[No.10]20年、フリーライターやってます~今度こそデビュー
副編集長のYさんに呼ばれて、再び訪れた某女性誌の編集部。打ち合せに現れたのはYさんではなく大学を出たばかりの若い女性編集者(R嬢としましょう)でした。
世間話もなしに切り出された要件は、次号の企画の概要と、私が書くべき半ページほどの記事の内容。あこがれの雑誌の最初の仕事だというのに私はその内容をほとんど覚えていません。というのも、R嬢がそのあと言った言葉があまりに衝撃的だったから。
「じゃあ、どんどんアポをとって取材を進めてください。カメラマンはいつも組んでいるかたがいらしたらその方でもいいし、うちで手配してもいいですがどうしますか?」
「え、どんどんアポを取るってどうやって!? 取材進めるって一人で!? 原稿はどうやって書けばいいの!? いつも組んでいるカメラマン? そんなのいないっすけど!!」
そんな言葉が私の小さな脳みその中を忙しく駆け巡っていました。
今さら、「一人で取材なんて行ったことないです」とは言えない!!
「あ、そう、いつものようにやればいいのね、楽勝!」というような顔をして乗り切るしかありません。
「わかりました、カメラマンは御社のほうでご手配ください」
そう言って立ち上がりました。
こうなったらさっさと仕事を始めるしかありません。締切まで2週間もないのです。
家に帰り、かたっぱしから電話をかけまくる。取材の依頼をする。「企画書を送れ」と言われて、あわてて作る、送る! 担当者は不在と言われて再コールする、断られる、またかける!
アポを取るということだけで、私は多くを学びました。
依頼の電話をする前に企画書を作っておくこと。送れと言われたら即送れるように。
いつ誰に電話をしたか、どの人は不在のため再コールだったか、再コールは今日なのか明日なのか……続けて電話をしていたら忘れてしまうので、リストを作って電話のやりとりもすべてメモしておくこと、担当者は名字しか教えてくれなかったらフルネームを聞いて漢字も聞いておくこと(そうしないと、企画書にひらがなで宛名を書く羽目になってしまう)、メールアドレスも聞いておくこと(そうすればあとあとずっと情報源として活用できる)、などなど。
同時に、その雑誌のバックナンバーを広げて似た企画の原稿を読み、どういう文体でどういう構成でまとめるか頭に叩き込む。ダメダメな原稿を書いて出したら2度目はないと教えられるまでもなくわかっていましたから。
そして取材に行き、取材をし、原稿を入れたのだろうけど、そのあたりのことは全く覚えていません。署名入りの記事が載ったはずですが、どんなページだったのかも全く記憶にない。嬉しかったかどうかすらも。
ただ、その雑誌の仕事はその後も副編集長が変わるまで続いたのでした。
(2015年01月29日「いしぷろ日記」より転載)
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