広告宣伝技法を学校教育に適用する是非 - 東大阪市
広告代理店が行うような広告宣伝技法を、学校教育の教育内容に対して適用している公立学校がある。
実態が先行していて、その是非が議論されていない。
近畿大学の広報戦略
本題に入る前に、私立大学における広告宣伝のあり方を見ておく。
近畿大学の広報戦略はメディアで称賛されている。
そして、その記事は多数ある。
近畿大学における広報の目的は、入学志願者数の増加である。
「奇抜な広報戦略」や「大学広報界の”好打者”」というホメ言葉が、大学に対する真のホメ言葉なのだろうか。
称賛している美辞麗句だけを見れば、称賛するメディア側に問題がありそうだ。でも、メディアはそういう立場なのだ。
むしろ、メディアに称賛を求めに出向く大学側にハナシのネタがある。
KINDAI GIRLSなるものがあるようだ。
近畿大学の教育では、若者受けを狙った工夫がされている。
マンガの図書館を設けているのだ。
社会のあり方などに対して、学生に、何らかの関心を持ってもらうキッカケ作りを目的としている。
若者の歓心を買う技法を使って、何らかの教育を試みることは、下記の外務省の動画のように、広く行われている。
これは教育というよりも、広告宣伝で煽る、ということだ。
学問に対する何らかの問題意識を既に持っている学生の立場からすれば、マンガ図書館を設置した大学には入学しないだろう。
そんな大学に入学したところで、学校内には、知的好奇心は無く、問題意識の希薄な者であふれ、教職員もソレで良しとしていると思われる。
マンガから得られる情報量は少ない。知的上昇を目指すのであれば、別の学習媒体を選択した方が良い。
広告宣伝で入学志願者数を増やすことや、在学生に対して歓心を買おうとする教育のあり方に対しては真面目な議論があっても良い。
そのような議論をすることが、本来の大学のあり方だろうと思う。
その議論によって、大学とは何か、学問とは何かを追究していけば良い。
残念ながら、近畿大学には、表立って、そのような動きは感じられない。
大学は、少子化によって若者の数が少なくなっているため、学校としての生き残りをかけている。
ゆえに、大学は、真理の追究をせず、大学はいかにあるべきかという議論もしない。
大学では、大学自身のあり方も議論の対象にいれるべきなのだ。それが大学の自治なのである。
この近畿大学を「大学」の範囲に含めるのかどうかという議論の余地はある。
そういうことではあるが、大学であり、かつ、私学であるため、独特の個性を持つことはありうる。
公立の高等学校は個性的であって良いか?
私立大学は個性を有して良い。
では、小学校・中学校・高等学校はどうか。
私立であれば、小・中・高等学校は個性的であって良い。入学志願者は、その個性を求めているのだ。
公立の小・中学校は個性的であって良いのか。
私の結論は、教職員を中心とする個性化は「ダメだ」ということだ。
ただし、児童や生徒を中心に据えて個性的であることは、むしろ、推進すべきことである。理念上。
公立校に在学している児童・生徒は多様である。多様であるため、どの層の児童・生徒をターゲットにして個性を出すのかは難しい課題だ。なので、結果として、公立の小・中学校は、どこも似たり寄ったりになる。これは、やむを得ない。
私が問題であるとして関心があるのは、私の住んでいる東大阪市にある、市立 日新高等学校だ。私は、ここの卒業生である。
この公立の高等学校が、校長先生の発想を中心に、個性化している。
日新高校の個性化のあり方は、近畿大学(東大阪市)のように、入学志願者の増加を目的としているようである。
また、広告宣伝技法を教育の内容にまで適用し、それを広報材料として、中学生の歓心を得ようとしているようである。
日新高等学校の広告宣伝技法
大学のあり方を議論することは重要である。何故なら、大学が社会の知力になるからだ。
近畿大学は、東大阪市役所の知力になっている。良いか悪いかは別にして。
東大阪市第3次総合計画基本構想の審議会座長は、近畿大学の先生であった。
近畿大学が行っている「ブランド価値を高める」という戦略は、東大阪市政にも反映されている。良いか悪いかは別にして。
東大阪市では、市政が、公教育にまで影響を及ぼす地域だ。市政のブランド戦略は公教育にまで及んでいる。
日新高校では、インタビューボード(別名:インタビューパネル、会見パネル、バックパネル、バックボード)を持っている。
何か発表事があれば、このボードの前で、パフォーマンスをする。
このことから、学校として、広報に力点を置く方針であることがわかる。近畿大学を連想させる。
下の写真は、日新高等学校の校長 日比野 功さんの、令和2年度入学式(2020年4月)での写真である。
就任2年目における普通科の入学志願者数(2021年4月の入学者)は減少し、初の定員割れとなった!
