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ゲーム感想記#55 ファイナルファンタジーⅩⅡ

 国民的シリーズ『ファイナルファンタジー』の十二作目はそれまで比べて、ストーリー面としてもシステム面としても大きく作風が変化した。総合的に見れば誰しもが名作と認めるようなゲームではなく、やり込めばやり込むほど味わいがわかるスルメのようなゲームである。とはいえ大作としての作り込みであるのは間違いない。

 システム面では前作のオンラインゲーム『ファイナルファンタジーXI』をおフランにした感じである。言うなればオフライン版オンラインファイナルファンタジーといったところ。まず「たたかう」が自動化された。そして味方の行動は「ガンビット」によって行動を規定するようになった。説明すると長くなので省略するが、例えば「HP50%以下ならケアルを使う」というように、仲間キャラの行動をあらかじめ決定しておくのである。そしてかつてのアビリティポイントのようにポイントを貯めていくことにより「ライセンス」を解放し、様々な技やパラメーター等を解放・上昇していくことになる。この「ライセンス」の大きな特徴は装備可能品も含まれていることである。つまり特定の武器防具を装備するには、その特定のライセンスを解放する必要がある

本作では装備をするにも「ライセンス」を解放する必要がある


 ボスキャラの行動を分析を緻密に分析し、それを基に仲間のガンビットをしっかりと組み立てていき、うまい具合に自動的に戦って倒すことができた時の快感は中々のもの。

そして本作のもう一つ大きな特徴「ガンビット」。仲間の行動を予め設定する。

ストーリーも分かりやすい勧善懲悪ではなく、それぞれの正義がぶつかるような感じとなり、かなり複雑になった。特に直接的な言及を避ける、皮肉や当てこすりのような言い回しは大人になって経験を積まなければわからない部分もある。 
また、基本的に世界を救うという物語ではない。全体としてみてあくまで広大な世界の一出来事に過ぎない感じで、どうにも小じんまりしているのは嫌でも感じてしまう。だがだからこそ現実的で、ファンタジーな世界ながらリアルさが以前よりもはるかに大きくなったのだ。
この良くも悪くも地味なストーリー作風を受け、主人公のヴァン(と相方のパンネロ)はほぼ空気と化している。特に後半が顕著。スタッフもそれを気にしていたのか、イベントが進んだりすると一応ヴァンに何かしらスポットライトをあてようとしているが、やはりどうにも空気。終盤因縁のある宿敵との対峙でも、どうもヴァンの感情は二番煎じになっているのは否めない。

 ボリューム的には申し分ない。依頼を受けてレアキャラを倒すモブハントやアイテム集め、寄り道のダンジョンは豊富で紛れもない大作である。ゲームとして破綻した面もない。シリーズとして影は薄いのは否めないが、この大作感はやはり『ファイナルファンタジー』である。


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