という価値観の基に行われていました。一説では、悪魔との契約や呪いなどのスピリチュアルな考えが集団心理的に広がっていったといいます。
 グリム童話に登場する魔女も悪く描かれることがほとんどです。
例えば『ヘンゼルとグレーテル』では、お菓子の家で兄妹を誘い、牢に閉じ込めたり、家事をやらせたり、焼き殺そうとしたりと凶悪な存在として描かれています。ほかにも『白雪姫』では、白雪姫を育てた継母が魔女に変装して、白雪姫を殺害しにかかります。ディズニー映画でおなじみの赤いリンゴを持った魔女が出てくるお話です。

兄妹と魔女
ウィキペディア「ヘンゼルとグレーテル」より

このように、西洋における魔女のイメージは「悪者」といった具合で、ドイツ発祥のグリム童話でも悪者として描写されています。スピリチュアルな面や一時の宗教的な流行りではあったものの、魔女が悪しきものとして迫害されていたという歴史は実在しています。こういった部分からも、「魔女=悪者」というイメージが根底にあり、それが強いということがわかります。あくまでも、描かれ方からの予測にすぎませんが大外れしているわけでもないでしょう。
 しかし、西洋において必ずしも魔女が悪者として描写されるわけではありません。というのも、現代では魔女を迫害する動きや「魔女=悪者」という一つの価値観にとどまっていないからです。
大人気小説シリーズの『ハリーポッター』では。魔法使いや魔女がたくさん出てきます。そして、作品内の魔法使いたちは、我々と同じように学校に通い、親友たちと過ごしています。闇の帝王という悪者の魔法使いこそできますが、すべての魔法使いが悪者ではありません。むしろ多くの魔法使いは良心的でありことが多いのです。たびたび、マグル(魔法を使えない人々)との関係をめぐる問題や話題も出てきますが、魔法使いとマグルの混血の登場人物も非常に多いです。しかし、魔女が完全に肯定されているわけではないという点を見逃してはいけません。
これは主人公ハリーの同級生、シェーマス・フィネガンの発言から見て取れます。シェーマスはマグルの父と魔女の母の間に生まれた半純潔の魔法使いです。シェーマス曰く、父は妻が魔女だと知ってショックだったそうです。
このように魔女に対してショックだと思う人も一定数存在するということです。ここだけ見れば、魔女が悪いものと捉えられているともいえますが、シリーズを通してみれば、これが主題ではないことが明らかです。つまり、『ハリーポッター』シリーズでは魔法使いや魔女を特別に悪者として描いていないということです。
 つまり、「魔女=悪者」というイメージは完全に払拭されていないが、その表現が前面に出されないような描写の種類が増えたということです。


日本での魔女の描写とイメージ

 つづいて、日本での魔女のイメージと描写を見てみましょう。
日本での魔女のイメージはおおよそ西洋のものと似ています。しかし、その描写には特異な部分が多いです。
まずは、当部の部員に対して行った、魔女へのイメージに関する質問とその回答を見てみましょう。

Q:「魔女」に対するイメージを挙げてください。
(例:魔法、恐ろしい、黒い服)
A:大鍋、黒猫、とんがり帽子、箒、醜い老婆、西洋、魔女狩り(被害者的側面)、ローブ、遊戯王、薬(不老不死・変身)、、森・館、魔法、蝙蝠、蜘蛛、好意的でない生き物、カラス、帽子、次元の超越、サバト、ワルプルギスの夜、杖、常世離れ、壷・窯、中世ヨーロッパ、異端審問黒ミサ

ざっと列挙してみましたがどうでしょうか。西洋でのイメージとそれほどかけ離れていないというのがわかります。少なくとも明るいイメージは持たれていないように見えます。太字にしてある回答は西洋のイメージと同様で負のイメージを持っていると思った回答です。
 このように見てみると、日本でも魔女に対するイメージは負に傾いていると捉えることができます。その証に、日本でも魔女が悪者として描かれています。
絵本の『白雪姫』をはじめ、多くの童話や絵本において、魔女は日本でも改変されることなく悪として描かれていることが多いです。しかし、魔女が出てくる童話や絵本の根底にはやはり、西洋での魔女のイメージがあるのでしょう。
例えば『ハウルの動く城』に登場する荒れ地の魔女は純粋な悪として描かれた魔女でした(後半はそうでもない感じだが)。

