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起業してからの半年を振り返って。

2023年2月1日に「&PUBLIC(アンドパブリック)」という会社を設立し、あっという間に半年が過ぎました。これから「向かっていきたい世界」のことを少しだけ書き記しておこうと思います。

ちなみに創業時、&PUBLICは「これをやる会社です」と書きました。

① 社会価値を可視化する「インパクトデザイン研修」
② 社会価値を最大化する「インパクトマネジメント研修」
③ 上記をツールで支える「インパクトマネジメントツール提供」

大きな柱としては変わっていません。ですが、試行錯誤を繰り返すたびに物事の解像度はグングン上がっていくため、スタート時に見えていなかった「めざす旗」は、より鮮明に見えはじめています。夏の訪れとともに、僕らはこんなコピーを使うようになりました。

社会的インパクトの取引市場を創造し、「公共の力」をともに革新する

例えば「CO2排出権取引」のように、世にある多様な「ソーシャルインパクト(社会価値)」が売買される時代をつくる。そんなことを考えています。

手始めに世に提案していきたいもの。それが「マイクロインパクトボンド(MIB)」というコンセプトです。

3つの特徴があります。

① 市民が「少額投資」で地域課題解決に参加。社会変革実感を感じられる。
② ソーシャルビジネスの担い手が「インパクト」をうむ。地域課題を解決する。
③ 行政がうみだされた「成果を購入する」(=成果に応じて委託費を払う)。

ゴミのテーマはわかりやすくするためのもの。実際にはインフラ以外での着手を予定

投資にすることで、より力強く地域課題を解決する動きを応援する力が働く。成果が不十分だった場合、行政は満額の委託料を支払わなくて良いので、財政への影響を軽減できる。そんな仕組みです。

これは、すでに存在している「成果連動型民間委託契約(PFS)」という仕組みを核とした「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」という官民連携手法がベースになっています。イギリスから始まった「SIB」は、2013年のG8で「世界各国で進めていこうね」という合意がなされたものの、日本では今ひとつ普及していません。

そもそも「成果連動型」というのは、「何を成果とするか」を先に考えなければいけない。どんな指標を置いて、どのように測定するかという検討もいる。評価には客観的な立場の第三者機関もいる。どんどん間接コストは増加していきます。結果、「SIB」が成立するための総事業費は大きくなるし、「インパクトをだせる事業者をどうやって見つけるのか」など、たくさんの壁があるため、日本では十分に根付いていないのが「これまでの常識」でした。

それを僕らは変えます。インパクトマネジメントツール「パーパスボード®︎」で。

デジタルツールを活用することで、成果設計・指標設定・成果評価・配当計算などを省力化します。現在、パーパスボードでできることとしては、5つの機能があります。

① 事業がうみだす成果と道筋の整理を行う社会価値の設計機能
② 測定のための指標を設計機能
③ 打ち手の設定機能
④ 実績の登録機能
⑤ インパクトを可視化する直感的なダッシュボード機能

2023年8月現在、団体数を限定してプロダクトの機能を検証中

この秋からは、その先をめざし、「マイクロインパクトボンド(MIB)」を実行するための必要な機能開発へと移っていく動きをはじめたいと思っています。まず必要だと考えているものが「行政コストのデータベース」です。

例えば、「燃えるゴミの処分には、今どのくらい費用が使われているのか。」

他にも「生活保護費」や「就業者の能力開発」、「公衆衛生」など、すでに社会が負担している行政コストをまとめあげることを始めようと思っています。

ちなみに、令和3年度の地方自治体の年間の支出は「約123.3兆円」。このうち補助費が占める金額は「8兆6406億円」。こうした補助費を前提に、さらにテーマを絞ってMIB化を提案していこうと考えています。

なぜなら、「成果志向になることが必ずしも良いことだとは言えない領域」は、私たちの社会のなかに多く存在するからです。例えば教育分野もその1つかもしれません。ですから、MIBでは、まずは次の4領域から試行錯誤をはじめていく予定です。

第一に「民生費」という社会福祉行政分野。
→生活保護費など。

第二に「労働費」という労働行政分野。
→就業者の能力開発や失業対策など。

第三に「商工費」という商工行政分野。
→企業誘致や消費流通対策など。

第四に「衛生費」という保険衛生分野。
→医療、公衆衛生など。

もし、補助費の10%が「MIB」になったなら。およそ「8640億円」の事業が、成果志向の取り組みへと変わります。

地方自治体は「国内総生産GDP」でみると約1割の経済インパクトをうみだしているとても影響力の大きな存在。その「支出の質」が変わるとき、「より効果的に」、「より持続的に」わたしたちの暮らしを支えられる仕組みへモデルチェンジが可能になるはずです。

最後にもう1つ。「マイクロインパクトボンド(MIB)」の「ボンド」が意味することに触れて、現時点で考えていることを終わろうと思います。

もともと、インパクトボンドの「ボンド」は「債権」を意味しています。が、僕らはそれを「束ねる」という意味合いで考えています。どういうことか。

わたしたちの社会には、似た成果をめざしているのに、縦横に重複事業が存在しているケースが一定数あると実感しています。例えば「県」と「市」でやられる似た事業があれば、それは「縦の重複」と言えますし、A部署とB部署という「横の重複」があったりします。(もちろん重複というのは外から見ている視点にすぎませんので、現場の皆さんはどなたも精一杯取り組まれていると感じています。)

もし、似た成果(アウトカム)を狙う事業を「束ねていく」ことができたならどうか。1つの事業規模は小さくも、複数を束ねたら「MIB」は巨大化できます。つまり、市民による少額投資という地域課題解決への参画方法は活かしたままで、より効果的・効率的な課題解決力の高い施策実行へと繋げていけると考えています。

構想のほんの一部を紹介させていただきました。この先、&PUBLICは資金調達の動きに入ります。もちろんエクイティも含めたあらゆる手段を考えています。指数関数的な成長ではなく、2〜3倍の事業の成長、つまり社会的価値と経済価値の両立という点で、夢を一緒に実現するパートナーと出逢えたらと思っています。

・「MIB」が全国1741の自治体で取り組まれはじめたなら。
・市民が地域課題解決に力強く参画し、社会変革実感を得られたなら。
・部署や所管の壁を超え、本当に望む成果のために複数事業を束ねられたなら。
・インパクトの売買マーケットができて、成果志向で取り組むソーシャルセクターにエグジット以外の新たな資金環流の流れができたなら。

私たちの未来は、こどもたちに胸をはって渡せるものにきっとなります。もちろん今はまだ「途方もない夢物語」に聞こえるかもしれません。利権や権力構造もあるでしょうから、「そんなこと既存のシステムや構造のなかでは絶対に難しい」と感じられるかもしれません。

でも、誰もが難しいというからこそ、やる必要を感じています。そして、私たちは具体的に小さな一歩から始めることにしました。

描いた夢を社会に実装し、あたりまえの風景に変えていく。

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