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ハート降るものがたり


ペンギンのおぎんは怒っていました。

だって、サイボウがあまりにも乱暴なんだもの。

最近付き合い始めたサイのサイボウは、幼なじみです。
昔からちょっと大ざっぱなところがあったけど、デリカシーに欠けるサイボウの言動に我慢の緒が切れたのです。

折角のデートも台無し。
おぎんは、きびすを返して帰ってきました。



サイボウは、焦っていました。

だって、何が起こったのか分からないんだもの。

最近良い感じになってきたおぎんちゃんとのデートが楽しみ過ぎて、いきなり抱きつこうとしました。
幼なじみでよく知った仲だし、ちょっとふざけただけなのに、おぎんちゃんは、プイッと帰って行ってしまいました。

どうして?
ボク、そんなに悪いことしたのかな?
「おぎんちゃ〜ん、もどってきてよぉ〜」
土煙を立てながら、必死に追いかけるサイボーでした。




その頃、子象のゾンくんは、ママと一緒にお買い物に来ていました。
ところが、ちょっとおもちゃに夢中になっている間に、気づいたら、ママの姿が見えません。
「ママぁーっ、どこぉ〜」
必死で叫び続けて声も枯れ果ててしまいました。
絶望にうちひしがれ、もう何も目にはいってきません。




鳩のピースちゃんは、その一部始終を空から俯瞰していました。
「ここは、私の出番ね」
そう思ったピースちゃんは、得意の平和の象徴のハートを、たっくさん空から降らせることにしました。


怒っていたけど、本当は悲しくて泣いていたおぎんちゃんの心に。
後悔と焦りでパニックになりかけているサイボウの心に。
もう何も目に入らないほど打ちのめされているゾンくんの心に。


みんなの心に、カラフルで暖かいピースちゃんのハートが届く頃には、きっと、この世界にも平和が戻っていることでしょう。




その証拠に、おぎんの視線の先に見える大きなハートが、一段と輝き始めました。

おしまい。



鳩のピースちゃんから見えていた世界





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