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PoCで終わらせない、新規プロダクトづくりについて考える

こんにちは、ANDPAD ZEROの今井です。
先月24年5月27日、ついにANDPAD 3Dスキャンを新製品化、合わせて東邦ガスNW様の供給管工事で全面活用していただくプレスリリースを出すことができました。リリース文には実際に開発が始まった「22年3月から」と記載されていますが、水面下では21年5月くらいからディスカッションを重ねており、3年越しのプロジェクトとなりました。現在も夏からの展開に向け、顧客推進チームの皆様と共に、引き続き弊社サクセス・メンバーがプロジェクトを推進しています。

私が本プロジェクトを進めていくに当たり、PM菊野さんと常に話していたことが、「PoCでは絶対に終わらせたくない。」ということでした。これは、会社として開発投資をしているため、至極当然のことなのですがそういう経済合理性を超えて、やるからには「検証」で終わるのではなく、しっかり「実運用化」させたいというプロジェクト推進者としての強い想いがありました。

今回は、世にたくさんある新技術の実ビジネスへの活用をPoCでなく実現させるため、どのようなことに気をつけてきたのかを振り返りつつ3つのポイントにまとめてみました。せっかくのエキサイティングなテクノロジー、「検証」で終わりじゃ勿体無い。みんなで「実用化」して、働き方をもっと面白く、楽しいものにしていきたいです。このnoteが、その一助になると嬉しいです。

Point1: 目線を合わせる

建設現場では、「段取り8分」とよく言われます。着工前に、いかに準備・段取りをして滞りなく工程が進められるようにしているかが重要であり、監督の仕事の8割が終わっている という意味です。私たちが進めている「DXコンサルティング・サービス」でも同じことが言えると思います。

この段階で私が重要だと考えるのは2つ、「プロジェクト・スコープ」と「採用テクノロジー」です。少し詳しく説明します。

プロジェクト・スコープ

まず前提として、PoCであったり新技術の相談をしていただくのは、各社のDX推進部やR&D部署など、実業務を執り行う部署とは異なる場合が多いです。その場合、「最近聞く、この新しいテクノロジーでXXXができるか検証したい。」というように、「検証」がゴールになっていることが多いかと思われます。当然、新たな知を得るため検証はとても重要なのですが、"その先"、実運用させることが、先方部署でも重要なはずで、ゴールが「検証」なのか、「実運用」なのかはまず明確にしていきます。

ゴールが「検証」の場合はシンプルです。KPIを設定し、実験を実施します。顧客と一緒に最新技術を試していくことで、非常に価値の高い知見を得ることができ、私たちにとっても良いプロジェクトとなります。

他方、ゴールが「実用化」の場合は、長い旅路になることを目線合わせし、マイルストーンごとに双方のコミットメントが高めていくことを前提に、プロジェクトの契約を行います。

採用テクノロジー

続きます。ゴールが「検証」の場合は、相対的に新しいテクノロジーを、実用化した時のコストやセキュリティを気にせず採用することができます。この場合のクライテリアは「新しさ」になる場合が多く、10年後にどうなるかの示唆を得ることが目的やレポートのまとめになります。

ゴールが「実運用」の場合は、「ある程度市場で汎用化されているorされていきそうなテクノロジー」を同じ方向性で選択します。そして、コスト観点やセキュリティ観点でも一定の問題がないところまで調べて採用をしていきます。この段階では、複数のテクノロジーやプロダクトがあります。

ここまで顧客と目線が合わされば、あとは無事にPoCフェーズとして検証に進んでいき、期待している結果を得ていくことになります(得られなければまた繰り返す)。「PoCで終わらせない」ためには、この先に進んでいきます。


Point2: 現場と一緒に進める

PoCの先、「実現場での活用」のキープレーヤーは、当然実現場を推進しているチームになります。PoC段階で、仮説ベースで提案資料をまとめ顧客社内で合意をいただいた上、現場実運用者を含めた「タスクフォース・チーム=現場メンバーを加えたプロジェクトチーム」を構築していただきます。その上で、大切にしてるのが「目的でなく、手段」としてテクノロジーを捉え続けることです。

