見出し画像

BIMについて分かりやすく整理してみる(1/4回)

はじめまして、ANDPAD ZEROで、ANDPAD BIMや3Dスキャンの開発にPMとして携わっている菊野です。私からは「BIMについて分かりやすく整理してみる」というテーマで、全4回にわたりコンテンツをお届けします。


自己紹介

私はトロント大学で建築学科を卒業し、ペンシルベニア大学大学院で元ARUPの会長であるCecil Balmond(セシル バルモンド)氏の元でコンピュテーショナルデザインを学びました。在学中、コンピューターテクノロジーの授業を履修するで、PythonやJavaを学び、プログラミングの基礎を取得しました。

修士取得後、松田平田設計に入り、コンピュテーショナルデザインを最大限に生かした南平体育館のルーバー設計プロジェクトや国交省プロジェクトのモデル事業のプロジェクトリードとして携わりました。国土交通省の建築BIM推進会議 第4部会「BIMによる積算の標準化検討部会」の委員としても現在活動中です。

アンドパッドには2021年5月にジョインしました。BIM・点群・コンピュテーショナルデザインのスペシャリストとして、ANDPAD BIMや3Dスキャン関連のプロジェクトを行っております。

BIMについてわかりやすく整理してみる

今回のnoteでは、BIMの説明の第一歩として、BIMの定義とBIMの全体像についてお伝えしたいと思っています。

「定義って難しそう…」と思った方も少なくないかもしれません。私自身もBIMに関する書籍や文献に触れてきましたが、意外と「定義」や「全体像」ってしっかりと語られてこなかった気がしています。

だからこそ、ぜひこの機会に、あえて「定義」や「全体像」に触れて、皆さんと一緒に「BIM」を一から学びなおしてみたいと思います。

BIMの定義

さて、早速BIMの定義からご一緒したいと思います。

BIMとは、Building Information Modelingの略で、ビルディング・サイクルを通して効率的、且つ、確かな建設情報として使用し、活用するための仕組みのことを指します。BIMで取り扱うデータ・情報・プロセスは「BIMのピラミッド」から全体像が確認できます。


(The BIM Manager BIMプロジェクト管理のための実践ガイドより)

ここでいう「効率的、且つ、確かな」とはどういうことか。「効率的で確かな情報」として扱うことができるBIMには、以下のような目的が備わっていることが必要になります。

1.整合性のとれた情報
2.ツール同士のデータ連携とシミュレーション・予測・自動化
3.経済的かつ環境への配慮

このような特徴が必要となった背景には、実は1980年代に普及した「CAD」にあります。
というのも、先行して普及していたCADにあった課題を解消し、さらに課題解消にあたってCADと区別するために、「BIM」が定義されていったのです。
CADの考え方とBIMの考え方を比較しながら、BIMの目的について紐解いていきましょう。

目的1:整合性のとれたデータ・情報

CADの時代では、図面(2DCAD)、モデル(3DCAD)、データベース(体系のない情報)を個別に管理していたため、データの互換性が取れていませんでした。

建物を平面、立面、断面、模型、諸元、パースなどは別のデータとして作図し管理されていたため、設計変更やシミュレーションにはかなりの労力と時間が掛かっていました。

BIMで整理された情報は、建物の部材・部位のために作られているデータであることが第一条件になります。それらのデータに属性、仕様、製作工程、プロジェクトフェーズ(情報の確定度)などの情報が一緒に保存されていることにより、ひとつのデータから様々な形で情報を抜き取ることが可能となります。

一つのモデルデータを編集することで、各図面、部材や諸元表、パースなどへ自動的に反映させることが可能になります。いつでもどこからでも同期されたデータが確認できること、重複したデータを出来るだけなすくのが重要な目的となります。

建物部材として作られているデータの事例:CSGデータ 
(BIM Handbookより)

目的2:データ連携・早期のシミレーション・予測・自動化

CADの時代にも、シミュレーションや予測モデルはもちろん実在していましたが、ソフトやツール同士の建設データの互換性や標準化がされていなかったため、シミュレーションを行うための労力と時間が大幅にかかっていました。そのため、設計の後期にしか出来なかったCFDシミュレーション(室内外の流体解析、どのように風が流れるかを検証するもの)や概算シミュレーションを出来るだけ早い段階にできるようにするのが、BIMの目的となります。
 
施工フェーズにおいては、様々なデータ形式が対応されることでモデルの情報を統合して確認できることで、干渉チェックや設計ミス、設計工程の確認などが容易または自動的に行えます。

松田平田設計本社ビル・コストシミュレーションの事例
(出展:国土交通省ウェブサイト)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001397136.pdf)

目的3:経済的かつ環境への配慮

経済的に、環境にもやさしくあること。これらが担保されることによって、BIMが建設DXの重要な要素になると考えています。ツール間や協力会社間とのデータ交換、デザインを決めるための承認フロー、データや情報の確定度などは、早期に出来ることが増えたからこそ必要となる工程です。
 
施工フェーズに入ってからVEを行うのではなく、いかに設計フェーズから正しいコストシミュレーションやCFDシミュレーションを行い、デザインの妥当性の確認を行うかは、BIMにおける重要な目的の一つです。

反復的なプロジェクト管理とVE(Value Engineering)
(The BIM Manager BIMプロジェクト管理のための実践ガイドより)

BIMとは○○?

ちなみに、この「BIMを何の目的のために利用するのか?」という質問に対しては、聞く相手によって返答が様々で、明確な答えが決まっていないのが現状です。

設計者・施工者・管理者・エンジニア・開発者にとってのBIM

各回答が間違っているわけではなく、上記の目的をビルディング・サイクル通して行おうとすると、一つの仕組で完結することは不可能なため、ソフトウェアやツールだけではなく、そのための情報交換のプロトコル、建設プロセスの標準化や業務に落とし込むためのガイドラインなどが策定されていないと、様々な登場人物がいるこの業界の情報を効率的に管理することができないためいろいろな仕組みが作られました。

このシリーズでは、以下の3つのテーマを次回以降、ひとつひとつ説明していこうと思います。

次回の「BIMはモデル?BIMはデータベース?」ではBIMで取り扱われるデータというものがどういうものなのか。
第3回の「BIMはツール?BIMはソフト?」ではBIMのソフトやツールというものは、どのようなツールのことを指すのか?
第4回の「BIMはプロセス?BIMは施策?」ではBIM推進会議で作成されているBIMガイドラインというのは、どんなプロセスや契約に関する標準化を目指しているものなのか?
などの質問を各章で詳細に解説していきたいと思います。

このシリーズが終わるころには、読者が様々な場面でどのBIMの仕組みのことを話しているのか、そしてその仕組みがどういうものなのかが理解できるようになっていれば私の目標は達成となります。

他業界と比べるとデジタル化・DX化が一番遅いと言われている建設業界で、正しいBIMリテラシーを普及させることで、建設プロセスの効率化をいっしょに目指していけたらと思います。

それではまた次回!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?