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バイオマスプラスチックの理想と現実

みなさんこんにちは。梅雨入りしたかと思えば突然の空梅雨宣言。「天気予報は当てにならない」と嘆く声が聞こえてきそうですが、私はそれほど予測が難しくなっているのだろうと想像しています。気象は海流の影響を受けます。今年はラニーニャ現象が引き続き発生しているため、世界各地で異常気象が続発しています。それだけに、できるだけ早く気象変動を食い止める必要があると感じるこの頃です。

バイオマスプラスチックと生分解性プラスチック

バイオマスプラスチックとは、トウモロコシやサトウキビなど、植物由来の原料を利用して作られています。一方、生分解性プラスチックとは、「微生物によって自然界で分解され、CO₂と水になる」という性質があるプラスチックを指します。

上記のページで非常にわかりやすく説明していただいてますが、両者はどちらも環境負荷を低減するプラスチックとして注目を集めていますが、何を持って環境負荷を低減するかが異なります。

バイオマスプラスチックの場合、再生可能な有機資源を活用することを主眼としています。そのため、製造や破棄(焼却)時には二酸化炭素(CO2)を排出します。ですが、植物などをから抽出したものを原料の中に混ぜているため、その分だけはカーボンニュートラルといえます。

例えば、30%バイオマスを配合したバイオマスプラスチックは、30%分はカーボンニュートラルだと考え、製造&破棄のCO2排出量を30%カットできるといった考え方になります。

一方、生分解性プラスチックは、微生物の力を借りて最終的には水と二酸化炭素に分解されるプラスチックです。かなり自然に優しいと感じるプラスチックですが、分解を進めるには条件が必要な場合が多いようです。一般的にはコンポスト(生ゴミ処理)の中で50〜60%ほどの湿度のある環境に一定期間とどめて置かないと第一段階の分解が進みません。この第一段階を踏まないと第二段階の微生物に分解してもらうことができず、プラスチックのままとどまります。

つまり、そのままポイッと捨てても土には返りません。また海に流されても分解が進まない物が多いのが現状です(中には海洋分解するプラスチックもあります)。

ただし、二酸化炭素排出量から捉えると、バイオマスプラスチックよりも削減できることが期待できます。生分解性プラスチックの代表格であるPLA(ポリ乳酸)などは、およそ石油由来のプラスチックよりもCO2排出量を3分の1ほどに削減できると言われています。

現時点では、100%バイオマスのプラスチックはいろいろな課題があり、商品化には至っていないケースが多いようです。特に射出成形やブロー成形など、成形時の温度管理などの問題もあり、多くても50%、通常は10〜30%程度バイオマスを含むプラスチックが主流といった流れです。

バイオマスマークと生分解性プラマーク

バイオプラスチックには大雑把に上記2つの種類があることがわかりました。それでは、それを見分ける方法とは?となりますが、目でみて、これはバイオマスプラスチックだ!と分かるようなことはありません。
そこで、消費者にもわかりやすいように、「バイオマスマーク」と「生分解プラマーク」という2つのマークが日本には存在します。

バイオマスマークは、一般社団法人日本有機資源協会さんが発行しているマークです。主にバイオマスプラスチックの表示に使われるマークとなります。


緑の文字で「バイオマスマーク」と書かれている部分に、バイオマスがどのくらい含まれた商品か表示されるようになります。バイオマス30%の場合は30といった感じです。これを目標に商品を選別すれば、環境に負荷をかけない商品を見つけることができるといった感じです。

一方、「生分解プラマーク」は、生分解性プラスチックの表示となります。

生分解プラマークは、日本バイオプラスチック協会さんが発行しているマークとなります。

日本バイオプラスチック協会のポジティブリストに登録されている原料を使って、商品を開発すると、このマークを使用することができます。登録の申請にはある程度の知識やお金もかかるので、なかなか難しいのが現状ですが、このマークがあると第三者機関から認められた環境負荷を低減する商品と考えても間違いないかと思います。

結局どちらが環境に優しい?

