見出し画像

わたしという、うつわ

I Love Youをなんと訳しますか?
わたしはあなたを愛している。⁡⁡でしょうか?
わたしも聞かれたらそう答えると思います。

東京工業大学教授の中島岳志さんがある解説動画で、北インドで使われているヒンディー語の与格(よかく)という構文を用いて上の「I  Love You」をこんなふうに説明されていました。⁡⁡とても興味深かったので、ここに勝手に感想を書きます。

・・・

「わたしは〜」ではじまる主格と違い、与格は「わたしに〜」ではじまる文法体系。

「I Love You」は主格だと「わたしはあなたを愛しています」となるが、与格だと「わたしにあなたの愛がやってきてとどまっています」と表現する。同様に「風邪をひいた」という文も、与格では「わたしに風邪がやってきてとどまっている」となる。

与格は自分の意志(意思)の外部において自分の行動が決定されている、つまり自分の意志(意思)を超えた力がはたらく場合に使われる。

・・・

わたしがあなたを愛する気持ちは、愛そうという強い意志をもってそうしているのではなく、相手とつながりたいというとめどない本能のようなものだし、風邪をひいたのは自分だとしても自らの意志で風邪をひいたわけではありません。

そう思うと、この与格構文の訳はとてもしっくりくる気がします。

そして中島氏は、「わたしに何かがやってきてとどまっている」というのは、「わたし」が「器(うつわ)」のような存在になっている、とも語っています。

国や地域によって異なる言葉には、そこに暮らす人々の生活や思想などの特徴があらわれますね。わたしはインドに行ったことはないしヒンディー語もわかりませんが、きっとヒンディー語を使う人たちの人間観があらわれているのだと思います。


「わたし」は何かを留めるための「器」であり、でもそれは決して大きくはありません。だから、必要なものだけを見極めて受け取りたいと思うし、器つまり自分自身を介して、受け取ったものを誰かに伝えていけたらといいなと思います。

よろしければサポートお願いいたします◎いただいたサポートは、執筆のためのあれこれに使わせていただきます。