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「猫を処方いたします。」

石田 祥 PHP文芸文庫

この本は、
猫を飼っている人
猫を飼おうと思っている人
飼い猫の死期が近い人
飼い猫と死に別れたことがある人
猫なんてなぜ飼うのと思っている人
心が疲れている人
に向けて書かれた本です。

要するに、ほぼ誰にでも、この処方は当てはまります。

猫は効きます!

何を冗談を言っているのだと思っているそこのあなたにも、猫は必ず効きます。
たとえ、あなた直接にではなかったとしても、あなたの周りにいる誰か、効くべき人に猫は効きます。そして、回りまわって、あなたにも効きます。

ミステリーチックな感じで話は進んでいきます。
五話から構成されていますが、登場人物達はゆるやかにつながっていて、その中の誰かと気持ちを共有することがきっとできます。

そして、最終話の五話で、
「あ〜、そういうことだったのね」
と腑に落ちると同時に、じんわり胸の暖かさが目に溢れてきました。

京都に長らく住んでいたことがあるので、猫を処方する「中京こころのびょういん」の住所に思わず笑ってしまいました。

京都市中京区麩屋町通上ル六角通西入ル富小路通下ル蛸薬師通東入ル

これ、ぐるぐる反時計回りに回っているだけで、肝心の場所がはっきりしていません。

でも、必要な人にはそのビルが目に入ってくるのです。
必要なことは必要なときに、必要な量で目の前に現れるものなのです。

いろいろな人が様々な悩みで必要になったタイミングで、この「中京こころのびょういん」に辿り着きます。

あなたがそのタイミングなのかを判断するための言葉をいくつか紹介しましょう。

大抵の悩みは猫で治るもんです。でも猫を処方するにはまずこの病院へ来てもろて、自分でドアを開けてもらわなあきませんからね。

ドアは開きますよ。自分が開けたければね。

(猫と)過ごした時間の長さは、多分関係あると思います。でも短さと愛情の深さは紐づきませんよ。一日でも一年でも、人間でも猫でも、かけがえのない相手っているんですよ。たとえもう会えなくても。

猫やなくても、どう思うかは当人にしかわかりませんからね。ただ、猫の側から言わせれば、執着しているのは人間だけです。猫にだって、小さいなりにもちゃんと自分の世界があるんです。新しい世界に足を踏み出した瞬間から、もう前を向いている。たとえそれがどんなにつらい世界やったとしてもね。掴んだ尻尾を離せへんのは、猫が可愛そうやからやない。あなたが寂しいからですよ。でも、彼女(猫)からは振りほどけへん。今でもあなたを愛してるんでね。


どれかひとつでも、あなたの心を少しでも動かしたのなら、この本を読むタイミングなのかも知れません。




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