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2024年 スマートフォンのディスプレイに関する動向を解説

Snapdragon 8 Gen 3世代のハイエンドスマートフォンが出揃い、新しいiPhoneの登場が迫り、そして8 Gen 4世代のハイエンドスマートフォンの登場が待ち望まれるこの時期に、一度スマートフォン市場の動向を整理しようと考え、この記事を作成した。今回はディスプレイ編であるが、続編を書くかどうかは未定である。


エッジディスプレイの衰退とフラットディスプレイへの回帰

フラットディスプレイの「Galaxy S24 Ultra」

世界で初めて「エッジディスプレイ」を搭載したスマートフォンは、2014年にSamsungが発表したGalaxy Note Edgeだった。2016年には同社がGalaxy S6 Edgeにおいて、ディスプレイの左右がエッジになっている、世界初の「デュアルエッジディスプレイ」を搭載した。以来エッジディスプレイは、一般的なフラットディスプレイに比べ、画面占有率を高めることができる先進的なデザインのディスプレイとして、Samsung以外のスマートフォンにもハイエンドデバイスを中心に普及した。

しかし今年、2014年から10年に渡ってエッジディスプレイを続けていたSamsungが、Galaxy S24シリーズの3機種において、エッジディスプレイの採用をやめた。S24シリーズにおけるエッジディスプレイの全廃は、突然に何の脈略もなく起こったものではなく、Galaxy S21シリーズの時点でエッジディスプレイは最上位モデルのUltraだけになり、UltraにおいてもS23シリーズにかけてエッジディスプレイのエッジ部分の角度や面積が小さくなっていったという経緯がある。

そしてSamsung以外のスマートフォンにおけるエッジディスプレイの採用も縮小傾向にあり、既に現時点において、エッジディスプレイの採用を継続しているのはほとんど中華メーカーのみである。そしてエッジディスプレイの生みの親であるSamsungがエッジディスプレイの採用を辞めたことは、今後登場する中華スマートフォンのディスプレイ形状に少なからず影響を与えそうだ。

現行機種ではエッジディスプレイを採用しているOPPOのFind XシリーズやvivoのXシリーズも、確度の高いリークによると、後継機において少なくともベースモデルではフラットディスプレイを採用する見込みだ。Xiaomi 15も現行機種同様、フラットディスプレイを継続することを踏まえれば、今年の第四四半期に登場する中華スマートフォンは、ほとんどがフラットディスプレイになりそうだ。

Xiaomi 14 Pro/UltraやPura 70 Pro/Ultraなど、現行の中華ハイエンドモデルにおいて採用されているマイクロクアッドカーブディスプレイは、来年も採用が継続されると噂されている。マイクロクアッドカーブディスプレイは四辺がわずかにカーブしているディスプレイであり、一般的なフラットディスプレイに比べわずかに画面占有率を高めることができる、先進的なデザインにできるといったメリットがあるが、一般的なエッジディスプレイに比べカーブは小さく、言われなけらば気づかない程度のカーブであるため、フラットディスプレイの亜種として捉えるべきだろう。

スマートフォン市場全体において、エッジディスプレイが縮小傾向にあり、フラットディスプレイに回帰しつつある背景としては、エッジディスプレイには誤反応のリスクがあり、画面保護フィルムを貼りにくいといったデメリットがある一方、技術革新によってフラットディスプレイでもベゼルをかなり狭くできるようになり、画面占有率のためにエッジディスプレイを採用する理由が低下したことが考えられる。

勢力を増す中華ディスプレイメーカー

モバイル向けOLED市場において不動の地位を確立してきたSamsungだが、中華スマートフォンではOLEDの調達先を、SamsungからBOE、TCL、Visionox、Tianmaといった中華ディスプレイメーカーに変更する動きが見られる。以前から中華スマートフォンの中には中華メーカーのOLEDを採用した機種も存在していたが、一昔前の中華OLEDは明らかにSamsung製のものより品質が低く、正に安かろう悪かろうといった印象だった。しかし中華メーカーの技術革新は凄まじく、最近の中華OLEDは品質が向上しただけでなく、ディスプレイとしてのスペックもSamsung製のものを追い越さんとしており、とりわけOnePlus 12などのスマートフォンに採用されているBOE製 X1発光材料は、4500nitの高輝度表示に対応し、8T LTPO技術を採用、高周波PWM調光と高い省電力性能を実現している。加えて中華スマートフォンメーカーとしては自国で安く調達できるメリットを踏まえれば、Samsung製からの変更は必然的に思える。またSamsungにおいて最も高性能なMシリーズのディスプレイ材料の採用を、Samsungは自社・Apple・Googleといった一部のスマートフォンメーカーのみに制限していることも、中華スマートフォンメーカーがSamsungを敬遠するようになった理由として挙げられるだろう。現時点において最高のディスプレイ材料は、Pixel 9シリーズに採用されiPhone 16 ProシリーズやGalaxy S25 Ultraへの採用も見込まれるSamsung製M14材料であるが、中華スマートフォンにおける中華OLEDの採用拡大と、それに伴う中華ディスプレイメーカーの技術革新を鑑みれば、Samsungのディスプレイ技術を中華ディスプレイメーカーが上回る未来もあり得ると、筆者は考える。

激化するベゼルレス競争

前作よりベゼルレス化した「iPhone 15 Pro Max」

実用性の観点からすれば、ベゼルが狭くなることにほとんど意味は無い。しかし筆者としては、ベゼル幅がスマートフォンのデザインの先進性に大きく影響すると考えているため、ベゼル幅の追求は続けてほしいと思っている。
幸いiPhone 16 Proシリーズでは、15 Proシリーズに引き続き、ベゼルが更に狭くなると予想されており、筆者としては喜ばしいことだ。またiPhoneの進化は、当然の如く他社のスマートフォンにも少なからず影響を与えるため、とりわけiPhoneへの対抗が定番化している中華スマートフォンの発表会では、またベゼル幅の狭さを競う場面が見られることを期待したい。

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