2022年12月から翌年1月にかけて、大阪府は、「大阪府在日外国人施策に関する指針改正案」について、パブリックコメントを実施しました。
本記事は、このパブコメで提出された意見を、私見により、主要と思われるものをまとめたものです。
この指針は、大阪府における、民族学級の根拠になっています。
当初は2002年に策定されましたが、概ね20年後の2023年3月31日に改正版が策定・公表されました。
この2023年の改正版の策定に先立ち、「改正案」がネットで公開され、上記のパブコメが実施されました。下記の各種意見は、「改正案」に対するパブコメ意見です。
読み易くするため、適宜、改行等を施しています。
パブコメ意見の中で出現した、主要な用語(キーワード)は次のとおりです。
歴史的経緯
植民地
在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針(1998年)
在日外国人教育指導資料 互いに違いを認めあい、共に学ぶ学校を築いていくために(平成18年策定・平成25年修正)
日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書(1991年)
国際連合人権委員会からの勧告
国連の自由権規約委員会(2022年11月)
サンフランシスコ講和条約(1952年)
特別永住者
ゆまにてなにわ (府民文化部人権局発行の大阪府人権白書)
ピースおおさか
朝日新聞
西野弘一 府議(維新)
いじめ防止対策推進法
大阪市外国人住民アンケート調査
1.代表的な意見
代表的な意見は、次の187及び161です。
意見No.187
意見No.161
2.在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針
意見No.1
意見No.36
意見No.117
3.ゆまにてなにわ
意見No.5
意見No.80
4.朝日新聞記事(2022年12月23日)
意見No.78
意見No.113
意見No.155
5.西野弘一府議(維新)
意見No.146
意見No.177
6.「資料」について
意見No.59
7.歴史的経緯の表現
意見No.67
意見No.77
意見No.116
意見No.156
意見No.168
8.オールドカマー
意見No.35
9.保険・年金
意見No.3
意見No.7
10.ヘイトスピーチ
意見No.7
11.入居差別
意見No.8
12.いじめ
意見No.9
13.府の考え方のまとめ
歴史的経緯
〇歴史的経緯については、多くの韓国・朝鮮人の方が日本で暮らすこととなった歴史的事実について、追記しました。
〇当事者のデータとして、「大阪市外国人住民アンケート調査」の結果を引用することとしました。
〇パブリックコメント案では、大阪における外国人の多国籍化が進んでいることなどを踏まえ、在日韓国・朝鮮人の方を含め、「在日外国人」としていましたが、ご意見を踏まえ、大阪の実情に沿った表現に修正しました。
〇日本で生まれ育った外国人の方々や、国籍は日本であっても親が外国籍である方や海外から帰国した方など、外国籍の方と同様の課題を抱えている方々についても、本指針の対象とすることを明記いたしました。
〇特別永住者の注釈については、昭和27年4月19日付け法務府(当時)の通達「平和条約に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について」で使用された表記である「喪失」に修正しました。
〇在留資格については、最も多い「特別永住者」と次に多い「永住者」について、注釈を入れています。また、資料編に在留資格別外国人数の状況を掲載しました。
〇新たな在留管理制度に対する国への要望については、現在、市町村等と連携して国に要望している内容について、引き続き要望していくことを記載しています。
〇在日韓国・朝鮮人の中には、本名ではなく日本名(通名)で生活する人もいることについても、追記しました。
教育
〇在日外国人教育においては、異なる文化、習慣、価値観等を持った児童・生徒が互いに違いを認めあい、共に生きようとする態度を身につけていくことを目標とし、本名指導、課外の自主活動(民族学級等)、ヘイトスピーチ解消のための取組み等を進めてきたところです。指針改正にあたっては、これまでの経験と成果を生かしていくことをより明確に表現することとしました。
〇大阪で暮らす外国人の状況や外国人児童・生徒数などの統計資料を巻末に付けることとしまし た。
