所有と分配の人類学(松村圭一郎)覚書➀

所有と分配の人類学(松村圭一郎)覚書

「モーガンやエンゲルスにまで遡る所有体制の進化論的な視点では、もともと財産観念が無く「所有」が存在しなかったところに、共産主義的な観念が発生して、氏族制という社会集団によって支えられた「共同所有」が誕生する。やがて、氏族制の崩壊や国家の誕生によって、個別的な所有である私有財産の概念が発達した、とする。」

この進化論的な所有概念は、西洋社会で発達したとされる。

「一方、文化人類学的な視点では、西洋独特の私的所有概念とは相いれない所有の形があるという議論が繰り返し提示されてきた。」
「文化人類学的研究は、西洋起源の私的所有概念とは異なる所有の存在(ローカル社会・民族・共同体における民俗概念モデル)を指摘することで、私的所有が唯一の選択肢ではないことを示し、その相対化を試みてきた。(文化人類学における、西洋的私的所有概念の相対化の試み)」
「しかし、西洋的な概念とは異なる非西洋の概念を探し求めることは、結果として、「近代化/商品経済=私的所有」という図式を強化し、社会が近代化すればやがては私的所有に置き換わるというシナリオを暗に認めるものでしかなかった。」

筆者は、より動態的で重層構造であって、歴史の時間軸の積み重ねの上に立つ、所有の存在を記している。

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