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ぼくは祈ることを理解し始めた

「神社で手を合わせるじゃない?祈りってね、実は周波数を変えるためにやっているんだよ」

”スピリチュアル”にのめり込んだ彼は僕につぶやき、こう続けた。

「周波数を上げることをすればいいんだ。そのためには感謝。あるがままに感謝。きついことや悲しいことがあっても感謝。それだけで周波数が上がっていくんだ。」

この手の話になると、彼はとっても饒舌になる。
まるで何かに取り憑かれたかのように。

正直、嫌ではない。
彼の言うことはなんとなく理解はできる。
頭では。
ただ何か腹落ちしていない。
そんな感覚。

うんうん、とうなずいて話をきいていると、しばらくして彼も満足したようだった。
話題は自然に変わっていき、彼の話すスピードは通常運転となった。


それから数日後、
なにげなしに地元の本屋をぶらついていた。
雑誌を一通りチェックした後、小説は平積みされたものだけさーっと眺める。
小説と隣接した新書コーナー。
そこで足がとまった。

本当にただなんとなく手に取った本。
そこにはこんなことが書かれてあった。


『量子力学でわかっていること、それは全ては振動でできているということ。かつては物質の最小単位と言われていた原子。その原子をさらに分解すると、二つに分かれる。決まった軌道で回転する電子と陽子・中性子で構成される原子核である。これらは常に回転もしくは振動している。振動すなわち波。波すなわち周波数とも波動とも言える。」

ん?何か聞いたことがあるぞ。
と、頭の中で検索したコンマ何秒かのち、熱心に、そして饒舌に話す彼の姿が脳裏をよぎった。
その瞬間、まるでぼやけていたものが、うっすらと輪郭が見えてくるかのようだった。
そして、次第にはっきりと姿を表した。
喉につっかえていたものが、すーっと腹の底へ落ちていった。

「周波数とかいまいちぴんとこなかったけど、彼が言っていたことはもしかして科学的なことだったのか!?」

あたかも世紀の大発見をしたかのような僕だったのだが、その場にいた人たちには僕の変化を何も感じ取れなかったであろう。
漫画であったならば、頭の上に「!!!』と大きな吹き出しとともに現れていたはずだが。

そんな感覚を味わった僕が、この身を持ってさらに深い体験をすることになったのは、それからすぐ数日後のことだった。。。


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