つまり、どちらの商品がいいの?となりますが、まずは、その商品の使用用途によって、バイオマスプラスチックなのか生分解性プラスチックなのかが変わってきます。一見、生分解性プラスチックという言葉から、生分解性プラスチックの方が環境負荷を低減できるように思いますが、実は一概に言えないのが現状です。

前述したとおり、どの点で環境負荷を低減しているのかが異なるからです。

  • バイオマスプラスチック・・・持続可能な社会に力点をおく

  • 生分解性プラスチック・・・二酸化炭素排出量に力点をおく

私の中では、このように整理しています。もちろん大雑把なのはご了承ください。これがすべてではないのですし、原料によって様々な特徴があるので、あくまで大雑把に捉えた目安だとお考えください。

つまり、今の段階ではどちらも叶える原料は商品化にはなかなか至っていないのが現状。とはいえ、石油由来のプラスチックをこのまま使っていくという選択肢はないので、できるだけ早い段階でバイオマスプラスチックに変えていかなければなりません。でもまだまだ少ないのが正直な感想です。では、なぜ商品化が難しいかといえば。。。私なりの解釈では、以下の通りとなります。

  • 原料費が石油由来のプラスチックよりも5〜8倍と高価

  • 既存の金型では成形できないケースが多い

  • そもそも商品の使用条件を満たせない

これらの問題があるため、なかなかバイオマスプラスチックを使った商品に対して前向きになれないのが今の現状です。特に金型の問題は厄介です。

プラスチック製品にとって金型は命を吹き込む道具としてなくてはならない物です。そして大量生産を前提に製造されるため、なかなか高価です。その高価な金型は、通常であれば何万ショットの耐久性があるため、5〜10年ほど同じ金型を使用しながら製造を繰り返します。

この金型が使えるのであれば問題ないのですが、原料によっては粘度や温度管理の関係から使えないのです。つまり、原料をバイオマスプラスチックに変更するということは金型を作り直さなければいけないといった問題が発生します。

また、バイオマスプラスチックの価格が、石油由来のプラスチックと比べ5〜8倍ほどとなり、これも商品単価に直結する問題です。特に耐久資材であるプラスチック製のスプーンやフォーク、ビジネスホテルなどにある歯ブラシなどは低価格でないと配るわけには行きません。そのため原料費が高価な分、作れる商品を選ぶ必要があるのです。

また、石油由来のプラスチックと比べたときの耐久性の問題もあります。それほど石油由来のプラスチックは便利で耐久性の高い素材なのです。

環境負荷の観点から考えると、いの一番にバイオマスプラスチックに変更したいのですが、なかなか難しいのが今の現状なのです。

世界の基準と日本の基準

もうひとつ、バイオマスプラスチックの世界をややこしくしている点があります。バイオマスプラスチックと認める際の基準です。

環境先進である欧州などではC14が含まれているか否かで、バイオマス度合いを測定します。C14(炭素14)とは、生物由来の物質にしか含まれていない炭素です。これが含まれていれば、バイオマスという考えから、C14の含有量を目安にバイオマスプラスチックを判定しています。

しかし日本では、使用したバイオマス原料の乾燥重量割合を「バイオマス度」として定めているため、世界基準と若干ことなります。前述した「バイオマスマーク」もこれに準じた考え方となるため、世界ではバイオマスプラスチックと認められている商品でも、日本ではそれが認められない(バイオマス度が下がる)といった商品が出てしまうのです。

日本の基準は、より厳密かつ厳格だと思いますができるだけ早く環境負荷の低減をしなければいけないことを考えると、わかりやすいように世界基準に合わせた方がいいと個人的には思っています。日本の基準をクリアすれば、世界でもそのまま販売できるといった仕組み作りに繋がるからです。

たどり着いた生分解性プラスチック

結局、弊社が現状でたどり着いた原料は、生分解性プラスチックでした。弊社が最優先事項として考えているのが、気候変動をできるだけ早く抑えることだからです。

全身である出版業時代を通して、気候変動により魚の生態系や、海の環境が変わっていることを実体験として知っているため、まずはこれが最優先事項だと考えます。そのためには温室効果ガスの排出をできるだけ緩やかにする必要があるからです。

それを最優先と捉えると、生分解性プラスチックを原料にチェンジする方が理にかなっていると考えます。二酸化炭素の排出量を抑えることはもちろん、できればコンポストで堆肥化し、ゴミの削減もできるからです。

現在、生分解性プラスチックを原料に、スマホケースを製造しようと動いています。8月頃には皆様にお見せできるかと思いますので、楽しみにお待ち頂けると幸いです。

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