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「コミュ障」のパイロットがコクピットという密室で生き残るには。

実は、外国のエアラインに入るにあたり、最も心配だったのがそこだった。

旅客機のコクピットには、パイロットが二人いるのは知っていると思う。飛行中はほとんどの時間、密室状態で、二人きりで過ごさなければならない。私は、先祖がもともと由緒ある武家の出身で、べらべらと軽口をたたくのを潔しとしない、というのは大嘘だが、口数が多いほうではないというのは本当だ。信頼関係を築けた人とは、ずっと黙っていても不快感を感じない。

ところが、私はまだ現在の会社に入社して間もない、ピヨピヨのFO(ファーストオフィサー:副操縦士のこと)なので、毎回ほぼ初対面のキャプテンと飛ぶことになる。つまり、信頼関係を毎回構築しなければいけない状況なので、困ったことに、じっと黙っているわけにはいかない。初対面で、会話ができる距離にいて、会話をしない、ということは、それ自体が「あんたのこと嫌い」というメッセージになってしまうからだ。自己紹介をするのはもちろん、たわいのない会話を交わしたという事実そのものが「私は敵ではない」というメッセージとなり、これが信頼関係を築く土台となる。

初対面の人と毎日密室で、しかも英語で2時間もじっと座っているなんて、私には荷が重いか、と思ったが、コミュニケーションの本質を理解すれば、実はそうでもなかった、というお話。

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