そこに愛はあるんか
私の好みは「自然」「素朴」ですから、木目を隠すような塗装はしません。
木の厚化粧は、呼吸もできなくなります。
木は、切っても組み立てても呼吸しています。
組み立て加工も高級家具屋さんのように、時間をかけてきっちり作ろうとするなら作れますが、そうすると無機質感が漂い冷たい感じ、これでは、ぬくもりが消えてしまいます。
私が作りたいのは美術工芸品ではなくて、人間愛の形。
きっちり、ぴっちり正確無比は、なんか違う。
定規で線を引くより、フリーハンドでしょ。
本当は、仕上げを蜜蝋程度にとどめたいところ。
しかし屋外設置に蜜蝋は適しませんので、今回は、透明の防水塗料を用いました。
木の表情だからフシはあっていいし、木目も必要だし、組み立ての隙間や、多少のズレは、人間的な温かみがあって好きです。
だから精密な制作はあえて意図しません。
ビスや釘を隠す手法だってもちろん家具作る際などにはそれを用いていますが、ここでご覧いただく工芸品は、子どもたちを想いながら、心にぬくもりを感じてほしいなぁと思いつつ制作していますので、凹凸、キズ、フシ、隙間、ズレなどを素朴感として表現しております。
ビス穴、残してこそ作る姿を思い浮かべてもらえるから自然。
くぎ穴、あぁこうやってとめたんだと感じてもらえます。
それが人で言うところのホクロであり、キズ跡であり人生の年輪。
若き美女の美しい手よりも、おばあちゃんのひび割れてシワが多い手のほうが、人間味を感じると表現したらご理解いただけるでしょうか。
美とは見た目だけではないのです。
内面からじんわりと醸し出す美とは、心があってこそ実現するものです。