XR Kaigi オープニングキーノート レポート@ONLINE
こんにちは。ANDPAD ZEROの髙橋です。
いつもANDPAD ZEROのnoteを読んでいただきありがとうございます。
今回は、2023年12月18日から22日まで開催しているXR Kaigiというイベントについてご紹介するとともに、18日に実施された豪華なキーノートについてレポートしたいと思います。
XR Kaigiとは?
バーチャル領域(XR/メタバース/VTuber/空間コンピューティング/デジタルツイン/アバター等)の担い手に向けて「共有し、繋がり、高め合う」を目的に開催する国内随一の業界カンファレンスです。
バーチャル領域で活躍する開発者・クリエイターのみならず、経営層やビジネス担当者の方々、マーケティング担当者や学生まで幅広いゲストのニーズにお応えするイベントとなっています。
主催はXR・メタバース・VTuber専門の国内最大級メディア『Mogura VR』を運営する株式会社Mogura。2019年より開催し、今年で5回目を迎えます。
オープニングキーノート『さらに未来に続く10年へ』
オープニングキーノートのファシリテーターは、Mogura VR編集長 株式会社Mogura 代表取締役社長 久保田 瞬さん。
まずはXR Kaigiが始まってからの5年の歩みの振り返りとともに、XR Kaigのコンセプト等についてお話がありました。
これまでの過去4年について、コロナ禍がありながらも、着実に人数を伸ばし、昨年は2000人以上を動員されたとのこと。
今年も、XR、メタバース、Vtuber、空間コンピューティング、アバター、デジタルツイン、ゲームエンジンなど、テーマは多岐にわたるとともに、これらに携わるすべての方を対象にしたイベントとなっているそうです。
今回のテーマは「さらに未来へ続く10年へ」。
2023年に「10年」というテーマを掲げた理由は、昨年末のとある方の投稿がきっかけだったとのこと。それは、伝説的なプログラマーであるジョン カーマック氏。
2013年当時、オキュラスにジョインし、Facebookに買収され、METAへ…という流れの中で、CTOという立場でイノベーションに携われてきたジョン カーマック氏は、2022年にMETAを去る際のFBの投稿に「VRにささげた私の10年が終わった…」という非常に印象的なステートメントを残して去った、とのこと。
今回のXR Kaigiは、この領域を「去った人」「最近、加わった人」「続けている人」という全ての方々にとって、「さらに未来に続く10年へ繋げていきたい」という思いからコンセプトを設定した、と久保田さんは話します。
今年のオープニングキーノートは、この10年間、この領域で活躍し、切り拓いてこられた方9名が登壇されました。
このnoteでは、全編約2時間の中から、
・株式会社MUSOU VRアーティスト せきぐちあいみ さん
・株式会社ホロラボ 代表取締役 CEO 中村薫さん
・株式会社meleap CEO 福田浩士さん
・東京大学先端科学技術センター 登嶋 健太 さん
・Niantic, Inc. VP 川島優志 さん
をピックアップしてご紹介します。
株式会社MUSOU VRアーティスト せきぐちあいみ さん
株式会社MUSOU VRアーティスト せきぐちあいみ さんは、VR空間の中で3Dに絵を書くアーティストとして活動されています。国内外(直近では、ドバイやサウジアラビアなど)でライブペインティングを実施。地域に固執せず全世界、人類へアートを届けたい、と語ります。
これまでの活動を振り返り、
「2016年、市販VR元年。1ユーザーとして感動した覚えがある。
こんなに面白いものは、いろいろな可能性が広がっていくに決まっている!と思った。
最初は、個展の度にクラファン。触って遊んでいるつもりだったが、今日、「長くやっているひと」として登壇することができて、感動もひとしお。
コロナがあって、ある面は停滞、ある面は加速したと思う。まだまだ過渡期。これからも過渡期が続いていく。今すぐみんなが使うわけではないからこそ、面白いタイミング。毎年毎年、「わくわく!はじまる!」とう気持ち。
こうしたカンファレンスに参加すると、「これをやったほうが…」とか「これが仕事につながるから…」という観点が多くなるが、そうではなく、人間の野生の感覚、肌感覚を大事にして取り組んでいくのが大事。
人類、地球のためになる、あらゆるものを越えていく。
突き詰めていきたい、、という心にしたがって生きていく。」
とアツく語られていました。
関口さんのライブペインティングスタイルは、仮想空間上でペイントしている姿を、大型モニターで疑似的に鑑賞いただくもの。今後は、VRを多くの方が持てば、みんなで別の空間に行って、仮想空間上で鑑賞をできるようになる未来もすぐそことのこと。すごく素敵な空間が広がるのでは?と私自身もワクワクしました。
「10年後どうなっているか?」と問われた関口さんは、
「みんなの人生の中の一部になることは間違いないのでは、と思う。10年後、できたら、今想像もできない状態になっていてほしい。1ユーザーの立場から、アート・エンタメの立場から盛り上げていきたいと思う」
と話されていました。
株式会社ホロラボ 代表取締役 CEO 中村薫さん