〇地域日本語教育の推進については、 今後も各市町村と連携を深め、日本語教育を必要としている外国人の方が学 ぶ機会を得ることができるよう支援に努めます。
ヘイトスピーチ
〇ヘイトスピーチについては、大阪には全国で最も多く在日韓国・朝鮮人の方が暮らしている現状を踏まえ修正しました。
〇特定の民族や人々を排斥するヘイトスピーチや、偏見や差別意識を背景とした暴力行為は、決してあってはならないものであることについても、追記しました。
〇災害時などに、「外国人による犯罪が横行している」などのデマが拡散することに関しては、特定の人々に対する差別や偏見をあおる意図で虚偽の情報を投稿する行為は決して許されないことであると追記をしました。
〇大阪府では、令和元(2019)年11月に「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」を施行しており、ヘイトスピーチの対象を「本邦外出身者(外国人)」に限定せずに、「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団」と規定しています。今後とも同条例に基づき、ヘイトスピーチの解消に向け、取組みを進めてまいります。
生活支援
〇今回の改正では、施策の基本的方向に、新たに「安心して生活できる住宅・就労支援」を加えるなど、住宅・就労を重要項目と位置づけています。また、採用拒否や入居拒否の事例が見られることにも触れています。
〇福祉サービスについては、ご意見を踏まえ、在日韓国・朝鮮人をはじめ在日外国人の高齢者に、様々な事情から利用が難しい状況も見受けられることを追記しました。
〇介護保険制度においては、外国籍の方で、日本に3か月以上滞在される方のうち、65歳以上の方または40歳から65歳未満の医療保険加入者などの要件を満たす方については、介護保険に加入することになります。
〇福祉サービス体制の充実として、介護保険制度を在日外国人の方への説明に活用していただけるよう、高齢者の支援に携わる方向けのパンフレットの外国語版(英語、中国語、韓国語)を作成し、各保険者や社会福祉協議会、地域包括支援センター等に配付するとともに、府ホームページにも掲載するなど制度の周知を図っているところです。今後も引き続き、在日外国人の方及び関係機関等へ制度の周知を図ってまいります。
〇健康保険に加入していないために医療費が高額となり、支払いが滞るケース等の課題については、医療機関単独で解決することが困難であり、医療機関に対する効果的な支援や、在日外国人に対する情報発信等が求められるところです。外国人患者受入れ体制の推進について、引き続き国へ要望してまいります。
〇在日外国人高齢者・障がい者の中には、制度的に年金の受給資格が得られなかった方々がおり、所要の救済措置が求められることについては、「3 安心のための医療・保健・福祉サービス体制の充実」において記載しています。
〇ご意見を踏まえ、日本人の保証人がいないので入居を断られるといった間接的な入居差別について、「大阪市外国人住民アンケート調査」の結果を用いて、追記しました
〇外国人の就労支援については、外国人へのきめ細やかな就労相談支援に努めることや外国人が働きやすい労働環 境の整備を促すことについて記載しています。
参政
〇今回の改正では、施策の方向性に「地域社会への参画支援」を新たに加えたところでしたが、ご意見を踏まえ、外国人は、共に地域社会を構成する主体的な存在であり、そのような多様性が地域の豊かさにつながることについて追記しました。
〇府政への参画については、「大阪府在日外国人施策有識者会議」を設置し、外国にルーツのある委員の方々のご意見をお聴きしています。
〇在日外国人の参政権については、地方自治法では、地方公共団体の議会の議員及び長は、日本国民である住民が、直接選挙することができ、また、一定数以上の署名を集めることで、その代表者から条例の制定等を請求することができるとなっています。
〇市町村職員の任用については、各市町村において法令や公務員に関する国の基本原則等を遵守のうえ、責任をもって自主的かつ適切に行っていただいているものと考えています。
〇現在設置している「大阪府在日外国人施策有識者会議」の委員の半数は外国にルーツのある方で、毎年、会議の場において、「大阪府在日外国人施策の実施状況」について、委員の意見をお聴きしているところです。
以上
#在日コリアン #民族学級