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現場でのBIM活用を考えてみる

こんにちは。ANDPAD ZEROの曽根勝です。

今回は、私自身の前職ゼネコンでの現場監督の経験と弊社での顧客への現場訪問を通じて、「ゼネコンでのBIM活用の方法」を考えていきたいと思います。BIM活用の先行事例の紹介や、元現場監督の視点での考察をしていきます。

少しばかり、お付き合いください!

BIMとは?

これまでのANDPAD ZERO noteでも、何度か「BIM」にまつわる記事を掲載してきました。「BIMとは?」という内容をおさらいした方は、ぜひこちらの過去記事を参照してみてください。

さて、みなさん、BIMを活用している現場の割合がどれくらいかイメージがつくでしょうか。
令和3年の国の調査によれば、半数以上の企業が「導入していない」と回答しており、現状はまだまだといった状況と言えます。BIMの導入には、まだまだコストがかかるため、地方ゼネコンにおいては、中堅や大手ゼネコンに比べて、導入が進んでいない状況です。

建築分野におけるBIMの活用・普及 状況の実態調査 (令和3年1月 国土交通省調べ)

ここからは、実際にBIMを現場に導入していくにあたって、メリットやデメリットを前職での現場監督の経験を活かして、考察していきたいと思います。

BIMを導入するメリットとは?

まず、BIMを導入するメリットについて大きく、以下の3つが挙げられます。
①合意形成の円滑化
②設計段階での干渉チェック
③施工計画検討
それぞれについて、少し具体的な事例を交えつつみていきたいと思います。

①合意形成の円滑化

施工BIM インパクト2022 大規模スタジアム建設における施工BIM 活用と技術連携(新菱冷熱工業株式会社) より引用

「BIMモデル」という共通のビジュアルがあることで、関係者間で共通の完成イメージを共有することができます。特に、建築の専門知識がなかったり、図面から完成図を想像するのが難しかったりする方でも、ビジュアルで直感的に想像することができるため、合意形成のスピード感があがります。実際、弊社がBIMを活用して施工した「ANDPAD HOUSE」では、建物の仕様選定がスムーズに進みました。専門知識がある方にとっても、建築と設備の納まりをビジュアルで確認できることは仕様変更などの大きな助けになります。

また、レンダリングソフトを併用することでよりリアルな質感や日射などを再現ができ、設計から施工までの一連の流れでBIMを導入することで、よりメリットを発揮することができます。

②設計段階での干渉チェック

施工BIM インパクト2022 地方ゼネコンのBIM導入と活用状況(佐藤工業株式会社) より引用

2次元での図面と比較した3次元のモデルの大きなメリットは、空間把握のしやすさです。特にこのメリットが享受できるのが、「干渉チェック」だと思います。

従来の干渉チェックは、平面図・立面図・断面図の情報のみを用いて、各図面に記載されている、各部材の高さ・幅などの情報を組み合わせ、頭の中で3次元をイメージしたり、図面に記載されている情報から数字をベースに確認したりと、人為的ミスが発生しやすい状況が多くありました。
他方、BIMを用いた干渉チェックはBIMモデルから自動的に整合性のチェックができます。モデルを解析することで、干渉を簡単に発見することが可能です。

③施工計画検討

鉄骨立て方のステップ図などにおいて、BIMの導入は非常に有効性を発揮します。
従来だと、部材の重量を計算したのち、クレーンの能力表で作業半径などを確認するなど多くの検討が必要です。
他方、BIMおよびBIMソフトウェアのアドインツールを活用することで、クレーンの定格荷重や作業半径などを加味してゲーム感覚で建物を建てつつ、ブームが干渉しないかなども簡単に検証ができます。事前にシュミレーションできる点、仮設計画モデルを通じで、関係者と共通の認識を持って施工を実施できる点は、大きな魅力だと思います。

お会いするお客様で施工段階で最も多く活用されているシーンは、仮設計画検討での利用が一番多いと思います。

施工BIM インパクト2022 地方ゼネコンのBIM導入と活用状況 より引用

活用する上では、どのような目的で使いたいかを考えて取り組んでみることが大切だと思います。

BIMを導入するデメリットとは?

