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今月のひと駅-2023年5月

鬼無(予讃線)

きなし駅 高松市
明治30年開業

盆栽嗜むか桃太郎

 電化された予讃線の複線区間は、多度津まで続く。特に坂出までは、四国で最も列車密度が高く、都市路線としての貫禄を湛える。ただし、この間には簡素な無人駅も多く、輸送の主力である快速マリンライナーをはじめ、高速で通過していく列車が圧倒する。だから、いくつも現れては過ぎ去る小駅たちは、旅行者の記憶には残りにくいだろう。

 そうした中で桃太郎の鬼退治伝説に由来するという「鬼無」の駅は、わざわざ降りてみるだけの話題に富む。中華料理店の入居したコンクリート駅舎自体に特徴はないが、駅名標に鬼無桃太郎と愛称が書かれ、ホームにはゲームソフトメーカーから寄贈された「桃太郎電鉄」のモニュメント。駅周辺に桃太郎神社をはじめとする伝承地もある。

 さらに目を引くのは「世界一の盆栽の里」という肩書だ。実際、松盆栽の8割が鬼無産というのだから、日本における造園業の聖地といえるだろう。春と秋には、大規模なセリ市や即売会も開催される。

 桃太郎と盆栽のコラボ、というのは賛否両論が出るかもしれないが、これほど特徴あるまちの財産を活かさない手はない。桃太郎が地元の産業に一役買う。そのアピールの場を駅から随所へと広げてもらいたいものだ。


鬼無駅舎
鬼無桃太郎の駅名板と桃太郎電鉄モニュメント
駅裏には盆栽の里を示す看板

【2012(平成24)年取材】

(駅路VISION第17巻・高徳/予讃線Ⅰより抜粋)


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