続いてご紹介するのは、株式会社ホロラボ 代表取締役 CEO 中村薫さん。ホロラボとして、第7期を終えたところとのこと。これまでの7年を振り返ったトークが展開されました。
中村さん自身が業界に携わったのが、2011年、Microsoftから発売されたキネクト(身体の動きを取れるセンサー)が出たころ。それまでは画像処理に縁がなかった中村さんは、キネクトの可能性に触れて、この世界に携わり始めたとのこと。
ホロラボ、という名前に着目した「なぜホロレンズに寄っていったのか?」という質問に対し、
「ホロレンズに触れたときに、現実の世界に仮想の世界が入っていく衝撃を感じた。
あと、いろんな人がホロレンズを付けたときに、みんなが笑顔になることが印象的だった。技術のステップが上がった、楽しいという感覚を得た。」
とのこと。
ホロラボ立ち上げから7年、最初のキネクトとの出会いから12~13年を振り返ると、
「楽しいという一言。会社を作ったこと自体、楽しいの延長。デバイスをつけながらみんなでワイワイ楽しくやる楽しさ。会社としても、楽しさを大事にしながらビジネスしていっている。
デバイスから入っているため、特定の業界ではなく、多種多様な業界とデバイスを広く使っていただく取組みを行っている。最近では、ホロレンズのみならず、データ作成の部分から、データスキャン、デジタルツインなどにも展開している。多種多様なスタッフの得意技がいろいろな分野で技術を楽しめるようにしていたら業務範囲が広がっていた。」
次の10年について聞かれると、
「かつては、家電量販店ですぐにデバイスを買える世界じゃなかった。最近、親子が最新のデバイスを見て「買おうか、どうしようか」という会話していた。日常の中に、デバイスや技術が入ってきていることを実感した。この先、METAの引き続きの取組み、MicrosoftがメッシュとしてTeamsへの統合ができたり、億単位のユーザーへの広がりに期待。Appleビジョンプロの登場も後押しになるのでは。」
と話されます。
『億単位のユーザー』というワードの中には、私も、読者の方々も確実に入っていますし、今後10年がますます楽しみになるトークだったと思います。
株式会社meleap CEO 福田浩士さん
AR技術を活用した、『HADO』というスポーツを展開する株式会社meleap CEO 福田浩士さん。「HADO」とはゴーグルをつけて、「かめはめ波」「波動砲」のような波動をだして、戦うフィジカルスポーツとのこと。バーチャル×フィジカルという絶妙な領域の面白さを語ってくださりました。
福田さんが研究を始めたのが2013年、会社を始めたのが2014年。
福田さんは意外にも、「ライゾマティクスのパフュームの作品」を見て携わりたいと思ったと話されました。また、『HADO』のきっかけには昔から「かめはめ波を出したいと思っていた。呼吸法を練習したこともある」というユニークなエピソードも紹介されました。
『HADO』は、広い場所、装着する機械、対戦するための複数プレイヤー、という様々な要素が必要なスポーツ。
10年間を振り返ると、
「10年前、Googleグラスやオキュラスがあった頃、自社でもハードを作ろうと思ったことがあった。が、全力で周りに止められた。周りが深化・普及することを待っていた。一方、あまり進まなかったころから、期待しなくなった。
『HADO』は、ひとつの場所に集まるコンテンツであるからこそ、コロナ禍は、逆風だった。今ではコロナ前よりアクティブに動くようになってきて、問題なくなった。」
今後の10年について、
「Appleもでてくるし、デバイスの普及に期待したい。と言いたいが、期待しすぎない。落ち着いたところで見守りたい。デバイス系の中国勢の台頭にも期待している。
HADOは、やるスポーツであり、見るスポーツでもある。ARのHADOを応援すればするほど、戦士が強くなる仕組みを開発中。Vtuberが戦って、それを仮想空間上で応援する仕組みも作っている。」
と話す福田さん。
コロナが落ち着き、39カ国に展開しているとのこと。特に中国は、新しいもの好き・戦い好きということで文化的に親和性が高いそう。
世界的にワールドカップも開催するなど精力的に活動されているそうで、今後も世界的な広がりが楽しみだと感じました。
東京大学先端科学技術センター 登嶋 健太さん
2014年からVRを用いた高齢者支援(VR旅行/VR吹き矢など)を実施している登嶋さん。東京大学の先端研で研究職をされています。VR×福祉という領域での活躍についてお話がありました。
かつて介護職をされていた登嶋さんは、外出しづらい方々のために、写真やビデオを取りに行く活動をしていたそう。次第に、高齢者の方々が、「もっと良い映像、もっといろんな場所がみたい」と話すようになり、その欲求を満たしたかったと話します。
「最初はストリートビューからスタート。次第に、VRを用いた360度の映像に切替えていった。手先が不自由な方が多い中で、タブレット、スマートフォンを使いこなせない方でも、VRヘッドセットによって見やすく、かつ、身体を動かす運動にも繋がった。」
と、登島さんは話します。介護職、リハビリにも携わっていらっしゃった登島さんならではの活躍だと思いました。
これまでの10年間について、
「VRを撮影するためのクラウドファンディングを募った。ハードウェアのためではなく、映像を世界で取るためのクラウドファンディングという珍しい取組みを実施した。
