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続 育児とクルマ。とーちゃんに勝ち目はあるのか。

前話はこちら

大通りに面したそのディーラーには、たくさんの車が展示してあった。路肩にティーダを停めて、おもむろに物色。全体的に白や銀や黒の車が多く、いかにも燃費良さそうな車ばかりだ。燃費第一主義の妻の目が輝いている。とんでもないところに来てしまった。

若いチャイニーズ系のにーちゃんがどれに乗りたいと言うので、断腸の思いでアクアを、と言うと、鍵を持ってきてくれた。

トヨタアクア

最初に試乗したのがこれ。

トヨタのアクアはプリウスの弟分のようなクルマで、トヨタがプリウスで熟成させたパラレルハイブリッドを乗せたコンパクトカー。車体が軽い分、燃費はプリウスより良い。

エンジンをかけた直後は、暖機運転が始まるので結構うるさい。走り出すと、エンジンとバッテリーが連携して仕事をしているのがよくわかる。さすが、パイオニアだけあって連携はスムースだ。

ハッチバックの間口はまあまあ広いが、巨大な駆動用バッテリーを後部座席の下に積んでいるので荷室に段差ができてしまうのが玉にキズ。

このアクアは2017年式で、並んでいたどのアクアよりも新しいからと言う理由で乗ってみたが、Lグレードと呼ばれる最下級グレードで、燃費は最も伸びるが、内装をはじめとした装備はチープの一言。主に社用車のようなビジネスユーザー向けのグレードだ。何しろ、今時後部座席の窓が例のクルクルハンドルなのだ。

親父のカローラについてたやつだ!

チープさはそのまま走りにも出ていて、乗っていてふわふわする。エンジンはトルクよりも回転数で走る感じで、加速が必要なところはビィーンと甲高くなる。これも安っぽさを助長する。

燃費原理主義者の妻もこのチープさは気になったようで、口を歪めて黙りこくっている。おそらく、燃費の良さと乗り心地の安っぽさの狭間でぐらぐらと心が揺れているのだろう。実際、燃費はさすがで、走っているうちに平均燃費がグングン伸びて、22km/lと出た。

完全デジタルの、センターメーター方式。慣れるまでは違和感があるかも。

2人とも漬け過ぎたピクルスみたいな顔をしながらディーラーに戻り、車を前に「ぅゔーん」などと唸っていると、例のチャイニーズのにーちゃんがどうだったと聞いてきた。走りがちょっと、、と正直に言うと、次に同じハイブリッドのホンダフィットを試乗させてくれた。

ホンダフィットハイブリッド

もともと燃費の良いフィットにハイブリッドを載せたらそりゃ燃費いいだろうと思ったのだが、ハイブリッド技術としては後発となるホンダ。実は燃費はトヨタほど伸びない。

それは、搭載しているハイブリッドシステムの仕組みが根本的に違うことが大きく影響しているのだが、詳しいことはここでは省こう。簡単に言えば、トヨタが充電用と走行用の2種類のエンジンを使うのに対し、ホンダはそれが一つの大きなエンジンにまとまっているので、充電する時も大きなエンジンを駆動しなければならず、少しロスが出るのだ。

まあ、他のほとんどの車に比べて燃費が良いことはまちがいないのだから、そんな御託は置いといて、とにかく走ってみよう。

走り出して感じたのは、アクセルを踏んだ時に立ち上がるトルクがとんがっているな、という印象。ディーラーの駐車場から道路に出るときに、アクアと同じだけアクセルをスッと踏んだら、一瞬のロスの後に突然加速した。あ、そういう感じ?と運転の仕方を切り替える。特に停止時からスムースに加速するには、アクセル操作に結構気を使う。具体的にはアクセルを足の母指球ではなく、親指の先で操作、トルクが立ち上がってクルマが加速するにつれて親指を曲げる角度を増やしてジワジワとアクセルを踏み足していく。

そして、これにバッテリーとの兼ね合いが入る。停車時からのトルクは、最初はバッテリーでのちにエンジン主体となるが「親指ジワジワ」をやらないと、どこでエンジンが立ち上がるのか分からず、前述のように突然加速してしまう。

これが、ハイブリッドシステムの差なのか分からないが、フィットはアクアと比べて使えるトルクは大きいけれど、バッテリーとエンジンのつながりにギクシャクさを感じた。その点、アクアは、ゆっくり加速してもアクセルをガバッとふんで素早く加速しても、エンジン音が変わるだけで、バッテリーのトルクにエンジンのトルクがスーッと乗ってくる。うーむ、ここら辺は、パイオニアとしてのトヨタのプライドなのだろうか。

フィットのコクピット。
ドライバーの正中線上に丸目の速度計、両脇に液晶の多目的表示という一般的なレイアウト。

しかし、足先の感覚に気をつかえれば、走りの安定感はフィットの方が良い。足回りもアクアより固めで、ロールが少ない。ただし、ブレーキのフィーリングはよろしくない。やたらと効きすぎる。少し踏んだだけでドカンとくるので、ここでも運転に気をつかう。

居住空間はフィットの圧勝。ホンダの特許であるセンタータンクレイアウトによって、後席でも足が余裕で組める。荷室もフラットになるし、後席を跳ね上げれば巨大な空間が出現する。ベビーカーも折りたたまずに積めるかもしれない。

出典:  https://tesdra.com/fit4-koubuzaseki-reclining

出典: https://tesdra.com/fit4-koubuzaseki-reclining

この広さは妻も気に入ったようで、アクアからフィットに傾いているようだ。私も同意見だが、どうしても走っている時のあの唐突な加速と効きすぎるブレーキが気になった。慣れればいいのかもしれないが、人間の感性にナチュラルについてこないので、疲れる。特に長距離を運転すると、こういうトンガリはジワジワ効いてくるので、どうしても二の足を踏んでしまう。

なんだか暗礁に乗り上げてしまった。2人とも、湿気りきったポテトチップスのような顔をしてディーラーに戻り、ハイブリッドシステムのような唸りを上げてクルマから降りると、チャイニーズのにーちゃんがニコニコしながら近づいてきた。我々の渋い顔を見て、結果を悟ったのか、もう一台いい車があるぞ、と言って歩き出した。

続く

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