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日本におけるiPhoneのシェアが多いことは本当に「異常」なのか

「世界ではiPhoneに比べAndroidスマートフォンのシェアが圧倒的であり、多くの人々がiPhoneを使用している日本は異常だ!Appleにぼったくられている!」などと宣う過激なAndroid愛好家が、たまにいる。筆者もAndroid愛好家を自称しているが、このような意見にはいろいろとツッコミたいところがある。

iPhoneは高価だがとても優れたスマートフォンであることには間違いないし、iPhone並みに高性能なAndroidスマートフォンの多くはキャリアとの癒着が激しく使いづらさを感じる方も多いと思う。ケースやフィルムなどのアクセサリーも豊富で、多くの人々が使っているためわからないことがあっても検索すればすぐに解決できるメリットは一般人にとってとても大きい。またリセールバリューが高いため、最終的には意外と安く使えることもある。

このような多くの利点を持つiPhoneを、高価であっても購入する人が多いことは決して不自然なことではないと思う。…というようなことはさておき、この記事ではそもそも本当に、日本は世界と比べてiPhoneが「売れすぎている」国なのか、ということについて議論する。

1. 日本でiPhoneは「売れすぎている」?

過激なAndroid愛好家たちが、日本でiPhoneが売れすぎている、とする根拠は以下2つのグラフだ。


2021 Q1のグローバルにおけるAppleのシェアは17%で、世界第2位だ。一方日本市場では、日本企業のスマートフォンの売り上げが多いのは仕方がないとして、たしかにAppleのiPhoneのシェアは44.5%と半分近くを占め、とても多いといえる。日本が世界と比べ不自然にiPhoneのシェアが多い、というのは正しいように見える。

2. 400ドルを超えるスマートフォンにおけるメーカー別シェア

しかし、ここで重要なポイントは「日本は世界の中でも比較的裕福な国である」ということだ。経済について深堀りすると「一人当たりのGDPはシンガポールに劣りG7最下位クラスで…」などという話になり、実際のところ日本はそこまで裕福ではないのかもしれないが、とにかく日本人の多くの方々が、キャリアの割引は一旦無視するとして、端末代金の定価が4,5万円以上のスマートフォンを購入するのではないだろうか。今年登場した日本で販売されているスマートフォンで言うとOPPO Reno 5AやMi 11 lite 5Gが定価4万円強、Pixel 5aやAQUOS sense 5G、Xperia 10 Ⅲなどが定価約5万円で、Galaxy A52 5Gが定価6万円だ。勿論、iPhone 13シリーズやGalaxy S21シリーズ、Xperia 1 ⅢやAQUOS R6はもっと高い。一方Redmi Note 10 ProやOPPO A54、AQUOS sense 4などは4万円未満だ。

しかし、世界では400ドルを超えるスマートフォンは全体の約24%しか売れていない。言い換えれば、世界で売れているスマートフォンのうち約4分の3は400ドル以下の安い機種だということだ。スマートフォンの端末代に4,5万円以上かける人が多い日本は、世界の中でも比較的スマートフォンにお金をかける国であるといえるだろう。ではここで、400ドル以上のスマートフォンに限ったスマートフォンのメーカー別シェアを見ていこう。

この円グラフは2021年Q2における400ドル以上のスマートフォンのメーカー別シェアだ。なんと57%をAppleが占めている。一方で全体シェアにおいて勢いの良い中華メーカーは6%以下にとどまっており、全体シェア世界一のSamsungも400ドル以上のスマートフォンだけだとAppleの3分の1にも及ばないことがわかる。つまり、Apple以外のメーカーの多くは400ドル以下の安いスマートフォンでシェアを伸ばしているということだ。そして400ドルを超えるスマートフォンに限定すると、iPhoneは世界的にもとても人気があるのだ。400ドルを超える端末を購入する人の多くが、iPhoneを選んでいると考えられる。400ドルを超える端末を購入する人が多い日本でiPhoneを購入する人が多いのは、世界的にみても全く不自然ではないといえるだろう。

3. 日本人は「スマートフォンにお金をかけすぎ」?

そもそも、日本がいくら豊かな国だといっても、日本人は世界と比べるとスマートフォンにお金をかけすぎ…な感は否めない。定価9万円を超えるiPhone 13のようなスマートフォンは、世界的にはとても高級な部類のスマートフォンだ。iPhone 13ではないにしても、比較的新しいiPhoneを一般学生でも普通に持っているというのは、確かに「異常」かもしれない。しかし、筆者は多くの日本人がスマートフォンにお金をかけることに対して賞賛したい。スマートフォンは今や生活必需品であり、お金をかけるに足る存在である。優れたスマートフォンを使用することは少なからず生活の質を上げることにつながると考える。安物を買って後悔するより、よっぽどマシである。

4. まとめ

勿論、日本人の多くが「みんながiPhoneを使っているから」「ずっとiPhoneを使っているから」というように、惰性でiPhoneを選んでいるのだろう。Androidに対する偏見も強いように思うし、Android愛好家である筆者としてはもっとAndroidスマートフォンを評価してほしいと思う。しかし、スマートフォンに一定お金をかける人が多い日本において、多くの人がiPhoneを選ぶことは世界的に見ても決して不自然なことではなく、むしろ自然なことであるとご理解いただけたのではないだろうか。当然ながら、だからといって「iPhoneのほうが絶対的に優れている!」などということは無い。比較的高いスマートフォンの中ではiPhoneが売れている、というだけのことだ。皆様方にはAndroidスマートフォンとiPhone、双方の良さを理解していただくことを願うばかりである。

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