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玉ねぎを炒めるときは鬼コーチになるといい

スパイスでカレーを作るときの最大のポイント、玉ねぎ炒めについてand CURRY流の考え方を発表いたしますです。


わたしのレシピ本をご覧になって、カレーを作ってくださる方がいる。購入してくださった方のキッチンで役立つレシピ本を!と、一生懸命に作ったので、とても嬉しい。

・・・が、しかし。

「お店で食べたのとなんか違う・・・」

「おいしいんだけど、コクが足りない気がするんです・・・」

というご意見をちらほら耳にする。なんでや。そんなわけあるかいな。

というのもわたしのレシピは、わたしがキッチンでお客様に提供するそのまんまのなのである。プロの料理人がレシピを公開するときは、家庭でもつくりやすいように編纂するというのが常だが、and CURRYのレシピはもともと簡単なので手を加える余地もないのだ。だからそのまんま。同じようにできるはずなのだ。なぜゆえこのような違いが発生するのか。答えは玉ねぎ炒めにあったのだった。


▼玉ねぎ炒めはカレー作りの一丁目一番地

カレーを作るときに欠かせないものはずばり、玉ねぎである。わたしのレシピは多かれ少なかれ99.9%玉ねぎが入っている。(残りの0.1%も赤玉ねぎである。)つまりね、玉ねぎを手に取るところからカレー作りの開始のゴングは鳴り響いているということなんですよ。カレーにとっての玉ねぎは、のび太にとってのメガネ、月野うさぎにとってのセーラー服なのだ。

玉ねぎの皮を剥き、涙を堪えながら刻み、炒める。この工程こそがカレーづくりの一丁目一番地なのであるのは皆目瞭然。ではどのようにすれば普段お店で食べているような(ここでいうとand CURRYの)カレーに近づくのか。これを解説しよう。


▼炒めるときは鬼コーチになる!

目を閉じて想像して欲しい。あなたはオリンピックに出場するマラソン選手のコーチだ。そんじょそこらのコーチではない。なんたって日本を代表する選手のコーチだ。鬼に決まってる。厳しい練習を課し、叱咤激励し、選手のポテンシャルを最大限に引き出すのが役割だ。

えーっと・・・玉ねぎの話ですよね?そうです、玉ねぎの話です。

要は玉ねぎ=選手、あなた=鬼コーチなのである。そのように考えれば、ほぼ成功したようなもんだ。鍋の中で炒められる玉ねぎの旨味を、最大限に引き出すのがあなたの仕事なのである。

まずはそばに水を入れたコップを準備する。鍋中にはまだ投入されたばかりの白い玉ねぎたち。これから過酷な練習が始まるとも知らずに、わいのわいのやっておる。手始めにへらで炒める。だんだんと油がまわりしんなりとしてくる。ここからがコーチの腕の見せ所だ。火加減を中火〜強火にし厳しい環境を作り出してから、練習がスタート。

①サングラスをかけ、ベンチから選手の姿を遠巻きに眺めるのだ。(ちょっと玉ねぎを放置するという意味です。)

②時々立ち上がって選手のそばまで行き、「走れ走れーいっ!」と檄を飛ばす。(時々へらで炒め返せという意味です。)

③選手の疲れが見えてきた。「コーチ・・・一度休憩を・・・」という声も聞こえてくる。いや、まだだ。まだまだだ!!もっと走れーーーい!!(放置と炒めを繰り替えす、という意味です。)

④力を振り絞り、一生懸命駆ける選手。少しだけ休憩だ、と表情は変えずに水の入ったペットボトルを差し出す。(鍋にコップの水を10mlほど入れるという意味です。)

こんな塩梅で①〜④を4回ほど繰り返すとあら不思議。綺麗な飴色玉ねぎができているわけなのである。


▼いつも鬼になる必要はない

鬼コーチになるのは玉ねぎを茶色になるまで炒めるとき。焦げ茶になるまでのときは鬼の鬼コーチになる。少し色づくくらいだと鳩コーチ(鳩は平和の象徴)、しんなりするくらいであればヒヨコーチ(かわいいねひよこ)になればいい。そんな感じで何段階かコーチの質が分かれているのである。これはまたおいおい詳しく説明したいが、作りたいカレーをイメージしたときに自分はどんなコーチになればいいかを考えると良い。いつも鬼になる必要はないんやで。


▼そんなわけで

レシピの通りに作っているのになんだかうまくいかない、コクが足りないんじゃないかと思われるときは、玉ねぎ炒めを見直してみるとよい。そして鬼コーチになったつもりで、玉ねぎの持つポテンシャルを最大限に引き出すことがとっても重要なのだ。おうちでおいしいカレーをつくれるのはとっても幸せなことだから、ぜひ試してみてほしい。

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