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iPhone14シリーズ設計中

おはようございます!今年も早半年が過ぎていますが、まさに「壬寅」とありジンクス通り波乱の年となっています。皆様はいかがお過ごしでしょうか?実は弊社の取り組みも、波乱を含んでおり、なかなかうまくいっていませんでした。今回はそのようなお話です。

生分解性プラスチックの成形不良でやり直し

生分解性プラスチックといっても、各メーカーからいろいろな種類の生分解性プラスチックが発売されています。代表格として、挙げられるのがNatureWorks社。100%毎年再生可能な資源を使用して石油由来のプラスチックや繊維に匹敵するコストと品質を持つ植物由来のポリマーを商業的に製造した初めての企業です。この革命的な素材で、急成長を成し遂げた会社ですが、それでも道は平坦ではなかったようです。なにはともあれ先行投資が莫大に必要だったようで、倒産の危機が何度もあったとか…。これはテスラ社も同様なので、やはり革命的なプロジェクトにはリスクがつきものと言えそうです。

ところがこのNatureWorks社の生分解性プラスチックでは、硬すぎてスマホケース用の素材としては使えません。そこで、別の素材を片っ端から探して、現在の素材にたどり着きました。ところが、この生分解性プラスチックも曲者で、温度管理と粘度の問題で、なかなか融通が効かないので。こっちを立てればあっちが立たずといった状況です。。。

異なる生分解性プラスチックを一体成型するべく奮闘しているのですが、ある程度の接着面積がないとこのように成形不良を起こしてしまいます。特に下の画像のように側面と背面が剥がれてしまう現象は致命的です。スマホを守るために使用するケースが、衝撃で壊れてしまっては話になりません。

このように、新しい素材や新しい事をするときは、必ず失敗があります。でも、この失敗を糧にチャレンジすることで、いろいろと見えてくることもあります。

温度管理と一体成型

2つの異なる原料を一体形成するにあたって、それぞれの特徴を把握し、その間を縫うように成形作業を進めていかなければなりません。一番大切なのは温度。原料が溶解する温度がそれぞれ異なるため、それに合わせて、ゲートを確保し、隅から隅まで原料が行き渡るようにしなければいけません。また、一体成形をする上で、2番めに射出する原料の溶解温度と、一番目に射出して原料の溶解温度の差を見極め、しっかりつ繋がるようにしなければいけません。そして、ゲート跡が残らないようにすることも忘れずに。。。

10数度テスト成形を行った結果、当初予定していたスマホケースの形状を変更せざるを得なくなりました。徒労感もありますが、これもテスト成形を行った結果わかったことなので、前向きに頑張ります。

ある製品を製造するときは、このようなことは頻繁に起こります。特に原料や形状が変わると、それによって変更しなければいけない箇所が増えてしまい、なかなかに難しいのです。

日本を支えてきた製造業の皆さんは、このような経験を数々こなしここまで来ているのだと思います。この業界にはやはり経験値は絶大な影響があると思います。グローバル社会になったとはいえ、このような工業製品を作れる国が数えるほどしかないのもうなずけます。

形状の見直しから再スタート

テスト形成の結果から、3Dデータを作り直し、もう一度金型を成形し直します。もう、今年秋のiPhoneの発売が迫って来ているので、待っていられないのです。思い立ったら即行動。いろいろと考えている暇はありません。

まずは、底面の厚さを1.5mmから2mmに厚くします。原料の特性上ある程度厚くないとスマホの脱着の際に割れてしまうからです。また、底面を厚くすることで、側面との接地面積も広がり、かなり丈夫になるはずです。

四隅の角の部分は、ある程度厚くし、落下などの衝撃に耐えられるように…。とはいえ、できるだけ薄くもしないので、表面と底面の形状に工夫を加えることで、厚みをもたせつつ、グリップした感覚はスリムになるようにしました。これにより、原料を減らすこともでき、重量も軽くなったため、結果的にはOKです。

作ってみて始めて分かることも多々あるため、やはり失敗は成功の基といえそうですね。。

既存の金型が使えない理由

生分解性プラスチックは、その書類にもよりますが、今まで使ってきた金型が使えないケースがあります。特に形状が複雑で、0.1mm単位での正確さが求められる製品の場合、完成した時の収縮率なども関係し、ゼロから金型を成形し直す必要がある場合もあります。

弊社が取り組んでいるスマホケースもまさにそれに当てはまります。なので、最新機種からお届けするような形になってしまいますが、できるだけ急ピッチに作業を進めていき、石油由来のプラスチックの使用を減らしていければと考えています。

原料メーカーによっては「既存の金型でも成形できます」と言われるとこもあり、もちろんそのような場合もあるのですが、やはり現状は難しいケースが多いかと想像しています。そうなると、できるだけ早くこれらの経験値を上げていた方が、将来的には有利なのではとも考えます。なかなか資金が追いつかないのですが。。。


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