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こどもが食べたい給食

ご縁あって、和食給食応援団が主催している「和食給食サミット2018」に参加させていただきました。開催は今年で4回目になるそうです。主に小学校の栄養教諭の先生がたに向けたセミナーですが、和食店の料理人さんたちによるメニュー提案や生産者さんとのトークセッションなどもあり、充実の内容です。

カレーが薄いんだ

その中で、ある和食の料理人さんがこんな話をしてくれました。彼には小学生の息子さんがいらっしゃるそうです。今回のセミナーでメニュー提案をするにあたり、食べ手である小学生たちの意見を聞こうと息子さんと友達を集めました。すると学校の給食について素直な意見が出てきたそうです。「まるで女子会みたいに(笑)。おれらの給食のカレーは薄くてちょっと汁っぽいから、ご飯にかけないで別々に食べるんだ、とか次から次へと」。

赤味噌には豆乳

料理人さんは赤味噌の味噌汁をつくろうとしていたのですが、試しに見せてみたところ、すぐにダメ出しが。「こんな赤いのは味噌汁じゃないと、まず見た目からNGでした」。そこで一計を案じ、豆乳を加えます。こどもたちの好きなクリームシチュウのように、クリーミーな汁に仕立てたところ大好評。その場にいたこどもたち全員が豆乳なしの赤味噌バージョンよりも好きと答えました。「大人は赤味噌だけのほうが(伝統的で)いいと思ってしまいがちですが、食べ手の意見に沿うことも大事かなと」。

切り干し大根はポテサラに

他の料理人さんはご自身も苦手という「切り干し大根」を独特のにおいが立ちにくいように炒めて、ポテトサラダに仕立てる方法を紹介。見た目は洋食だけれども、味の落としどころは和食ならそれでいい、との提案がされていました。食べにくいもの、苦手なもの、いまでは食べ慣れないものは、食べ手がまず口に運んでくれる味と形にするべきだと。

わたしたちの現代の食卓は多彩です。どこまでが和食でどこから洋食、あるいはフレンチ、中華、イタリアンなのか。日本ほど食卓の上のジャンルが豊富な国もなく、それが現代の日本でもある以上、ジャンルを語ることの意味が薄れていることも確かです。考えてみれば洋食と言っても明治維新から数えればすでに150年の歴史があるわけで、だんだんクラシックの域に近づいています。またプロの世界ではジャンルを超えて自分の料理世界を確立しようとしています。ジャンルレス、ボーダレスになってきているのです。こどもが”食べたくなる”おいしく楽しい食卓をつくるためのやんわりした落としどころとして、プロの料理人さんたちの”食べ手に寄り添う”という商売感覚がますます重要になってくると感じさせる素敵なシーンでした。

20分で食べなさい

もう一つ、重要なシーンがありました。農家や鰹節生産者のこどもさんが小泉進次郎議員とトークセッションをした中で「給食を食べる時間が15〜20分しかない」という現実を変えて欲しいという声が挙がったのです。時間内に食べきれないから、残食も多くなると。給食時間の40〜45分の間に小学生自身による準備、盛り付け、配膳に20分ほど要します。正味の喫食時間が15〜20分。これでは大人でもかっ込むしかありません。一つひとつのメニューに込められた意味や、素材について知る時間もない。せめてあと30分あれば、食べもののことを知りながら、こども同士ニコニコおいしいねと言いながら、食べることができるのではないでしょうか? こども自身から時間が欲しいという声が挙がったこと、残食も減ると指摘したことが非常に重い意見として感じられました。(株式会社anemosu 浅井裕子)


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