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『アフリカの日々』を読み終えて

2020年9月3日

初夏に捕まえたクワガタが死んだ。悲しいね、と次男に言うと、彼は悲しくないよ、と返した。ミミズもセミも公園にはたくさん死んでいるよ、と教えてくれた。

7月の後半くらいから4時に起きている。
10kmから20kmのあいだを走り、子供2人のご飯を作る。コーヒーを淹れて、洗濯物を畳む。
息子を保育園へ連れて行き、電車に乗って都心へ向かう。世の中は第二波だったけど、不謹慎な私には訪れることはなかった。このまま何事もなく過ぎていってはくれないだろうか。

『ソラリス』を読み終えてから、『アフリカの日々』を読みはじめた。ページ数も多いけど、通勤電車でしか読まないので進みが遅い。丸1か月かけて読み終えた。この本は、かもめブックスの書店員に教えてもらった。たぶん3年位前。何度かページを開いたけど、どうしても最初の10ページを読み進めることが出来なかった。古い本なので文字も小さい。文字が小さいと疲れてしまう。年老いたのだな、と悲しい気分になって、そっと本棚に戻す。そんなことが続いていた。
『パタゴニア』を再読して『旅をする木』『ソラリス』を読み、読める気がする、と思った。その直感は正しい。時間はかかったけど(とはいえ、いつもこんなスピードだ)本棚に戻すことはついになかった。いつもカバンに『アフリカの日々』を。

『アフリカの日々』は北欧のデンマークで生まれた著者が、1914年から1931年の18年間、アフリカで農園経営をした日々の話を書いている。

他人に対して寛容な態度を取れない日々が続いているように思える。私の毎日はそれなりに必死で、私以外あまり見ていない。
「わたし」の正しいは「世界」の正しい、みたいな気持ちが心を占めている。SNSを見ると「わたし」と同じようなものにばかり行きあたる。フィルターがかかる。すごい効き目だ。世の中が共感とアンチに満ち溢れている気がしてくる。そして、それは気のせい。気のせいなのに、気のせいの支配力は大きい。

ヨーロッパ社会で育った著者が、アフリカの社会と出会いそこでの出来事と接する姿がうらやましかった。あんな風にわかりえないものを受け入れることができるだろうか。わかりえないものをわかりえないままに尊重することができるだろうか。
「白人が奪った土地」。
お金持ちたちはこぞって月の土地を買っているが、その土地はだれのものでもないはず。その土地を最初に奪ったやつは誰だろう。この世に新世界なんかありはしない。世界はすでに、昔も今も未来もそこにあるだけ。

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