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【アニ研漫画紹介】#4 漫画の表現幅に驚いた話【国士舘アニ研ブログ】

こんにちは。鯖主です。
私は普段あまり漫画を読まないのですが、久しぶりに読んだら新発見があったのでそれについて書いていきます。ちなみに漫画紹介とかタイトルに書きましたが作品自体はそんなに紹介していません。悪しからず。

まずは読んだ漫画について。

人の顔や名前など「個性」が見えなくなり、12歳で必ず死ぬという新種の奇病に冒された2人の少年少女の物語。『めだかボックス』と同じく、原作・西尾維新、漫画・暁月あきらのタッグで描かれる。個性が認識できないという症状の主人公の視点と同じく、ほとんどの登場人物の顔とセリフの一部がマジックで黒く塗り潰されたように描かれているという実験的な作品。「ジャンプスクエア」2016年2月号から2017年5月号にかけて連載された。

マンガペディア『症年症女』より

部員から借りて読んでました。
読んだ、と言っても最終巻までは読めていないのですが内容についてはほとんど扱わないので恐らく問題ないでしょう。

さて、引用にもあるように本作は「個性が認識できないという症状の主人公の視点と同じく、ほとんどの登場人物の顔とセリフの一部がマジックで黒く塗り潰されたように描かれているという実験的な作品。」となっています。本記事で取り扱う事柄もこの特徴です。

『症年症女』一巻冒頭より

このような「歪んだ一人称視点は小説やノベルゲームのような「完全な一人称視点」を違和感なく描ける媒体でないと上手く扱えないと思い込んでいたのでとてもビックリしました。と言うのも、漫画のような絵的な表現が強いうえに動きも多い媒体で、常時一人称視点という描き方をしてしまうと間違いなく絵(画面)が持たないと思うのですよね。また、完全な一人称視点でなくカメラ的な意味での視点が三人称視点世界観的な意味での視点が一人称視点というような描き方にした場合もそれなり以上の違和感が産まれてしまうと思っていました。
思っていたのですが実際に「カメラ的な意味での視点が三人称視点、世界観的な意味での視点が一人称視点」という描き方をした『症年症女』では危惧していた違和感がまるで感じられないので驚きです。
これに加えて一人称視点の切り替えまで上手くやっています。すごい。

このような表現が使えるからこその技法として「信頼できない語り手」があります。以前も取り扱ったので大まかな概要についてはこちらを。今回触れるのは信頼できない語り手の中でも絵的な表現を活かした信頼できない語り手になります。大々的にこれをやってる作品はほとんど見かけないのですが、比較的知名度のある作品から例を出すと『沙耶の唄』が挙げられるでしょうか。(完全に信頼できない語り手とは言いきれませんが……)『沙耶の唄』は事前情報ゼロでプレイできるのとできないのとでは差が大きいので少しでもネタバレを気にする方はブラウザバック推奨です。

主人公の郁紀は事故で両親を失い、さらにその時脳に受けた障害のせいで、「視覚に重大な後遺症を残し、それに引きずられて他の感覚も全て歪んで感じる」ようになってしまった。建物の壁は内臓を裏返したかのような赤黒い肉の壁に、人間は異臭を放つぬるぬるした肉塊(しかも声にはノイズが入り、まともに聞き取ることすら困難)に見える状況である。

本作はそんな狂った世界で藻掻き苦しむ郁紀の視点と、彼を心配しながらもその苦しみを理解できない友人達やその他人物の視点とが入れ替わりながら進行していく。

ゲームカタログ@wiki『沙耶の唄』より

あらすじの通り歪んだ一人称視点から物語を追っていく作品です。詳細は伏せますが一人称視点を活かした「絵的な信頼できない語り手」の好例が描かれています。プレイ予定の無い方はこちらを読んでいただければ。より具体的な話(ネタバレ)となっています。

ということで漫画の表現幅に驚いた話でした。こんな新発見があったので漫画モチベがかなりあります。

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