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長い、長い前置きからの、『ロング・ロング・トレイル』。

2020年9月19日

iPhone落としたの。御岳渓谷の草むらの中に。あぁ、もうやんなっちゃう、ってどんどんテンションが下がる。
朝、4時に起きて子どものご飯を作り、4時半に家を出る。久しぶりに子どもなしで外の岩を登りに行けるって、ワクワクしすぎたのだろう。浮き足立っていたのは否めない。もともと落ち着きがない。いつまで経っても大人げない。iPhoneには最新の注意を払ってたのに、落としてしまった。そういや、素敵な女の子たちとお酒を飲んだら、7割の確率でiPhoneの画面にひびが入る。浮かれて飲みすぎて、iPhoneに傷がつく。ごめんよ、iPhone。そんなんだから、私の手元から逃げ出すんだね。
最初の岩、オーストラリア岩ににとりついて、目的の課題が登れず撤退。次の岩、砂箱岩に移動。ここでiPhoneさんがいないことに気がつく。戻ったけど見つからない。友人にコールしてもらうと呼び出し音は鳴る。電源が切れてるわけじゃない。盗まれたってわけじゃないだろう。きっと平気。楽観的なほうが幸せだもん、気にしなきゃいいさ。なんて思いながら登るも、こちらもお目当ての課題が登れず撤退。ゴブガリ岩へ。こちらはさくっとサクサク、登れて調子づく。ずっと登れてない課題があるんだよ、デットエンド岩へ行こうよ、とブティックに連れてってもらう女の子さながらに駄々をこねてみる。かわいさはなかっただろうが、すんなり快諾。かわいいは正義だ。
デットエンドで手応えを感じたまま、手応えそのものが幻だったみたい。友人はさっくりサクサク登り納めて、登れない私をずっと応援してくれる。すると、邪念がふつふつ出てきて、なんか、iPhoneが気になり出すの。あぁもう、オレのぺいぺい使われまくりだー、って言って、敗退。デットエンドも敗退。警察に行って帰る!と、帰り支度を整える。

次男を保育園から連れて帰り、颯爽とパソコンを開く。iPhoneを探す。GPSってすげぇ、すぐに見つかった。監視社会、どんとこいだぜ、ずっとiPhoneを探したい。どうせ飲んだらまたなくすもの。もう、私の居場所の全てをAppleに全てを捧げます。
という経緯で、翌日も御岳へ向かう。4時起き、4時半出発。せっかくだから2時間くらい登る。遊歩道トラバース、敗退。負け組。会社はiPhoneを探すなら、と気前よく半休くれたのに、一つの課題も登れやしない。
2日合わせて10時間も電車に乗ることになった。おかげで本が一冊読めました。

『ロング・ロング・トレイル』
木村東吉 著 産業編集センター刊行

どうせ私は負け組ですよ、とモデル出身の木村東吉さんを斜に構えて読み始める。読み進めながら、もう勝てないのが分かる。素敵な方。絶対、性格も素敵、どうやったら勝てるんだ、同じ女の子好きになったら逃げるしかない。
トレイルレースにアドベンチャーレース、キャンプ、ロングトレイル。それから普通の旅。おいしいものを食べたり、観光地へ行ったり。全てが等身大で無理がない。何かを得るタイプの本ではないので、読み足りないな、と思う人もいるかもしれない。けど、本は時として態度を示すものだと思う。態度としての本、素敵だと思わない。私はそんな本が好き。
ちなみに、私がワラーチを初めて作ったのは木村東吉さんの影響です。天と地ほどのセンス。なぜああなれないのか。自然を愛するもの同士、センスは分かち合えずとも、共有するものはたくさんあると思うんだ。だから、仲良くはなれると思うんだ。

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