コロナと世界
空を見上げて、深く息を吸う。外の空気の、なんとウマいことか。
なんか外は危ないというので、自粛、自粛、自粛。一週間ぶりの外出だ。橋の上から見る沈みゆく夕日は、のびのびとしてとても映えていた。
手元の缶ビールを、くいと傾ける。黄金色の液体が喉をすとんと落ちていく。心地よいオレンジ色の感覚がぼくを通り抜けていく。通り行く人々が、ぼくのことを遠巻きに通り抜けていく。
ソーシャルディスタンス。
ああ、夕陽がきれいだ。
世界がこんなになってしまう前の少し昔、ヨーロッパを一か月ほど周遊したとき、「海外の夕陽はなんてきれいなのだ」と感動したものだったが、帰国してほどなく、日本の夕陽も同じくらいきれいであることに気がついた。そう、ぼくは、単に空を見上げていなかっただけなのだ。
ああ、夕陽がきれいだ。
普段はなんてことのない夕焼け空。いまこの世界では、コロナを背景に、これ以上なく映えている。赤に対する緑、青に対する黄色。コロナは補色となり、ぼくらの世界を、本来の姿に、本来以上の姿に、明るく照らし出している。
もう一度、手元の缶ビールを傾ける。
黄金色の液体が、夜の帳に落ちていく。
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