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[NO.17]20年、フリーライターやってます~再びフリーランスになる

名刺を失って初めて、会社という後ろ盾の大きさに気づくとはよく言われますが、私も、20代の終わり、出産を機に退職をしたときに身を持ってそれを知りました。

ある会社の忘年会に呼ばれたときのことです。親しくしていたJという人にばったり会い、実は近々退職をするのだと伝えたら
「へえ、主婦になるんだ。それじゃあ話をしても仕方がないね」
すっと背を向け、彼は去っていきました。

Jさんと私は、制作会社と発注者という関係でした。私はとてもわがままな発注者だと自覚していたので、Jさんの態度には軽いショックは受けたものの、腹は立ちませんでした。ていねいに人間関係を作ってこなかった自分が悪かったのです。Jさんのおかげで、私は非常にわかりやすい形で名刺の持つ力というものを思い知らされました。
 
さて、webマガジンの編集長時代に話はもどります。

フリーライターだった私が、ある会社のwebマガジンの編集長に抜擢され、業務委託契約という形ではありましたが、ほぼ社員のようにその会社に勤務しました。

3年間編集長を務めて、編集長という肩書の威力を十分に自覚しつつも、再び私は名刺を捨てる決心をしようとしていました。

理由は、もう新しく学ぶことはなくなったと感じていたこと、若手に後を譲ったほうがもっといいものができるかもと思うようになったこと、などなど。

毎月決まった報酬をいただけるという安定した毎日が、自分をダメにしてくような気もしていました。

決定打になったのは、知人に誘われて参加したセミナーで、登壇した女性が言った「5年後もそこで働いている自分がイメージできなかったら、今すぐその仕事を辞めること」というひと言でした。

もし5年後もそこにいるとしたら、求められてではなく、安定した生活を捨てるのが怖くてふてぶてしく居座っている私。そんなのは私の美意識が許さない。だったら、来年でも来月でもなく、辞めるのは今。

ただ、辞めたことを後悔しないために、フリーになっても絶対に年収は落とすまい。昔の肩書を使って売り込むこともするまい。それだけ決めて、私はフリーランスにもどりました。

跡を濁さずキレイに辞められたかどうかはわかりません。お世話になった方々には申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱい。この雑文をかつての関係者の方が読むかもと思うと冷や汗。

あれから、5年どころか10年は経ったでしょうか。

大飛躍をしたわけでもないけれど、後悔はしていません。

年だけはベテランの域だけど、まだまだわからないこともいっぱい。失敗も多々。でも、わからないことがいっぱいある毎日は幸せだなあと思うこのごろなのです。

(2015年04月08日「いしぷろ日記」より転載)

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