荒れ地の魔女
スタジオジブリ公式より

荒れ地の魔女は、美しさや若さというもへの執着からハウルの心臓を狙っていましたし、50年前に悪魔と契約したことで王宮を追放されたという過去も作中では言及されています。スタジオジブリは日本のアニメ制作スタジオですが、原作はイギリスの小説です。これによって荒れ地の魔女は純粋悪として描かれているのでしょう。一方で、映像作品の後半では、ソフィーに協力する仕草や優しい一面も見せているところからは、これまでとは反対のイメージを抱かせます。では、原作や根底の時点で「魔女=悪者」というイメージが少ない作品であれば、魔女の描写も変わってくるでしょうか。
そこで『ハウルの動く城』と同じくスタジオジブリから魔女の宅急便を持ってきました。

キキ
スタジオジブリ公式より

『魔女の宅急便』は角野栄子さんによる同名小説が原作となっています。
本作の主人公キキは一人前の魔女になるために13歳で親元を離れます。そんなキキは魔女と人間のハーフです。そんなキキは魔女でありながら多くの人々から助けられ、また多くの人の助けとなる存在です。パン屋のおソノさんは、キキを魔女だと知っていながらも生活のための拠点として屋根裏を提供し、トンボは子供でありながら魔女への恐怖心などは持っていないようで、キキに対しても友好的に接していました。
そして何よりも、キキは魔女でありながら、配達の仕事を通じて人々の役に立っています。
西洋における魔女のイメージや、同じジブリ作品の『ハウルの動く城』とは異なり、魔女が好意的に描かれているのがわかります。
『ハウルの動く城』とは異なり、原作が日本の作品ですので、そこに何かタネがあるのかもしれませんね。


日本アニメの魔女

『ハウルの動く城』と『魔女の宅急便』という日本作品、それも同じジブリ作品の間にも魔女の描き方に違いがあることがわかりました。もしかしたら、日本での魔女の描写は多様なものなのかもしれません。ここでもいくつか作品を挙げてみてみましょう。
 日本のアニメ作品で魔女が登場するもの、まず思いつくのは魔法少女まどか☆マギカでしょうか。少なくとも私はそうです。
主人公を含めてメインの登場人物たちは、”白い悪魔”と契約して魔法少女になっています。魔法やその類を扱う女性を魔女とするのであれば、主人公たち魔法少女も魔女に含まれるでしょうか。
このように前提を定めてみてみると、まどマギでは善と悪の両方の魔女が描かれています。

魔法少女まどか☆マギカ公式ページより

作中では敵キャラとして対立することになるモノたちを魔女と総称しています。魔女たちは一般通過ニキネキの命に関わる程度には危ない存在で、主人公のまどかなどの魔法少女が討伐して回っています。
この面では西洋とおおよそ同様に魔女が悪者として描かれています。一方で魔法を使う女の子を魔女とするのであれば、主人公ら魔法少女も魔女ということになりますから、魔女が魔女を討伐しているという構図になります。魔女(善)と魔女(悪)の対立構造が出来上がります。
この対立構造は『ハリーポッター』シリーズと同じですね。西洋、日本問わずこういった対立構造は少なからずあるということです。もっとも西洋ではその事例が少ない(宗教的な関わりも強い?)ということになります。


まとめ

西洋と日本での「魔女」に対するイメージには負の要素でいくつか共通点がありました。しかし、描写や表現を見てみると、西洋の童話や映画と日本のアニメなどでは異なる部分が見えました。
今回の記事を通して私は、主人公が魔女なのかどうかという部分にも左右されるのかとも思いました。実際、『ハリーポッター』シリーズや『魔法少女まどか☆マギカ』では主人公サイドも魔女(を含む)であり、この2作品は魔女を悪としてだけでなく、善として描いたり、善良な魔女もいると思わせてくれるものでした。
一方で、『ハウルの動く城』や『ヘンゼルとグレーテル』は、主人公は一般人で、敵や障害となるキャラクターに魔女を起用して、悪の印象をもたらしています。
また、宗教や文化として魔女のイメージが固まっていることもあるため、作品が生まれた地域もひとつ差異をうむ要因かもしれません。
魔女と1口に言っても様々な表現方法があるということが改めてわかりました。


引用および参考文献、WEBサイト
《WEBサイト》
ピクシブ百科事典
STUDIO GHIBLI公式
ウィキペディア
『魔法少女まどか☆マギカ』公式

《文献》
鬼束佳代.グリム・メルヒェンの中の「魔女」ーもう一つの「魔女」狩りー.関西大学『独逸文学』.2005.49.
J・K・ローリング.ハリー・ポッターと賢者の石.静山社.1999年.

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