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『残す』ためではなく、『磨く』ための本を。中島ナオさんの想いを繋ぐ本づくり

「『残す』ためではなく、『磨く』ための本をつくりたいと思っています」

中島ナオさんは、3月11日にお話しした際そのように言っていた。
「磨く」とは、ナオさんの今年の目標でもあった。1月20日のInstagramにはこう書かれている。

“目標は「磨く」にしました!
磨きにくい状態でもあるから言葉にすることを迷ったのですが

だからこそ、磨いていきたい!!!
自分もブランドも会社も活動も。”

ナオさんが大切にされていた「磨く」ための本づくりに、最後まで責任を持って取り組んでいきたいと思う。

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3月2日、ナオさんのお姉さんであるあやさんからメッセンジャーで連絡をもらった。久しぶりの連絡だった。
「今日は、マホさんにご相談がありご連絡しました!」
返事をすると、続けて長いメッセージが届いた。

ナオさんの活動をまとめた本をつくりたいということ。
ナオさんの体調の良し悪しにはかなり波があるということ。
印刷を依頼する藤原印刷・藤原章次さんとの会話の中で、共通の知人でもあるアンドサタデーの2人がいいのではと話題にのぼったということ。
編集とデザインを全てお願いしたいということ。
ナオさんのお誕生日でもある5月11日までに、ある程度のイメージを作ってお披露目したいということ。

断る理由なんて、もちろんひとつも見つからなかった。
「ぜひ、お受けさせていただきたいです」

そうして、お声かけいただいてからすぐに本づくりは始まった。

3月4日、zoomであやさんから詳細の概要を伺い、
3月5日、zoomでナオカケルチームとの顔合わせを行った。

誰に届けたいのか?何を伝えたいのか?メンバーの溢れる想いを受け止め、内容を整理しながら何度も構成を練り直していく。

3月8日、ナオカケルチームの穂月ちゃんとみのりちゃんに3時間にわたって本への想いを聞き、3月11日にはナオさんに初めてのインタビューを行った。
本をつくるには、今までのナオさんの人生、これからのナオカケルとしての未来、その全てを聞く必要があった。

「『残す』ためではなく、『磨く』ための本をつくりたいと思っています」

話を聞く中で最初に出てきたのが、この言葉だった。

「なんだろうな。なんか『残す』といういう言葉は浮かびがちだと思うんですけど、なんかその言葉よりも『磨く』の方がしっくり来る気がしていて。この本づくりを通して、改めてナオカケルがやってきたことを言葉にしたり見直して『磨く』ことにつながるといいし、私もメンバーも本づくりを通して成長することで自分を『磨く』ことができるような、そんな機会になればいいなと最近思っています」

1冊の本を通して、読者に対してだけでなく関わる全ての人が今よりもっと輝けるように、との願いがナオさんの口から語られた。

3月15日には、ご自宅へ伺ってナオさんとお母様のゆう子さんに話を聞いた。ナオさんは、キャメル色のCanaeのワンピースがとても似合っていた。
本や資料をずらりとテーブルに並べて、こんな雰囲気はどうかしら?こんな本もいいね、と初めて本のデザインについても言葉を交わした。
本にはたくさんの付箋が貼ってあった。ナオさんとゆう子さんが、一冊一冊ページをめくりながら、時間をかけて選んだのだろう。

「どこかで撮影もしたいね」

自然が見えて気持ちの良い場所がいい。ナオさんは海が好きだと言っていた。
撮影地はすぐに、私たちの地元である逗子・葉山に決まった。ちょっと先だけど、少し暖かく春めくであろう4月1日に逗子・葉山で撮影することを約束して、ご自宅を後にした。

ナオさんの人生についてお話を聞くのと並行して、ナオさんにとって転機となるようなタイミングで出会った、3人の方との対談が決まった。
3月18日、ナオさんを象徴する商品でもある「N HEAD WEAR」を一緒に手がけた帽子職人の武市さん。
3月19日、ナオさんの高校時代の親友であり、今なお変わらず親交の深い、俳優のウチダチカさん。
4月7日、deleteCの活動を共に立ち上げて、ナオさんの想いに寄り添い続けてきた小国士朗さん。

「こうやって話す機会って実はほとんどなくて。本当にいい時間でした」

ゆっくりと当時のことを思い出し、時に笑いながら語らう時間は、とてもやさしくあたたかくて、やわらかだった。

その後も、ナオさんの体調を最優先しながら、zoomで細かなインタビューや打ち合わせを重ねた。
4月1日は、ナオさんも我々もとても楽しみにしていた撮影だったが、体調が奮わず叶わなかった。回復したらリベンジしましょうと、ナオさんは逗子へ遊びに来ることをとても楽しみにしてくれていた。
4月10日の表紙の打ち合わせでは、ナオさん自ら資料を作って頭の中にあるイメージを共有くださった。

そして、4月16日。
インタビューを約束していたその日、ナオさんの体調もあまり優れないとのことから、進捗を共有したりこの後の進め方を相談したりして、20分程度でzoomの画面を閉じた。

「また連絡しますね」

それが、私たちとナオさんとの最後の会話だった。


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ナオさんの生き方が、どれだけ多くの人に力を与えていて、背中を押していたのかは、私たちなんかが語るよりもクラウドファンディングに寄せられたコメントを読んでもらえばよくわかる。

ナオさんは、「あかるく、かるく、やわらかく」を体現して生きている人だった。
それはこの数ヶ月の間でも一緒で、体調が優れない中で、誰よりも前を向いて最後まで本づくりに向き合っていた。
チームのみんなを不安にさせないように、いつもあの優しい声を聞かせてくれていた。

ふと心を緩めると涙が出てきてしまうけど、私たちもナオさんのように、あかるく、かるく、やわらかく前を向いて、強い意志を持ってこの本をつくっていきたい。

本づくりも、まだ半ば。
ナオさんの想いや、今まで積み重ねてきた多くのことを丁寧に丁寧に磨いて、一層輝かせたいと思う。

ナオさんの言葉を大切にそうっと掬い上げ、一滴も溢れないよう本に編んで世の中に送り出すということに、責任を持ちたいと思う。


ここには、本づくりに対するやりとりの記録とともに、私たちの決意を、残しておきたい。

本当に多くの方から応援いただき、改めてナオさんという人のすごさを感じている。
皆さんの想いが繋がり、より多くの方に、ナオさんの想いが届いていきますように。

本のことを最後までずっと気にかけてくださっていたナオさん。
もう少しだけ、待っていてください。

2021年4月30日 andsaturday inc.  庄司真帆、賢吾




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