タスクフォース・チーム

この現場メンバーが加わると、一気にプロジェクトのリアリティ、解像度が増していきます。このリアリティは、ディティールの部分はもちろん、想定していなかった課題、実は現場で一番課題に感じていたこと が分かってくることです。

ここでの定量的な分析はとても重要なのですが、私が一番重視しているのは、「これが達成できるなら、このプロダクトを使いたい」という「これ」が何かを見極めることです。定性的に一番ペインに感じていることは、定量的な結果とは違う場合があります。この一言を得るため、現場に通い、職人さんへの雑談も含めたヒアリングを実施しています。

目的でなく、手段

タスクフォース・チームとプロジェクトを進める際に圧倒的に重要なのが、PoCを実施したテクノロジーは課題を解決するための「手段」であって、極論、「課題解決が別の手段で達成できるのならばそれでも構わない」くらいのスタンスでディスカッションを進めていきます。

「このテクノロジー使わなかったらどうなる?」をそのくらいのスタンスで見つめ、メンバーとディスカッションを続けることで初めて、正しいあり方が見えてくるのかもしれません。

また、このタイミングでは、このテクノロジー以外の部分、例えば承認のワークフローや基幹システム連携など業務全体を必要に応じて再設計することで、ストレスの無い新業務を検討していきます。この段階では、新テクノロジー、機能の話は全体の半分以下になります。主役が新テクノロジーから業務全体になっているイメージですね。

さて、いよいよプロジェクトも佳境に。次に出てくるのは、費用対効果です。

Point3: 持続可能性を高める

費用対効果は実用化に向けての最後の壁です。いくら便利になっても、そのツールが高すぎたら全体で使えませんし、そのツールが重すぎたり大きすぎたりしても全体に割り振れません。特殊なスキルが必要な場合も別の課題として出てくるケースがあります。でも、まだ使っていない段階から「投資効果があるのか?」を一定の確度で示すことは一番骨が折れる作業です。そして、その一助となるのが、私たちの本業、「SaaSとして提供」することです。

費用対効果

これをしっかり評価するため、私たちは初期から業務フローをAsIs/ToBeでしっかり作成しそれに伴う課題、時間、コスト、削減効果をリストアップしていきます。この精査が難関で、弊社側だけでなく、顧客側でも膝をみっちり付き合わせて検討頂く必要があります。

実際に、実運用が始まってから達成度を確認する尺度になるものを設定することになるため、とても緊張と検討を要する作業になります。ここを最後踏ん張り、費用対効果をチームとして示していくことでプロジェクト・メンバーのコミットメントがより高まっていくことは大きなプラスではあります。

SaaSとして提供

従来型の自社システム開発のようにオンプレミスで開発する場合、イニシャル、ランニング共に現場活用ツールとしての費用対効果は相対的に厳しいものになります。そこで私たちの場合は、一緒に検討させていただいた新テクノロジーをSaaSプロダクトとしてご提供しています。さらにリーズナブルなのが、メンバー管理やフォルダなど現場運用に必要な機能は既にあるため、新規開発部分は相対的に少なく済みます。また、SaaSなので、機能は継続的にエンハンス、改善されていきます。

このように、重要なコスト・効果の部分もクリアすることで晴れて現場での採用に進んでいきます。この工程の中で、それぞれの部署等のキーパーソンへしっかりご説明したりしてプロジェクトへの理解を深めていただくことも、同様に重要ですがここでは割愛させていただきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「目線を合わせる」、「現場と一緒に進める」「持続可能性を高める」の3つのポイントが、これまで私がプロジェクトを進めてきた中でPoCで終わらせないための重要なポイントだったのではないかと思います。もちろん、プロジェクトの種類や関わり方によって、視点は異なることもあります。なので、あくまで1つのガイドラインくらいに捉えていただけると幸いです。

では、また別の機会にもよろしくお願いします!
最後までお読みいただきありがとうございました。



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