次が、校長先生による、日新高校の学校紹介だ。
メディアへの露出を意識した教育内容になっている。
教育イベントの対象になる学生の数を少数に絞って、その選抜された学生を優遇しようという教育方針だ。公立なのに?
各種教育イベントをJ:COM(株式会社 ジュピターテレコム)などの支援を得て記録し、広報に利活用している。
教育コンテンツは、広報でも利活用するためのイベントなのだ。
優秀な学生であれば、メディアに露出し、広告宣伝の素材になれる。
東大阪市役所からの支援
次の動画は、J:COMの支援を得て、令和2年度(2020年度)の事業を紹介している。花園近鉄ライナーズが日新高校のラグビー部部員を指導している。
トップアスリート連携事業には、令和3年度からは市役所として予算を付けるとのことだ。
この学校行事(トップアスリート連携事業)に、東大阪市長 野田義和さん御自身が視察に訪れていた。下の写真。個別具体の教育事業に対し、市長が積極的に関与する方針だ。
市長について
日新高校は、他の公立の高等学校に比べて、資金が潤沢にある。
生徒全員への教育施策ではなく、行政側が「ここぞ!」と狙った教育事業に対して公的資源を投下している。
例えば、ラグビー部だけを対象にした「トップアスリート連携事業」だ。他の部活動は何も優遇されない。
公平性や、教育の機会均等に対して、懸念が残る。
東大阪市の市立高校は、日新高校の1校だけであるが、令和2年度から、市の教育委員会に高等学校課が設けられている。つまり、1個の学校のために、市役所内に1個の課を設けるということだ。
東大阪市長の野田義和(のだ よしかず)さんは、教育再生首長会議の会長だ。
教育再生首長会議は、東大阪市の事例のように、首長が教育に積極的に関与する、という方針のようです。それがゆえに、東大阪市の野田市長が会長に就任できたのだろうと思われます。
下の写真の前列左端が、野田市長だ。
この教育再生首長会議における、教育に対する考え方は、松浦正人(まつうら まさと)山口県前防府市長のお考えが参考になります。
彼の考え方は、次の記事に書かれています。
校長先生の教育方針
日新高校のホームページの「校長からのご挨拶」には、校長 日比野 功さんによる、次のタイトルのあいさつ文が掲載されている。
あいさつ文本体の、教育方針に関する部分は次のとおりである。
ホームページに掲載したあいさつであるため、保護者が読むことを想定しているはずだ。わが子の高校生の知力に見合った、学校側の知力の評価に使われる。
この「返事!あいさつ!声!ダッシュ!!」を記載したノボリが、校内に掲示されている(下の写真)。
校長先生から学生に対するメッセージ
日新高校が発行する「日新輝道」には、校長先生から学生に対するメッセージが書かれている。
これの、2020年7月1日発行には、日比野校長先生のお考えがはっきり書かれてある。
表題
本体部分(一部)
卒業生からのメッセージ
私(この記事の著者)は日新高校の卒業生だ。
高校生には、高校生なりの知的好奇心がある。
精神訓話や団体教育をすれば良いというものではない。
それらは思考停止だ。物事への本質的な問いを投げかけない。
この学校の教育方針は、「この世界はどうなっているのか」とか「自分とは何者か」とかいう、高校生になって芽生えてくる知的好奇心を満たすものではない。
この知的好奇心を満たす主体は学習者である高校生であるが、それを支援するための学習素材は教育者が提供する必要がある。
あいさつや団体行動を主とする教育方針は、高校生の知的好奇心を、ないがしろにしている。
以上
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