それまで関われなかった方と関わる機会が多くなったし、出会った中に亡くなられた方もいる。出来る範囲で、活動できることをしてきた。一方、10年後を見据えた研究。次の10年何していこうかを考えているところ。」
とした上で、現在の研究の広がりについてもお話がありました。
「高齢者施設にて、VR旅行で身体にどういったポジティブな効果が得られるのかという実証実験を行っている。例えば、首を動かす能力、周りを見渡す能力の向上、など活動を支えるエビデンスを確保したい。
現在は、METAと協業してSNSの取組みを充実させている。これまでは基本的に、一人で撮影してきたが、最近では、ポケモンGOを楽しむアクティブな高齢者が散歩しながら撮影して、SNSへアップするようになっている。それを外出しづらい高齢者が見るというエコサイクルができてきている。健康寿 命と最期をどうマッチングさせるかという研究でもある。」
最後に、次の10年について聞かれると
「確実に僕は10年歳をとるので、当事者意識が強まるはず。デバイスをよく知っているネイティブな若い世代が加わってくる。人の深化に期待している。」
と話す登嶋さん。
高齢者にこそこうしたVRのニーズがあることを知る素敵なセッションとなりました。
Niantic, Inc. VP 川島 優志さん
ポケモンGOを手がけるNiantic,Inc. 副社長の川島さんが登壇されました。
現在は日本にいらっしゃらないとのことで、対談収録の形で放映がされました。
川島さんがNiantic,Incに加わったのは2013年とのこと。
「現実世界とゲームの力を活かすことで、全く新しいリアリティを世界から引き出していく、というアプローチを行いつづけているNiantic,Inc.。拡張現実をもちいて、人を楽しく、幸せに、健康にできるという確信を持ちながらプレイヤーと10年歩んでこれたことは幸せだった」
と語ります。
この10年を業界として振り返ると、
「XR業界はすごく発展した。Googleグラスしかり、ホロレンズしかり。さまざまな愛すべきデバイスが出てくる中で、市場の小ささに悩まされてきた。3歩進んで2歩下がるような、もがきながらも着実に進んできている10年だったと思う。私自身、レイバンメタを常用している。スぺーシャルコンピューティングが当たり前になる世界がきている。イングレスやポケモンGOを通して、「そこにピカチュウがいるからちょっと外出してくるね~」という会話が自然とできるような感覚がでてきた。拡張現実の水準があがってきたと思う」
「ここから先、どんどん新しいことがある。まだまだやりきれていない、やり残したこと山ほどがある。Niantic,Inc.一同気を引き締めていきたい。Apple ビジョンプロが発表されて、エンジニア、デベロッパーたちに火が付き、たくさんの企業が刺激されたと思う。そうした企業がXR業界に続々と参入してくる。さまざまな多様なデバイスが登場してくるんじゃないかと思う。
生命の歴史に照らすと、カンブリア期のような、多様で爆発的なエキサイティングな時代が訪れるはず。2026~27年あたりは特にピボットのポイントになると思う。
周囲のさまざまなものに情報を付加して、そこから情報を引き出せるようになる世界が目の前にきている。すべてのものが、テレビのチャンネルを変えるように姿や様子を変えられるようになる。
デバイスも、近い将来、今のスマホと同じようにひとり一台もつものになる。ゲームは、それらを牽引する役割を担うはず。イングレスやポケモンGOの初期のPVは、そうした時代の到来を意識した設計になっているので遡ってみてほしい。これらのイメージがようやく生々しく実現していく時代になる。生成AIやARとの併用することで、ピクミンやモンスターハンターは、ウェアラブルデバイスと連携して、今までに無い体験を作り出していくはず。僕自身、これから起こることにワクワクしている。未来は待つものではなく、つくるもの。」
と語られました。
ぜひ8年前に公開されたポケモンGOの映像と併せて、川島さんのお言葉をかみしめていただければと思います!
さいごに
今回は5名のセッションをご紹介させていただきましたが、VR、XR、VRチャットのワールド作成の第一人者である「VoxelKeiさん」、法人向けのイベントを多く手がける「クラスター株式会社 代表取締役CEO加藤 直人さん」、プレイステーションとVRとの連携を手がける「株式会社ソニー・インタラクティブエンタテイメント インディーズ イニシアチブ代表吉田 修平さん」のお話も大変濃い内容だったほか、シークレットゲストの方の講演も面白い仕掛けがありました。
ぜひYoutubeでアーカイブが公開されていますので、ぜひご覧いただければと思います。
XR Kaigiは明日まで開催中、チケットを購入すれば過去のオンラインセッションのアーカイブも見られるそうですので、ぜひチェックしてみてください。
ANDPAD ZEROのnote投稿も今年はこれで最後となります。
今年1年、21本の投稿を重ねてきました!来年も面白くタメになる内容を発信していきますので、ぜひお楽しみに!
それでは今年もありがとうございました。よいお年をお迎えください!
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