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歯周病を甘く見ていませんか?全身疾患と歯周病の関連性を解説!

歯周病についてどのくらいのことを知っていますか?
私は現在歯医者で勤務していますが、患者さまに「歯周病ってどんな病気かご存じですか?」と聞いても、はっきりと知っていると返答される方は十人に一人ほどです。
歯周病は歯だけに留まらず、全体の健康にも影響することをご存じですか?

●歯周病が進行すると、歯茎から細菌がからだのなかへ!

それぞれの病気によって、歯周病菌の果たす役割は異なります。
・歯周病菌自体が直接的に悪さをする
・歯周病菌が起こす炎症が引き金となって、全身の病気に拡大する
などがあります。

●歯周病の関与が疑われる主なからだの病気


脳梗塞、心筋梗塞

脳梗塞→脳の血管が詰まって起こる
心筋梗塞→心臓の血管が詰まって起こる

まず血管が詰まる仕組みについて
→血管内壁にかたまりができることで起こります。
このかたまりは、厚くなると血管を塞ぐだけでなく、破れることがあります。
そうすると血栓となり、脳梗塞や心筋梗塞をひきおこします。

これと似たようなことが、歯周病でも起こる得ると考えられています。

まず、歯茎から入り込んできた歯周病菌が血流に乗ってからだを巡ります。

歯周病菌は血管の内壁に入り込んで蓄積します

マクロファージや白血球がやってきて歯周病菌を食べます

食べた後は、死骸となってその場に残ります

これが塊になり、動脈硬化を起こして血栓となってしまいます。

糖尿病

糖尿病→膵臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血糖の濃度(血糖値)が
慢性的に高いままになってしまう病気

血糖値の高い状態が何年も続くと、血管が弱って、心臓病や失明、脚の切断など
深刻な合併症に繋がりかねません。

インスリンの働きが悪くなる理由
→1)膵臓の機能が低下し、十分な量のインスリンが分泌されなくなる
 2)インスリンは十分な量が分泌されているが、インスリンの糖の取り込みを促す力が弱くなる

歯周病の場合、

歯周ポケットの中で炎症が起こる

炎症部位には「炎症性物質」が集まる

それが歯茎から体内に持続的に供給される

糖をからだに取り込むインスリンの働きが弱められる

血糖値が高いままになり、糖尿病が進行しやすくなる

このように、歯周病菌の存在がドミノ倒し式に波及していると考えられます。

逆に言えば、歯周病の治療をすることで糖尿病も改善するというデータも出ているので、
放置しないように気を付けていきたいですね!

誤嚥性肺炎

肺炎→細菌やウイルスが肺の奥にある「肺胞」に侵入して、炎症を起こす

肺胞→酸素を血液中に取り込む一方、二酸化炭素を血液中から排出する役割
   を担っている

肺胞に炎症が起こると、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなり、呼吸が困難になります。

誤嚥性肺炎は、本来は「口→食道→胃」と入るはずの食物や唾液が誤って
「口→気管→肺」に入ってしまうことが原因です。

誤嚥してしまうのは、舌やお口、のどの筋肉が衰えて飲み込む力が弱っているためです。

お口の中の細菌の量が多いほど、誤って肺に入り込んだ時に誤嚥性肺炎になりやすくなります。
歯周病を放置しているというのは、たくさん細菌を飼っているのと同じになります。
歯周病になっているなら速やかに治療する。
そして歯磨きでしっかりとお口の中の細菌の量を減らすことが、誤嚥性肺炎の予防には大切です。

早産、低体重児出産

早産→妊娠37週未満での出産
低体重児出産→出生時の体重が2500g以下未満の出産

いま考えられている二つのケース

1)通常のお産の場合、妊婦さんの体内では様々な炎症性物質やホルモン、
タンパク質分解酵素の濃度が上昇し、出産が促されます。

対して進行した歯周病の場合、炎症性物質が歯茎から体内に入り込むようになります。
炎症い物質の増加は、
・タンパク質分解酵素の分泌を促進
・子宮の収縮を引き起こす
→赤ちゃんが押し出されて予定より早く産まれてしまう

2)歯周病菌が子宮内部の器官に感染するパターンもある

いつかは赤ちゃんを…と思っている方は、歯周病の治療を早めに済ませておきましょう!

そして妊婦さんはホルモンバランスの変化や、つわりで歯磨きがしづらくなることから、
歯周病になりやすく悪化しやすい傾向にあるので注意が必要です!

●歯周病菌に悪さをさせないために

いまご紹介した病気のほかにも、歯周病との関連が疑われている病気はあります。

歯周病は進行すると「お口の中だけの病気」ではなくなります。

最後に、歯周病菌がからだに悪さをしないようにするポイントをお伝えします。

1)歯周病の治療はお早めに
血液への歯周病菌の流入を減らして、動脈硬化やそれに伴う脳梗塞や心筋梗塞を防ぎましょう。
プラークと歯石が除去されれば、炎症は徐々に治まります。
すると糖尿病の悪化や早産、低体重児出産の引き金となり得る炎症性物質の産生も減っていきます。

2)お口の中を清潔に保とう
日常の歯磨きは時間をかけて丁寧に。
磨き残しが起こりやすい歯と歯の間はデンタルフロスや歯間ブラシも一緒に使ってみてください。

3)定期健診に行こう
歯周病は痛みなく進行するので、今症状がなくても油断は禁物です。
気づいたころには悪化してしまっていることもあるので、
半年に一回は歯医者でメインテナンスを受けましょう。

●まとめ

ここまで書いてきた通り、歯周病は歯だけでなく全身にも深く関わりを持っています。
ぜひ歯のメインテナンスを受け、問題があれば早期の対策をおすすめします。

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