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「今日はいい天気ですね。」を読んで


「今日はいい天気ですね」
という挨拶は、魔法の言葉ではないかと思います。

なぜなら、
誰に対しても使える。
否定的な意味がない。
話のきっかけにしやすい。
かと言って、話を続けなければという無理強い感がない。
それに、天気に気を配れる程度には幸せである証拠。

要するに、誰に対しても当たり障りなく使えて、その日を機嫌良く過ごすきっかけに使い易いのです。


主人公は、誰もが知るような大手有名企業を早期退職して、ゆっくりした時間を過ごすキョウコ。
そのキョウコの毎日に起きる小さな出来事が静かに語られています。

それまでは、何かと、誰かと、或いは目に見えないプレッシャーや自分の思い込みと戦い、知らないうちに無理を重ね、どんどん自分らしくなくなっていき、自分を嫌いになっていく毎日でした。
この感じ、覚えがあるなあと思いながら読み進めました。

その窮屈な生活から離脱してみると、こんなに幸せでのびやかな時間があったのかと、読んでいる自分まで心がほどける感覚を味わいました。
ページをめくるたびに笑顔になっていく自分を自覚しながら読みました。


まさに、「世界は小さな幸せであふれている」という、私がこのnoteでテーマにしている世界が広がっていました。

読み進めながらどこかで経験したことがあるような空気感だなと思っていたのですが、それは、以前に読んだこの本だということに気づきました。


日々の小さなことに目を向けながら、つましく生活する。
でも決して何かを諦めたわけではない。
それどころかその逆で、やっと、本当に自分が欲する生活をみつけられたのです。


キョウコがつぶやくこのセリフが、私の心に染み渡りました。

買い物も旅行も、自分が本当に好きなことじゃなかった。
好きなことだったら、どんな状況になっても、それを続けようとするが、今の自分は何もしないで、ぼーっとしているのが好きになってしまった。

立ち寄った公園で、カップルが、野良猫の世話をボランティアでしているところに遭遇したキョウコは、こうも思います。

ただネコが部屋に来てくれたら、いそいそとその子のために面倒を見て、尽くしてしまうのは間違いない。
でも来ないのだ。

ネコが部屋にきてくれたらと思うけれども来ない。
これもまた人生。

特別なことは何もなく、ただ淡々と穏やかに毎日が流れていく。
この全てが、奇跡でなくて、なにが奇跡だというのでしょう。





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