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不揃いの美

編み物をしているとき、私はつい完璧に編もうとしてしまう。ガタガタな編み目が目に入ると、気になってしょうがない。これでは見栄えが悪い!と、編んでは解くを繰り返す。私は、完璧主義であった。

しかし、「不完全や不足こそ美しい」とする日本の美学と出会い、私の考え方は変わった。そもそも人は完璧ではない。そんな人の手で作られたものもまた、不完全である。そして、それが何ものにも変えがたいほど、美しいのだ。

きっと、生活の中のちょっとした喜びや葛藤も共に編みこんでいて、完成した作品は私自身を写し、美を形成するのだろう。途端、不揃いの編み目に愛着を覚えた。今まで見えていなかった世界が目の前に広がり、ああ私の周りはこんなにも美で溢れていたんだと感動する。私は、完璧を求めて解くことをしなくなった。

編み物の枠をも超えて、私はありのままの自分を受け入れられるようになっていた。高みを目指すことは大事だろう。しかし、完璧を求めては疲弊する。疲弊した心では、美しさの判断はできない。不揃いに潜む美に気づくことこそが、目指すべき先を示していた。

自分の直感と自分の手を信じ、私はこれからも編み続けたい。これは、完璧を生み出すためではなく、日常か、はたまた人生に美を見出すジャーニーである。

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