ここまではBIM導入のメリットについて触れてきましたが、ここからはBIMを導入するデメリットやネックとなる点についてもみていきたいと思います。

私が考えるBIM導入のデメリットとなるポイントは以下の3点が考えられます。
①導入コストが高価
②導入価値が見出せない
③人材育成のコストが高い

①導入コストが高い

BIMのソフトウェアは、CADソフトウェアに比べて高価です。
特にJWCADのような無料CADツールがあるため、費用対効果を考えると導入を躊躇してしまう方・企業も多いと思います。また、BIMを扱うには高スペックにパソコンでないと操作できないため、
BIM操作環境を整えるだけでも、コストがかかる点が地方ゼネコンにおいては普及が進まない原因となっているのではと思います。

②導入価値を見出せない

どのようなシーンで利用するか検討せずに導入すると、3Dで建物が確認できるだけで具体的なメリットが特にない…となってしまいます。現場で施工BIMとして活用しようとしても、現場では紙の図面で工事が進んでおり、修正もCADで行われ、BIMがないがしろにされてしまうため施工段階では運用が難しく、3Dモデルを見るだけになってしまうという声も聞きます。
利用目的の検討と併せて、モデルの詳細度を決定するなど、明確に使い方を判断していくことが重要だと思います。

③BIMの操作できる人材が足りない

CADについては、とても普及してきてることから、建築の専門性を持ったオペレーターが非常に多くなってきました。一方、BIMに関しては、まだまだ物件数が少ないのが現状で、BIMオペレーターの希少性も高いといえます。また、元請企業が主導してBIM導入を行っても、協力会社がCADしか扱えないため、CADでは分業できていたが、BIMではCADからBIMモデルを作成するなど業務が増えBIMモデル作成業務が増えてしまいます。協力会社のBIM人材が不足していることが、元請け企業が導入しようとしてもできない状況になっていると言えるのでないでしょうか。

まだまだ、ソフトウェアとしても導入にコストがかかり、使える人材も少ないため、そこが導入にあたっての障壁になると言えます。また、導入したとしても利用目的を決めていないとBIMモデルを見るだけになってしまうので、利用目的を明確にしたBIM活用が重要だと思います。

BIM活用の応用編

現状の現場のみなさまが感じている、BIM活用によるメリット、デメリットについてなんとなく分かっていただけたところかと思います。最後に、「活用されている方はここまでうやっている」という事例をいくつかご紹介して、検討されているみなさまの参考にしていただければと思います。

①BIMモデルと連動した進捗管理

BIMを施工段階で用いる際、鉄骨部材などにあらかじめ貼り付けられたQRコードを現場で読み取ることで、施工に必要情報や取付のステータスの管理をすることができます。
似たような部材を多く扱う鉄骨や鋼製建具などでは、進捗管理に大いに役立つ活用方法だと思います。

施工BIM インパクト2022 大規模スタジアム建設における施工BIM 活用と技術連携(株式会社大林組) より引用

②点群データとの重ね合わせ

現場敷地内の状況や現場の周辺状況を点群データで取得できている場合、この点群データとBIMモデルを重ね合わせることで、現況調査がより具体的かつビジュアル的に実施でき、作業短縮や施工計画への活用ができます。

 施工BIM インパクト2022 地方ゼネコンのBIM導入と活用状況(佐藤工業株式会社)より引用

今回の記事では、BIMのメリット・デメリットに加え、実際の現場でBIMがどう活用できるのかということについてお話してきました。
従来だとできなかったことができるようになり、時間がかかっていたことやミスが多かったことが短時間で正確にできるようになるなど、BIMの良い点がわかっていただけたのではないかと思います。

他方、導入コストや、BIMを活用できる人材不足といった課題もご紹介しました。BIM導入にあたっては、まずはしっかりと利用目的を決めて、まずは少しずつ使ってみてはいかがでしょうか。
アンドパッドでは、ANDPAD BIMをきっかけに、現在何社かの顧客と効果的なBIM活用について検討を開始しています。こちらについても今後こちらで共有していきたいと思いますので、期待いただければ幸いです。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
ANDPAD ZERO 曽根勝でした!


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