私がセックスをしたい時に、[後編]
その時だった、
私はビビビッと走った強い感情にハッとする。
「 私いま、すごくセックスがしたい 」
大きな骨付きチキンを一口サイズに切ってくれる、
その姿に “セックスがしたい” と思うのは何故か。私は少しの間考えて、そっと口を開いた。
「 トモくん 」
『 ん?どした? 』
「 私さ、今めっちゃセックスがしたいの 」
「 でもセックスがしたい以上に、そう思う気持ちのほうが興味深くて 」
「 悪いんやけど、今から言うこと、全部他人事みたいに聞いててもらっても良い? 」
『 おぉ、いいよ? 』と言いつつも少し戸惑った様子のトモくんを置き去りにして、私はおもむろに鞄から紙とペンを取り出した。
思考を言語化しながらトモくんに話して、話しているなかで気が付いたことを紙にメモして、また湧いた疑問を言語化して・・・
それを繰り返し、埋められたQ&Aの紙を見ると、充実感さえ感じられた。
また一つ自分を知れたこと、それは自己探求が趣味の私にはこの上ない幸せのように思える。
『 えっ、ってことは今夜・・・? 』
「 おーい、勘違いすんなぁ? 」
赤裸々な会話に付き合わせていてなんだが、 “トモくんと” したいかどうかが明確でなかった私は一先ず誘いをかわしてみた。
——— その帰り、ホテルを後にした私たちは車で御堂筋を走っていた。
( ここから先は “男女” な余談だから、興味のある人だけ読んでもらえれば良いのだが、)
一度は誘いをかわした私だったが、穏やかなムラムラは簡単には収まらず、今日ばかりは男女の垣根を越えても良いと考え直していた。
だからと言ってパートナーになるつもりはないし、セックスフレンドにさえもならないが、私はお誘いモードがONになっていた。
昼間は真正面だった姿勢を運転席側に内に向けて、声のトーンは少し低く、言葉は一言一言を並べるように丁寧に話す。
流れるプレイリストはポップスから、R&Bやバラードへと変えた。
街の明かりだけがおぼろげに照らす車内の雰囲気は、いつ触れ合いが起きても可笑しくはない、色っぽいものだった。
10分、20分、30分 ———
私が仕掛けてから40分が経った。
その間もトモくんは学生時代のアルバイトしていた某バーガーチェーンの話や、前職の会社について楽しげに話していた。
「 あぁ、ははは 」と乾いた相槌には気付いていないようで、トモくんとの温度差に嫌気が差す。
すると、私の脳内とはあまりにかけ離れた、思わぬ発言が飛び出した。
『 いやぁ改めて、僕どうして人と付き合えないんだろうって思うわ(笑) 』
❝ ちょっと待てぃ!! ❞
私の脳内の千鳥が、激しくボタンを押して映像を止めた。
あれ、相席食堂観てたんだっけ?と思うほど、あまりにツッコミどころ満載なその一言に笑いがこみ上げてしまった。
「 ねぇ待って無理!(笑) 」
「 そういうとこなんやわ、うん、そういうとこ! 」
「 こんなに雰囲気出してんのに気付かへんなんて、そりゃ付き合うとか無理やで!(笑) 」
え?え?え?と動揺が隠せないトモくんに、私は一連のタネ明かしと “察し” が出来な過ぎる罪深さを懇々と説いた。
『 うわぁぁぁ… え、まじか 』
「 もう、笑ってまうてさすがに。ムラムラも失せちゃうよ(笑) 」
『 いや、ほんまに控え目に言って自害したい気持ちです… 』
『 こんなん進研ゼミで習ってないって… 』と嘆くトモくんに私は大爆笑。
「 これほど丁寧にダメなところを指摘してくれる赤ペン先生は私くらいやで 」とここぞとばかりに恩を着せる。
「 やっぱり私たちって友だちが合ってるんだよ(笑) 」と、皮肉っぽく笑って見せる。
トモくんは眉間にシワを寄せて悔しそうに自責するが、私はどこか安心していた。
その日の別れ際、
『 今日はほんまにありがとう、そしてごめんなさい!! 』
『 こんな僕ですが、これからも末永くよろしくお願いしたいです…! 』
いつにも増してかしこまって頭を下げるトモくんに、
「 うんっ!友だちとしてね! 」
いつにも増して笑顔で答えた私だった。
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