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支える

薪ストーブの薪がパチパチとはぜる音が響く、とあるカフェにて。

カウンターでココアを飲んでいた女性が、帰り際にマスターにぽそりと言った。

「親が体調くずして、主人も今、正念場だから。わたしがしっかりしないと」

自分を奮い立たせるように笑う。

女性が去ったあと、同じカウンターに座っていた年配の女性が、その後ろ姿を見送りながら心配そうに言った。

「彼女、大丈夫かしら。人を支えてばかりで、自分が倒れなきゃいいけど。何かしてあげられることないかしらねえ」

女性のよく通る優しい声は、薪ストーブのやわらかな暖かさに似ていた。

先のココアの女性にも、彼女を思いやる年配の女性にもまた、支えてくれる誰かがいたらいいなと思った。

ひとはみんな、誰かの支えになっている。そして、誰かに支えられて生きている。


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