「満月珈琲店の星詠み」を読んで
満月珈琲店は、その名の通り、満月の夜にだけ開店する幻のカフェです。
幻ですから、不思議なことがたくさん起こります。
実は経営しているのは猫たちで、ときに人間の姿で現れたりもします。猫たちは、単なる猫ではなく、星詠み、つまり、占星術のプロです。
キツネならぬ猫に化かされたのか、はたまた、夢だったのか判別がつかない中、その珈琲店を訪れる幸運に恵まれた人たちは、人生を一歩前に進めるきっかけをもらえます。
人生が悩みごとに絡め取られ、前にも後にも動けなくなってしまった人たちを、猫たちが占星術で詠み説きながら、優しく、ときに、厳しく、励ましてくれます。
また歩き出せるかどうかは、あくまでも本人の意志と行動力にかかっています。
でも、自分では気づかなかったヒントを得られることで、人は思いがけない強さや知恵を発揮できるものなのですね。
カフェといえども、メニューはなく、お客ひとりひとりの悩みに寄り添ったもっともふさわしいスイーツやフードが出されます。
このあたりは、古市一絵さんの「マカン・マラン」シリーズを彷彿とさせます。
人生につまづいているとき、必要なのは心に響く言葉と、舌にしみる味なのかも知れません。
桜田千尋さんが描いているそのスイーツやフードのイラストが物語に深みを加え、読者を幻想的な世界に引き込みます。
満月珈琲店で静かに流れるピアノの音色も魅力的です。ベートーベンの「悲愴」や、エルガーの「愛のあいさつ」など、ますます、どんな場所なのかと想像が膨らんでいきます。これらの曲を聴きながら読み進めるのも心地よさそうです。
私の心にとても共鳴したのは、猫たちのこの言葉でした。少し長いですが引用します。
あー、夢の中でいいから満月珈琲店に行きたい。
実は、シリーズとして全四作品が出版されています。
ほかの三作品は、
ー本当の願いごとー
ーライオンズゲートの奇跡ー
ーメタモルフォーゼの調べー
という副題がついています。
これらの作品を読むのを待ちきれない心境です。
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