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ネット創作の象徴『ニコニコメドレーシリーズ』【国士舘アニ研ブログ】

こんにちは。鯖主と申します。前回はノベルゲームの話をしましたが、今回は物語作品から離れてネットの話です。

「ニコニコメドレーシリーズ」とは

恐らく、この記事を読んでいる大半の方が「ニコニコメドレーシリーズ」についてご存じないと思うので簡単な解説から。引用文は知らない単語が多いと感じた場合は読み飛ばすことをお勧めします。

ニコニコメドレーシリーズとは、ニコニコ動画で生まれた作品群である。

概要
打ち込み(DTM)・原曲の切り貼り・演奏・歌唱・その他さまざまな方法を用いて複数の楽曲から作成された楽曲、もしくはそれにまつわる動画に用いられるタグである。複数の楽曲を用いるが、一般的な「メドレー」と比べて、次のような違いがある。

再生時間
5分~20分程度の動画が多いが、1時間を超える動画や1分に満たない動画も存在する。再生時間の長い動画には作業用BGMのタグが付くこともある。
構成楽曲
多岐に渡る。ニコニコ動画由来の曲でメドレーにしたものも一定数存在する(実際に組曲『ニコニコ動画』等の動画説明文にはそのような記述がある)。ニコニコ動画で人気の音MADの素材(兄貴やZ会、チャージマン研、松岡修造 など)を1つ選び、その素材が使われた音MADに使われた曲のみを使ったものや、音MAD全般でよく使われる曲を使ったものもある。また、一部または全部が(特定ジャンルの曲や作者が個人的に好きな曲などの)あまりニコニコ動画に関係ない選曲のメドレーも存在する。
編曲方法
楽曲と楽曲の間は原則として滑らかに繋ぎ、あたかも一つの楽曲のように編曲される。これが一般的な「メドレー」と最も異なる点であり、ニコニコメドレー最大の特徴でもある。また、多くの作品で複数の曲を同時に使用・再生する箇所があり、これは「重ね(混ぜ)」という。

ニコニコ大百科「ニコニコメドレーシリーズ」より

ざっくりまとめると、あるコンテンツ(大半はニコニコ動画)に関連したいくつもの楽曲を1つの楽曲のようにした動画・音楽のカテゴリ名です。この記事を読む分にはこの解釈で大丈夫だと思います。

引用元の記事でも強調されていたように、ニコニコメドレーシリーズの最たる特徴はあたかも一つの楽曲のように編曲される点にあります。
youtubeでもよく見かけるピアノメドレーをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。

ニコニコ動画での「ニコニコメドレーシリーズ」の検索結果

これに関しては一度聴いて頂く方が理解しやすいので時間がある方は是非。
このメドレーはタイトルの通りポケモンに関連した楽曲のみで構成された楽曲となってます。

この記事では簡単なネット創作の歴史と共にニコニコメドレーシリーズについて書いていければと思います。

ニコニコ動画における二次創作文化

始めに断りを入れさせていただきますが、私は00年代~10年代前半のニコニコ動画には触れてないため全体的に憶測が多くなってしまう点は悪しからず。

さて、ニコニコメドレーシリーズが登場したのが2007年6月からなのですが、その前からニコニコ動画では二次創作が盛んでMADやアレンジ楽曲を筆頭に当時の人気コンテンツの大半を占めていました。これはニコニコメドレーシリーズが生まれた大きな要因のひとつなんじゃないかと思います。

ニコニコ動画がサービスを開始し始めたのが2006年12月なのですが、実はこのような二次創作コンテンツはそれ以前から存在しています。

ここで重要になってくるのが今は無き「Flash動画」です。

Youtube、ニコニコ動画が流行を見せる前、一世を風靡した動画達があった。 それはFlash動画。かつてはニコ動のプレーヤーに使われたりして(2020年現在はhtml5に完全移行)目にする機会も多く、一時期はネット上の動画≒flashと言っていいくらいのシェアを誇っていた。作られていた動画は時事ネタ、アニパロ、MAD、空耳などなど多岐にわたっており、現在のニコニコ動画の動画達の源流ともいえるような動画が生まれていたのである。

「FLASH黄金時代」に当てはまる期間は人によって差があるが、「始まりは98~02年」「終焉は05~07年」という解釈が一般的である。

ニコニコ大百科「FLASH黄金時代」より

引用元の記事からも察せる通り黎明期のニコニコ動画はFlash動画ユーザーの移住先のような動画サイトでした。そのため当時のニコニコ動画にはネットに馴染んだクリエイターと視聴者が集まっており、ニコニコ動画にある創作文化も大半はこのFlash由来のモノと考えられます。また、Flashと2ちゃんねるは切っても切れない関係にあるので、ニコニコ動画のルーツは2ちゃんねるにあるとも言えます。

ニコニコ動画だからこそのジャンル

ニコニコメドレーシリーズが生まれた要因は大まかに
・共通のネタがある聴き手と作り手
・二次創作や同人作品に溢れた環境
の2つがあると思っています。

まずは「共通のネタがある聴き手と作り手」について。

メドレーはそれぞれの構成楽曲に何かしらの共通点があるのが一般的ですが、そのメドレーを聴く人の大半はその構成楽曲を大体知っている人、すなわち共通点となっているモノ(ジャンルや作品など)に関してある程度以上の知識がある人となります。

もちろんニコニコメドレーシリーズにも構成楽曲に共通点があるのですが、その多くが「ニコニコ動画で流行った色々」という共通点です。ニコニコ動画の機能のひとつにランキングがありますが、このランキングによって多くの人がその時その時の流行りを知り、その蓄積によって動画サイトでありながら共通ネタが存在するようになったと考えています。

2008年01月01日のデイリーランキング(ニコニコチャートより)

また、「ニコニコ動画で流行った色々」以外にも「ニコニコ動画でよく見かけるコンテンツのひとつ」を共通点としたニコニコメドレーシリーズも存在します。記事冒頭で紹介した「ポケモン交響曲」もそのひとつです。

次に「二次創作や同人作品に溢れた環境」について。

これは先程述べたFlashから引き継がれた文化のひとつではないでしょうか。インターネットの発展によって二次創作作品や同人作品が気軽に世に出せるようになったことで二次創作や同人文化そのものがより盛んになりましたし、ニコニコ動画がその一端を担っていたことは紛れもない事実だと思います。このような作品を投稿する場として適していたことはニコニコメドレーシリーズの登場にも大きく影響しているでしょう。

余談ですがボーカロイドがニコニコ動画で流行った理由にこういった土壌が関わっているのかなと思っています。ボーカロイド楽曲なんてまさに同人音楽ですし、ボーカロイドの流行に伴って流行った歌ってみた動画も二次創作なので色々繋がってきそうだなと思います。

ニコニコ動画以外でニコニコメドレーシリーズ"形式"の楽曲を見かけないのはどうしてだろう、と個人的に疑問だったのでこういった形でまとめてみました。もちろん著作権的に表に出てこないことも見かけない理由のひとつでしょうが。カラオケ配信とか絶望的ですからね……。

最後に好きなニコニコメドレーシリーズ楽曲を3つ貼っておくので「ネットで流行ったネタが分かる!」という方や物好きな方は是非。

ということでニコニコメドレーシリーズの話でした。

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