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【彼と彼女のものがたり】side O

「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり

現実の光と闇を行き来しながらも

お互いの存在を意識しながら

共に生きていく。
《境界線》〜side O〜


「お誕生日おめでとうございます!」


颯太だった。


確かにそうだ。。。。


薫は自分の誕生日をすっかり忘れていた。




宣言が繰り返され、
美容室運営は困難を極めていた。

サロンワーク以外は
会社の資金繰りやその他助成金申請等の資料作成に費やしていた薫は
時間感覚がなくなっていた。

(二重人格みたいだなぁ、、、)

薫は自分で自分を嘲笑うような心境だった。

美容師の自分と
会社代表の自分との使い分けにだいぶ慣れてきてはいたが、

それでも時々自分が狂いそうになるのを感じていた。



「使い分け」をする自分を
どこか許せない気持ちと

「使い分け」をしないと
立っていられない状況

誰が悪いわけではない。

けれど、どこかスッキリしない。。。。

そんな気持ちのまま数ヶ月が経っていた。



人は皆
比較をしたがることをまざまざと感じていた。


以前と以後
良い悪い
安心と不安……

内容はそれぞれだが、
AとBの比較ありきになっている。

「今、どうしたいか?」

そこが抜け落ちているような気がした。

(自分もそうだ、、、)

「どんな私も
自分であることには変わりないんだよなぁ、、、」


使い分けをすることが正しい、と思い込んでいたのかもしれない。

部屋の電気のスイッチを押すように、
この時はこの自分、と切り替える。

それが自分を楽にする方法だ、と
決めつけていたのかもしれない。。。

(スッキリしないのは、
これか、、、、)

周りにある見えない線を超えたくて

踏み込もうとすると、

自分の境界線が出来てしまう矛盾に気付いた。


(逆だ、、、、)

(自分の輪郭は自分で作ればいいのだ)


(八方美人は卒業だ)


「ありがとう」
颯太にはシンプルに返信した。











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